モンマルトル

フレンチポップスの訳詞

エリック・サティ~Je Te Veux(ジュ・トゥ・ヴ)、歌と訳詞

フランスの作曲家でピアニストのサティの歌曲でたぶんもっとも有名なJe Te Veux(おまえが欲しい)をご紹介します。

曲調はとても優美なワルツ。しかし歌詞は濃厚です。この曲の歌詞は女性版と男性版があるのですが、きょうは男性版を訳しました。

Je te veux

CMなどにも使われることが多いので、サティの名前を知らなくても、曲はご存知なのではないかと思います。

米良美一(めら よしかず)の歌でお聞きください。

古い歌なので、歌詞はパブリックドメインのはずですから、全文引用します。
なるべく原文に忠実に訳しました。

Je te veux おまえが欲しい

作詞:アンリ・コパリ
曲:エリック・サティ

★Ange d’or, fruit d’ivresse,
Charme des yeux,
Donne-toi, je te veux.
Tu seras ma maîtresse
pour calmer ma détresse
Viens, Oh déesse.
J’aspire à l’instant précieux
où nous serons heureux – Je te veux

金の天使 陶酔の果実 魅惑の瞳
その身を投げてくれ。おまえが欲しい
恋人になってくれ。僕のつらい気持ちをいやすために
来ておくれ、ああ、女神さま
僕は、2人が幸せになれる、かけがえのない瞬間を求めている
おまえが欲しい★

Tes cheveux merveilleux
Te font une auréole
Dont le blond gracieux
Est celui d’une idole.
Que mon cœur soit le tien,
Et ta lèvre la mienne !
Que ton corps soit le mien,
Et que toute ma chair soit tienne !

美しいきみの髪は
光の輪をはなっている
それは優美な金髪で、
偶像の髪のようだ
僕の心がきみのものになればいい
そしてきみの唇をぼくのものに!
きみのからだが僕のものになればいい
そして僕の肉体すべてを、きみのものに!

★~★繰り返し

Oui,je vois dans tes yeux
La divine promesse,
Que ton cœur amoureux
Ne craint plus ma caresse…

そう、きみの瞳のなかに、
すばらしい兆しが見える
きみの愛にあふれた心は
もう僕の愛撫を恐れないという兆しが

Enlacés pour toujours,
Brûles des mêmes flammes,
Dans des rêves d’amour
nous échangerons nos deux Âmes!

いつも抱き合っていよう
同じ炎に焼かれよう
愛の夢の中で
僕たちは魂を交換しよう

★~★繰り返し

※歌詞はこちらを引用しました<Paroles de " Je te veux " Erik Satie – Henry Pacory – Erik Satie : Erik Satie 作詞はHenry Pacory(アンリ・パコリ)です。

単語メモ・文法メモ

ivresse 酩酊(めいてい)、陶酔

chair 肉体

enlacé 絡み合った、抱き合った ←enlacer

文法 Queで始まる接続法

queの前がなくて、いきなりQueから始まる接続法です。

ここではもちろん願望を表しています。

Que mon cœur soit le tien,
私の心があなたのものになりますように

Que ton corps soit le mien,
あなたのからだが僕のものになりますように

同じ用法が歌と訳詞:セルジュ・ゲンスブール~「コーヒー・カラー」にも出てきました。

エリック・サティ

エリック・サティ(1866-1925)はアバンギャルド派の作曲家です。ジムノペディというピアノ曲が有名ですが、これは不思議な和声の進行をします。

今、聞けばべつにどうってことないかもしれませんが、1888年の曲です。

1891年ころのサティ

サティ

File:Satie.jpg – Wikipedia, the free encyclopediaより

ドビュッシーやラベル、フォーレと同時代の作曲家で、既存の調性からはずれた自由な作曲技法はサティに発するものとされています。現代音楽ではとても評価が高い作曲家ですが、今ひとつマイナーですね。小品が多いからでしょうか。

サティは曲名に『(犬のための)ぶよぶよした前奏曲』なんてつける変った方。フランス語では Quatre préludes flasques (pour un chien)です。

この曲はモンマルトルの「黒猫」という文学酒場で歌っていたポーレット・ダルティのためにサティが1901年に書いたものです。この頃、彼はとても貧乏で、生活のために長く、ミュージック・ホールでピアノの伴奏をしていました。

当時、彼はたくさんのシャンソンを作りましたが、現在、ほとんど残ってないそうです。画家のロートレックは1864年生まれで彼と2歳違いですから、きっとサティの演奏を聞いていたと思います。ただし、この曲が書かれた1901年は、ロートレックの亡くなった年です。

Je te veux~女性版と、ピアノ曲

女性版の歌詞はだいたい男性版と同じです。
「あなたの気持ちはわかってる。あなたの恋人になるわ。一心同体になって、燃えましょう」という感じ。

こちらは正統派のソプラノでお聞きください。

こちらはのちにサティがピアノ曲用に編曲したもの。

あなたはどのバージョンがお好みでしょうか?
それでは、次回の音楽の記事をお楽しみに。






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