バラ

フレンチポップスの訳詞

歌と訳詞:Amoureuse(恋人)ヴェロニク・サンソン

ヴェロニク・サンソンの名曲のAmoureuseをご紹介します。彼女のメジャーでのデビュー曲(1972年)です。

邦題は「恋人」。



Amoureuse 恋人

まずは聞いてください。歌詞の動画です。

いい曲ですね。それでは訳詞に挑戦!

Une nuit je m’endors avec lui
Mais je sais qu’on nous l’interdit
Et je sens la fièvre qui me mord
Sans que j’aie l’ombre d’un remords

ある夜、彼と眠る
禁じられていることはわかってるわ
熱がわたしをむしばむの
後悔のかけらも感じずに

夜明けが私を眠りにさそう
朝が来てほしくない
彼の頭を両手でかかえて
私はつらいってはっきり言うの

★私は問いかける
この愛に明日はあるのかって
彼が遠くへ行ってしまうと
彼が遠くへ行ってしまうと
私は本当に何も考えられない
ここにはもういないの
ああ、ここにはもういないのよ
別の惑星に降る雨の中にいるみたい★

彼が私を強く抱きしめると
彼の人生のなかに挟み込まれた気がすると
ここから逃してくれる運命を請い願う
私を運び去ってくれる悪魔を請い願う

強い不安に襲われると
それを言葉にしてしまう
彼の頭を両手にかかえると
私はつらいってはっきり言うの

★~★ くりかえし

歌詞はこちらを参照しました⇒Paroles Amoureuse – Véronique Sanson

単語メモ

morde かむ;(体、心を)痛める、苦しめる

sans que + 接続法 ~することなしに
sans que j’aie l’ombre d’un remords
直訳は 後悔の影を持つことなしに

remords 後悔
avoir des remords 後悔する

jurer 断言する

serre < serrer 抱きしめる

prie < prier 祈る
Je vous en prie. の prie です。

s’en sortir 切り抜ける

angoisse (強度の)不安、恐れ

補足

amoureuse

タイトルのamoureuse は名詞だと、女性の恋人
形容詞だと ~を愛した、好きな
男性形は amoureux

Il est amoureux de Claudine.
彼はクロディーヌを愛している。

tomber amoureux de 人
~を好きになる、恋に落ちる

この歌は、好きになってはいけない人に絶望的なまでに恋をしている状況を歌っていると思います。

ですから、個人的にこのタイトルは形容詞ではないかという気がします。

vous

Quand je prends sa tête entre mes mains
Je vous jure que j’ai du chagrin
直訳:彼のあたまを両手でかかえて
あなたに「私はつらい」と断言する。

ここなんですが、相手の男性のことは歌詞の中で、3人称(lui, sa tête, il, sa vie)を使っています。

だから突然 vous と2人称を使うのは変だと思いました。

vous ⇒ あなたたち ⇒ この世界、と考えて、誰に言うとでもなく、「とにかくわたしはつらいの」と断言する、というふうに訳してみました。

また、辞書をひいたところ、vousの「虚辞的間接目的語」という、読者や聞き手を証人にして、相手を話に引き込むために使う用法が見つかりました。

たとえば、
Il vous avait l’air très fâché.
彼はひじょうに怒った様子をしていた。

これかもしれません。

あるいは Je veux jurer que j’ai du chagrin. の聞き間違い(書き間違い)かなとも思います。

日本のCDは歌詞カードがついてますが、欧米のCDは歌詞カードがないものが多いです。歌詞のサイトを見ると、サイトによって、少し違う箇所が見つかることがめずらしくありません。

無生物主語

Et l’angoisse me montre son visage
Elle me force à parler son langage
直訳:強い不安が、その顔を私に見せ、
その不安が私にその言葉をしゃべることを強要する

⇒強い不安に襲われると
それを言葉にしてしまう

ヴェロニク・サンソン(1949生) Véronique Sanson

デビュー・アルバム Amoureuse

ヴェロニク・サンソンはフランスのシンガー・ソングライター。

裕福な家庭の生まれで、小さなときからピアノやギターを始め、13歳で初めての曲を作曲。

ビートルズ、レイ・チャールズ、ディオンヌ・ワーウィックが好きだったそうです。18歳から音楽活動を始め、最初はどちらかというとソングライター。

そして、1972年、23歳のとき、自分のアルバムをリリースします。これがきょうご紹介した曲と同じタイトルのAmoureuse.

この曲をプロデュースしたのはミシェル・ベルジェというシンガー、ソングライターで、プロデューサーというひじょうに才能のあった男性。彼は公私ともにサンソンのパートナーでした。

サンソンは「トータルアルバムを出した初めてのフランスの歌手の1人」、と言われています。プロデューサーあってのことだと思います。

トータルアルバムというのはアルバム全体が1つの世界や作品となっているもの。60年代の歌手は、たいていシングル曲を寄せ集めてアルバムとしていました。

フランソワーズ・アルディは「このアルバムが『イエイエの時代』の終わりを告げた」と語っているそうです。

Amoureuseがヒットして、人気の出たサンソンは、パリにコンサートに来たスティーブン・スティルス(クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの)と出会って、恋におち、ベルジュを捨てて1973年にアメリカに渡りました。

ベルジュもスティルスも同じぐらい才能があった(スティルスはまだ生きてるけど)と思います

アメリカではコロラド州のボルダーに住み、息子も生まれました。レコーディングはアメリカで、コンサートはアメリカとフランスの両方でしていました。

この頃は、ひじょうにアメリカナイズされた音楽を発表。歌手として成功します。

1979年に、スティルスと別れることにし、息子の養育権を争って、心身ともに疲れたのか、スランプに陥り、アルコール中毒に。

しかし、その後立ち直り現在65歳ですが、今でも活躍しています。

ヴェロニク・サンソンの曲はこちらでも紹介⇒私のおかしな人生についての歌(Chanson sur ma drôle de vie):ヴェロニク・サンソン(歌と訳詞)



Amoureuse 英語版

この曲はたくさんのカバーがありますが、きょうはキキ・ディーのバージョンをご紹介します。

歌詞のニュアンスはちょっと違います。初めて愛する人を見つけた喜びを歌ってますね。

見つければ、同時に失う可能性も発生するわけですから、ちょっぴりその恐れものぞいています。

キキ・ディーの声はあたたかくて本当にいいです。

ヴェロニク・サンソンは不思議なほど、日本では知名度がないですね。

デビュー当時は荒井由実時代のユーミンみたいだった、と書いたら語弊があるでしょうか?

彼女は、結局のところ、すごく才能があり、タフな人なんでしょうね。フランスとアメリカでは業界の雰囲気も相当違ったと思いますが、スティルスからプロデュースを学び、傑作アルバムを発表しています。

ちなみに、最初のパートナーだったミシェル・ベルジュは、その後、フランス・ギャルと結婚しました。

しかし彼は44歳で早逝してしまったのです。






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コメント

    • Gavroche
    • 2019年 8月 12日

    penginさん、
    はじめまして、投降します。ツイッターではお世話になりました。
    最近、ヴェロニク・サンソンがとても気になりだして、たくさん彼女の曲をyoububeで聴くようになりました。AmoureuseとVancouverが特に好きです。でも、たくさんいい曲がありそう。★ところで、彼女へのオマージュという表現があったのですが、彼女は亡くなってしまったのでしょうか。とても気になっています。もし、なくなったとしたら、いつだったのでしょうか。なんか、間違っていたらほんとうに失礼なことだと思ってなかなか聞けずにいました。

      • フランス語愛好家
      • 2019年 8月 12日

      Gavrocheさん、コメントありがとうございます。

      ヴェロニク・サンソン、まだ生きていますよ。いま70歳です。

      オマージュは、敬意、尊敬、献辞、賛辞という意味で、死んだ人に捧げるものとは限らない、
      というのが私の理解ですが、間違っていますか?

      弔辞は死んだ人に対する言葉ですが、弔辞は oraison funèbre だと
      私の辞書には書いてあります。

      これからもよろしくお願いします。
      pen

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