今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
靴屋がいつも一番ひどい靴をはいている。
Les cordonniers sont toujours les plus mal chaussés.
靴屋がいつも一番ひどい靴をはいている
これは他人に靴を提供するのが仕事の靴屋さんが、実は一番よろしくない靴をはいているということです。
つまり人の靴のことで気力、体力、時間をとられ、自分の靴のことはないがしろになっている、という状態をさしています。
まず、日本語の「紺屋」について説明しますね。
紺屋は「こうや」、または音変化しない「こんや」と読みます。現在は「紺屋」という仕事がないので、「こうやのしらばかま」と聞くと「荒野の白袴」を、「こんやのしらばかま」だと「今夜の白袴」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんね(いないですかね)?
紺屋は染物屋さんのことです。布を藍で紺色に染めるのが仕事です。その昔、染色を生業にする家は、紺屋、紅屋、茶屋というふうに、専門の染め色を持ち、その名前で呼ばれていました。
自分の袴を染めようと思えば、今すぐにでも染められるのに、お客様の袴を染めるので忙しいのか、自分はずっと白い袴をはいているのが「紺屋の白袴」
フランス語のことわざでは、これがcordonnierという靴屋さんになっています。
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よくわかる!フランス語の解説
★単語の意味
cordonnier, cordonnière 靴屋さん (現在は靴の修理屋さん、という意味で使われています)
sont < être ~である(ここは受動態のêtre)
les plus mal 一番悪く mal(悪く)の最上級
chaussés < chausser 靴などをはかせる の過去分詞(複数形)
★補足
この文章は受動態です。受動態は
主語+助動詞(être)+過去分詞
主語が複数形なので、それにあわせて、sont, les plus, chaussés すべて複数形になっています。
★直訳
「靴屋さんが最も悪く靴をはかせられている」⇒靴屋さんのはいている靴が一番お粗末。
似たようなことわざ
このことわざは、モンテーニューの「随想録(Essais)」が由来です。原文は
« Quand nous voyons un homme mal chaussé, nous disons que ce n’est pas merveille, s’il est chaussetier ».
われわれが、ひどい靴をはいている人を見ると、それが靴屋であれば、驚きではない。
といった意味です。
モンテーニュ(1533-1592)は16世紀のフランスの思想家。「随想録」は1580年出版の本で、人間性研究文学のさきがけとみなされています。
ちなみに、英語にも同じ意味のことわざがあります。
“The shoemaker’s children always go barefoot.”
靴屋のこどもたちはいつも裸足だ。
こちらはもっと極端ですね。
日本のことわざでは、
「医者の不養生」
も有名です。
仕事が忙しすぎて、自分の身辺をかまうことができない、という単にその現象を述べる場合と「人にはあれこれ言うのに、自分のことはできていない」とか「そうすべきとわかっているのに実行が伴わない」という意味で使われることもあります。
せっかく専門知識を持ちながら、自分の状況に生かせないのは、人のことはよくわかっても自分のことは客観的に見ることが難しいからでしょうね。
また、靴屋さんで、素敵な靴をいっぱい持っているのに、自分は、はいていないというのは、自分が持っている靴に気づいていないか、いつでもはける状況なので、はいていないかのどちらかではないでしょうか?
どっちにしろ、人は自分のことをわかっているようで、一番わかっていないのかもしれません。
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