3月21日は、世界ダウン症の日です。ダウン症候群という病気について、もっとみんなに知ってもらおう、という記念日。
この日にちなんで、フランスの子ども新聞、1jour1actuが、ナントにあるダウン症の従業員が6人いるレストランを取材しました。
その記事を和訳します。
À Nantes, un resto pas comme les autres ! ナントの他とは違ったレストラン
どうして、これが話題に?
3月21日は世界ダウン症の日(la Journée mondiale de la trisomie 21)だからです。
ナントのレストランはちょっと変わったレストラン
ナントにあるル・ルフレ(Le Reflet)は特別なレストランです。ここでは、ダウン症の従業員が6人、厨房とホールで働いています。
これはフランスでは初めてのことです。
1jour1actuはこのレストランに訪れました。開店以来毎日満員です。
水曜日の正午、お客さんがレストラン、ル・ルフレに到着しました。「こんにちは」ポーリーヌが満面の笑顔であたたかく出迎えます。
厨房では、マリー・ノエリがアントレと温かい料理を用意しています。「2番テーブルのひよこ豆のサラダ、2つあがり」皿を運ぶアントワーヌに声をかけます。
カロリーヌはデザート担当です。マキシムと言えば、この日は、皿洗いをしていました。
「厨房では、野菜の皮をむいたり、料理を作る手伝いをしています。きょうは、デザート用にカランバールでソースを作りました」マリー・ノエリは自慢げに説明します。
ホールでは、「食卓を整えたり、お客さんのオーダーをとったり、料理を運んだり、テーブルの後片付けをしています」ポーリーヌがいきいきと自分の担当を話します。
この店を作ることを思いついたのは、フロール・ルリエーヴルという若い、インテリアデザイナーです。フロールの一番上のお兄さんはダウン症なのです。
「ダウン症候群の人が、社会に溶け込むことはとても難しいのです。だから、皆から、ふつうとは違うと思われているダウン症の人と、ほかの人が出会う場所を作りたいと思いました」フロールはこう説明します。
特別なお皿
マキシム、ポーリーヌ、アントワーヌ、マリー・ノエリ、カロリーヌ、ポールを指導しているのは、ホールのチーフ、トマと、コック長のファリダです。
レストランの仕事は、彼らが仕事をしやすいように工夫されています。
たとえば、誰もオーダーをとりません。お客さんは、カードに食べたい料理のスタンプを押します。
「こうすれば、覚えたり、書いたり読んだりという問題は起きません」こうトマは言います。
お皿も特製です。
しっかりつかめるように、指型のくぼみがあります。
「ダウン症の人は私たちのように、手でうまく物を扱えないからです」フロールの説明です。
疲れすぎないように、勤務時間も短くなっています。
開店以来、ル・ルフレは毎日満員です。ゲストブックに残したコメントによれば、お客さんたちは、「あたたかい雰囲気」や「共に過ごす時間」を高く評価しています。
ル・ルフレの従業員にとってはとても励みになる言葉です。
「皆さん、とても私たちによくしてくださいます。本当にすばらしい仕事です」マキシムは喜んでいました。
元記事 → À Nantes, un resto pas comme les autres ! – 1jour1actu.com – L’actualité à hauteur d’enfants !
※トップの画像はイメージ画像でこのお店の写真ではありません。
単語メモ
trisomique ダウン症候群の ダウン症は trisomie 21 または syndrome de Down
afficher complet 満員の(満席、満室)の表示を出す
pois chiche ひよこ豆
Quant à ~と言えば
éplucher 皮をむく
Carambar カランバール 商標。棒状になったキャラメルみたいなお菓子。Caramel(キャラメル)+ barre(棒)からできたかばん語です。
かばん語の説明はこちら⇒祖母の日はいつで、どんなことをするのでしょうか? | フランス語の扉
débarrasser 片付ける
pétillant きらきら輝く、はつらつとした
encadrer 人を統率する、指揮する
fonctionnement 機能の仕方、働き具合
tamponner ~にスタンプを押す
alléger 軽くする
surmenage 過労、酷使
mort par surmenage 過労死
livre d’or 芳名帳、ゲストブック
★レストランの名前になっている reflet は光の反射、光沢、つや、という意味の単語です。英語のreflectionです。
世界ダウン症の日について
世界ダウン症の日は、2004年に世界ダウン症連合が制定し、2006年から開催。2012年に国連が国際デー(国際機関が定めた記念日)の日としました。
ダウン症候群の人の多くが、21番染色体を3本持っているので、3月21日にしたそうです。
ダウン症候群という名前は、この病気を発見した医師の名前に由来しています。
昔は、ダウン症の患者の容貌の特徴から、mongolisme (蒙古症)と呼ばれました。
19世紀後半ににイギリスのダウンというお医者さんが、ある障害によって、発育がアジア人レベルで止まった病気がある、だからモンゴリズムと呼ぶという、今聞くと、とんでもない論文を書いて、この病気の存在を明らかにしました。
その後研究が進んで、(人種は関係なく)21番の染色体の異常が原因であるとわかり、ダウンシンドロームと呼ぶようになりました。
関連ニュース
こちらはFrance 2 のクリップです。開店前夜から、開店した日の様子です。カードにスタンプを押すところや、お皿の指型のレリーフも見られます。
ダウン症の人は純真で明るい、と言われますが(個人差はあると思います)、ル・ルフレで働いていいる人も、みんな穏やかで楽しそうですね。
このお店はシェフとホールのチーフ以外の従業員は全員ダウン症のようです。
ナントはフランス西部にある港町です。
フランス語を勉強して初めて使った教材が、ラジオ講座の「サトシのナント留学記」でした。
以来ナントには親近感を感じています。
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