今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
L’argent est un bon serviteur et un mauvais maître.
金は良き僕(しもべ)にして悪しき主人
金は良き僕(しもべ)にして悪しき主人
僕(しもべ)は、下僕とも書きますが、召使い、雑用に使われる者のことです。あるいは官につかえて、いろんな雑用をした下級の役人の意味もあります。
お金は召使いにするにはいいけれど、主人にするとよくない、ということです。
では、「お金を召使いにする」とはどういう状態でしょうか?
ズバリ、お金を使うことです。
お金は商品やサービスを買うときに必要なものですが、その価値は一定ではありません。
つねに流動しています。政治のせいで、今持っている1千万が、明日にはただの紙切れになる可能性も十分あります。
ですから、お金は適度に使っていかないと意味がないのです。使ってこそ、お金の価値が生きるわけです。
お金を貯めこむことや、使わないことに多大にエネルギーを注ぎ込むのは好ましくありません。そのような状態は、お金に使われてしまっている状態なのです。
お金がご主人さまになっている状況はほかにもいろいろとあります。
必要以上にお金を稼ごうとしたり、収入に見合わない生活をしようとして、クレジットカードで借金を作ったり、お金ほしさに、他人をだましたり、お金ほしさに自分の魂を悪魔に売り渡してしまったり。
お金が人生で一番大事なものや、最大の関心ごとになっているとき、あなたはお金に使われています。
お金に支配されているとき、お金を稼ぐこと、使うこと、貯めこむことなど、お金にまつわる行動が、日々不幸な状況を生み出しています。
もし、そんな日々を送っていたら、このことわざを思い出してください。
お金は使うべきもので、使われてはいけないのです。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
l’argent お金 前についている l’は le のエリジオンです。定冠詞をつけて「一般にお金とは」という意味になっています。
est < être ~である
un 男性名詞につく不定冠詞 一つの
bon よい
serviteur 僕(しもべ)、召使い
et ~と
mauvais 悪い bonの反対語
maître 支配者
直訳
「お金は良い召使であり、悪い主人である。」
このことわざの由来
このことわざは古代ローマの詩人のホラティウス(Horace)(紀元前65年~紀元前8年)の以下の言葉から生まれたのではないか、と考えられています。
« L’argent est serviteur ou maître »
原文はラテン語です。
若い時のホラティウスはこんな感じだったようです。
ホラティウスと言えば、詩の一節からとらえた、カルペ・ディエムという言葉が有名です。
Carpe diem. ラテン語です。
「その日を摘め」と訳されています。
先のことや、死を思いわずらうことなく、
「きょう一日の花を摘み取ろう、今を生きよう」ということです。
お金は両刃の剣ですね。人の欲望を満たし、願いをかなえてくれる物であると同時に、人をいとも簡単に地獄に突き落とします。
お金そのものはただ価値を交換するための手段なのですが、人間の欲やさまざまな恐怖がお金に付加価値を生み出しているのですね。
危険なお金のわなに捕らわれないためには、頭を使って考えることが必要です。そして、広告に踊らされて、本当は欲しくないものまで、欲しいと思わされないように気をつけることも大事です。
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