ケーキ

フランスのお菓子

ビスキュイ・ド・サヴォアのレシピと作り方:フランスのお菓子(16)

フランスの南東部、サヴォア県(ローヌ・アルプ地域)のシンプルな郷土菓子ビスキュイ・ド・サヴォア(Biscuit de Savoie)を紹介します。ガトー・ド・サヴォアとか、単にサヴォアと呼ばれることもあります。

おもな材料は卵、小麦粉、砂糖だけのシンプルなスポンジケーキです。きれいな模様がつく型に入れて焼きます。

ビスキュイとは何?

フランス語で「ケーキ」は ガトー(gâteau)ですが、ビスキュイという言葉もケーキを意味して使われます。

まずこのビスキュイについて説明します。

biscuit (ビスキュイ)のもともとの意味は、2回(bis)焼く(cuit)で、ビスケットの語源です。

古代ローマでは1度焼いたパンをさらにもう一回焼いて、日持ちのよいものにしたそうです。

ですから、フランス語でビスキュイはビスケット、クッキー、クラッカーをさします。

さらにスポンジケーキのこともビスキュイと呼びます。

製菓の世界では

パート・ア・ジェノワーズ(pâte à genoise)
パート・ア・ビスキュイ(pâte à biscuit)

と呼ばれる2つのスポンジ生地があります。pâte は「生地」です。

違いは卵の泡立て方です。ジェノワーズは卵の黄身と白身を一緒に泡立てる共立て、ビスキュイは別々に泡立てる別立てです。

ジェノワーズは「ジェノヴァの、ジェノヴァ風の」という意味です。ジェノヴァはイタリアの都市、ジェノヴァ(Génes)のことです。

14世紀のルネサンスの時代は、イタリアの菓子職人の技術が高い、と考えられており、イギリスやフランスの金持ちの家では好んでイタリア人のパティシエを雇っていました。

今回紹介するサヴォアケーキは、白身を別にして泡立てるのでビスキュイと呼ぶのがふさわしいでしょう。

ビスキュイ・ド・サヴォアとは?

ビスキュイ・ド・サヴォアは「サヴォアのスポンジケーキ」という意味です。サヴォア地方のケーキなのでそのまんまのネーミングです。

サヴォア地方については、こちらの記事を参照願います。

サヴォアのアルプスの山並み、あるいは王冠を模した模様のついたサヴォア型で焼きますが、クグロフ型とか似たような模様つきの型で作ればよいです。

このケーキは、14世紀のサヴォア地方のシャンベリーの領主が、偉いお客さんを迎えるときに、菓子職人に命じて作らせたもの、と言われています。

この領主とお客さんの組み合わせにいくつか説があります(pen調べ)。

サヴォア地方は、11世紀中頃からサヴォワ家(イタリア語ならサヴォイア家)が支配していました。

1358年、サヴォア地方をルクセンブルクのシャルル4世(神聖ローマ帝国皇帝カール4世)が訪れたとき、土地の領主のサヴォワの伯爵であるアメデ6世が、菓子職人に、羽のように軽いケーキを作るように命じて生まれたのがこのケーキです。

ですが、私の持っている本には城でローマ皇帝を歓迎するときに作った、とあります。この時代、ローマとは神聖ローマ帝国(ドイツ)だと思います。

あとで紹介する動画では、「ルクセンブルクの王様」と言っています。

菓子職人はサヴォア地方のアルプスの山をイメージしたケーキを作り、王冠をのせて出したところ、お客さんにたいそう喜んでもらえたそうです。

まあ、14世紀からあるケーキ、というざっくりとした理解でよいと思います。

ビスキュイ・ド・サヴォアの作り方

いつものように750gのレシピと作り方を紹介します。

まず黄身を泡立てて、そこに粉類を全部入れます。別に白身を泡立てて固いメレンゲを作り、黄身の生地に混ぜ合わせれば生地のできあがりです。

シェフダミアンが、「ガトー・ド・サヴォアを作ります」と言ったら、隣にいるおばさんが、「私の祖母は、ビスキュイ・ド・サヴォアと呼んでたわよ」と言っています。

材料

4 gros œufs blancs et jaunes séparés 卵(大)4個。黄身と白身を分けておく。

100 g de sucre en poudre 粉砂糖 100グラム

50 g de farine 小麦粉 50グラム

50 g de fécule de pommes de terre ポテトスターチ 50グラム

le zeste râpé d’un citron レモンゼスト(レモンの皮を削ったもの)

1 pincée de sel fin 細かい塩ひとつまみ

ポテトスターチはじゃがいものでんぷんです。コーンスターチや片栗粉で代用可能です。

作り方

1.オーブンを180度に予熱。

2.卵の黄身と白身をわける

3.黄身に砂糖を少しずつ入れながらぐるぐるかき混ぜる。そこに小麦粉を入れて混ぜ、ポテトスターチを入れて混ぜる。最後にゼストを入れて混ぜる。

4.別のボールに白身を入れて塩をちょっぴり入れて泡だて、固いメレンゲを作る。白身に塩を少しいれるとほぐしやすく泡立ちやすいです。

5.メレンゲを黄身の生地に2回に分けていれて、さっくりまぜる。

6.バターをぬって粉をふった型に生地を入れて、30分~40分ぐらい焼く。

焼けたら上からアルプスの雪を模して粉砂糖をふります。そのまま食べてもシンプルな味でおいしいですが、動画ではホットチョコレートを合わせたり、チョコレートムースと一緒に食べるとおいしい、と言ってます。

油脂が全く入らないため、淡白な味なのでフルーツソース、カスタードソースをかけて食べてもいいです。生のフルーツやジャムを添えてもおいしいです。

こちらはサヴォア県のイエンヌというところにあるお菓子屋を取材したクリップです。サヴォア型で作ったサヴォアケーキや作っている映像も出てきて、とても参考になります。長さは5分46秒。

作るのが簡単だし、材料も少ないので安上がりなケーキである、と言っています。

moelleux et léger は「ふんわり柔らかくて軽い」という意味です。

動画に出てきたように地鶏の卵を使うなら、しっかりレモンをいれないと、卵臭くなりそうです。

この動画でもホットチョコレート(chocolat chaud ショコラショー)と一緒に食べるとよい、と言ってました。ホットチョコレートはただチョコレートを溶かせばできあがります。ココアのようなものです。

レモンゼストで味付けするのが一般的ですが、ほかにシナモンやオレンジ、バニラを使ってもいいです。

次のお菓子はこちら。

ビスキュイ・ド・サヴォアもどき

ビスキュイ・ド・サヴォアもどき

これは6年前に私が作ったビスキュイ・ド・サヴォアです。焼いているときに卵焼きのような匂いがしたのを覚えています。

新品の型を使ったら、生地がくっついてしまって失敗しました。家族もあまり喜んで食べなかったような気がします。






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コメント

  • コメント (2)

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    • 通りがかり
    • 2020年 6月 16日 8:17pm

    ルクセンブルグ家の神聖ローマ帝国皇帝カール4世ですね。これをフランス語で呼べばシャルル4世です。(英語ならチャールズに)

      • pen(フランス語愛好家)
      • 2020年 6月 17日 5:03am

      通りがかりさん

      こんにちは。
      記事を読んでいただき、ありがとうございます。

      神聖ローマ帝国カール4世という名前も、カッコ書きで追記しました。
      コメントありがとうございます。

      今後ともよろしくお願いします。

      pen

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