ブドウの木

フレンチポップスの訳詞

歌と訳詞:故郷の九月~ジルベール・ベコー その1

ジルベール・ベコーの「故郷の9月」をご紹介します。

ジルベール・ベコー(Gilbert Bécaud)(1927-2001)は往年のシャンソン歌手です。有名なので、名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?

彼は歌い方がパワフルです。なんせ、あだなが「ムッシュ10万ボルト」。

故郷の9月

「故郷の9月」は1978年にアメリカのニール・ダイアモンドと一緒に作った曲です。

この曲のテーマは9月になった自分の故郷です。

ベコーは南仏のコートダジュールの出身。夏場は行楽客で大にぎわいだったのでしょう。

でも、自分がふるさとに戻るのはそんなお祭り騒ぎが過ぎたあと。

「人々が真剣に生きることができるのは9月なんだよ」と歌っています。

ちなみにタイトルの C´est en septembre はこのあとにque~と続く強調構文です。

歌詞が長いので、きょうは1分58秒のところまで訳します。

C’est en septembreの訳詞

C’est en septembre
九月に起きること

オリーブがなって、枝が下がり
ぶどうはおいしそうな匂いをはなっている
そして砂は冷たくなった
白い太陽の下で
水泳のコーチや夏のアルバイトは
本業に戻る
そしてサントンが掘られるだろう
クリスマスまでには

C´est en septembre
Quand les voiliers sont d?voil?s
Et que la plage tremble sous l´ombre
D´un automne d?bronz?
C´est en septembre
Que l´on peut vivre pour de vrai

それは9月のこと
ヨットはみんな帆が取り去られ
秋のやわらかい光の影のもと
砂浜は震える
みんなが、本気で生きられるのは
9月だからこそ

夏、ぼくのふるさとでは、
夏、何でもあり
キャンプをしてるグループ
大きな太陽のもと
幻のような市場がある
すごく短い水泳パンツ、長すぎるショーツ
オランダ女性がメロンを持って
カヴィヨンにやってくる

それは9月に起こること
夏がまた靴をはいて、
砂浜がおなかのようになり
誰もそれにさわらなくなるのは
それは9月に起こること
ぼくのふるさとが一息つけるのは

※歌詞はこちらを参考にしました。
C'est En Septembre – Gilbert Bécaud – Lyrics of the song

単語メモ

olivier オリーブの木

rougissent  < rougir 赤くなる

voilier 帆船、ヨット

caravane キャラバン、旅行者のグループ

camping-gaz (商標)キャンピングガス、(ガスボンベを使った)携帯用コンロ

foire 祭り、縁日

Hollandaise オランダ人

Cavaillon 南仏アヴィニョンの南東にある町、果物、野菜の栽培および取引の中心地

soulier 短靴

歌詞の補足

この曲は擬人法がたくさん出てきますので、かなり意訳していますので説明します。

Les raisins rougissent du nez

直訳は「ブドウが鼻を赤くする」

ブドウが実りつつある、ということでしょう。

でも、この鼻は何か?

部分冠詞がついていますので、鼻そのものではないだろうと思いました。

nezを辞書でひいたら、鼻や頭以外に
・嗅覚
・(話)鼻利き、ワインをかぎ分ける鋭い嗅覚(きゅうかく)の持ち主
という意味があったので、
「おいしそうな匂いがしている」としてみましたが、
ぶどう狩りに行ったことがないので自信はありません。

Et les santons seront sculptés Avant Noël

サントン人形

les santons サントン、サントン人形

おもにプロバンス地方の土人形。

クリスマスにキリストが誕生する場面の模型みたいなのに、いっしょに飾ります。

語源はプロヴァンス語のsantoun。

sant はsaintと同じで、「聖なる」

聖なる土人形ですが、最近は宗教色は薄れてきており、いろんな人形があります。

こちらはプロバンス地方のサントンを紹介しているビデオ
40秒

9月になると、ベコーのまわりではみんなサントンを作り始めたんでしょうね、きっと。

Les Hollandaises et leurs melons De Cavaillon

カヴィヨン地方はメロンの産地です。

その果物のメロンとオランダ女性の豊満な胸をかけています。

こちらはカヴィヨンのメロンに関する動画です。

見た目はスイカの小さいのに見えます。日本のメロンほど甘くないかもしれません(知りませんが)。

メロンの実をソテーして、ハンバーガーにはさむ、という不思議な料理が紹介されていますが、肉料理にパイナップルをあわせる感じでしょうか。

最後におじさんが、おいしいメロンの選び方も教えてくれます。

プロヴァンス地方では新鮮な野菜や果物が豊富にとれますね。

うらやましいです。

Quand l´été remet ses souliers

ここは「夏がまた、靴をはいて、去っていった」と解釈しました。

Et que la plage est comme un ventre

人がいなくなって、白いおなかみたいになったのかな、と解釈しました。

砂浜をおなかにたとえるのって面白いですね。

ベコーは小さいときからピアノをひくのが得意で、ニースの音楽院(コンセルヴァトワール)に進学。

第二次世界大戦中に、レジスタンス活動をするため、学校をやめます。

戦後、曲を書き始めています。ジャック・ピルスというこれまた往年のシャンソン歌手のコンサートでピアノをひいているとき、当時ピルスの奥さんだったエディット・ピアフに「あんたも歌ってみたら?」と言われて歌手になりました。

きょうの曲はバラードなのに、異様にエネルギッシュ。個人的には、それがやや苦手なんですが、曲そのものはとてもいいと思います。

何度も聞いていると味わいが増してきます。

それでは、この続きをお楽しみに。






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