きょうご紹介することわざはこちらです。
Il ne faut pas mettre la charrue avant les bœufs.
牛の前に犁(すき)を置いてはいけない。
牛の前に犁(すき)を置いてはいけない。
まず、犁(すき)の説明をしたほうがいいかもしれませんね。これは牛や馬に引かせて田畑を耕す農具です。
こんなのです。
これは馬がひいてますね。
今はトラクターを使うと思われます。
なぜ、この農具を牛の前に置いてはいけないのか?
前に置いたら、牛が引っ張ることができないからですね。まあ、しごく当然のことです。
しかし、世の中にはこのように、順番を間違えて行ってしまうということはままあるわけです。
たとえば、2,3回会っただけだけの、意中の女性がいたとします。相手の気持ちなどまだ何もわからないのに、いきなり自分の二の腕に「〇〇子(相手の名前)、命」などと刺青したのを見せ、相手にドン引きされたり。
フレンチレストランのコース料理で、いきなりデザートを出したり(これは喜ぶ人もいるかもしれませんが)。
なんの練習もせず、プールで高い高い飛び込み台から飛んでみようとしたり、ジョギングもしたことないのに、いきなりフルマラソンに出るとか。
経営がうまく行ってないのに、ものすごく高いものを大量に仕入れてみたり。
フランス語の学習を始めたばかりなのに、いきなり仏検の1級の受験を申し込んでみたり(お金がもったいないです)。
このように「物事の本来ある段階を経ずして、いきなり何かをやろうとしてはいけませんよ」、という意味のことわざです。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
Il ne faut pas … すべきではない、してはならない
mettre 置く
la 女性名詞につく定冠詞 その
charrue 犁(すき) 犂という漢字もあります。プラウ 発音は「シャリュ」
avant ~の前に
les 複数形の名詞につく定冠詞
bœuf 牛
mettre la charrue avant les bœufs だけで、「物事の順序を逆にする、あべこべに行う」という意味で使われます。
日本語のことわざは?
日本語には、「本末転倒」ということわざがあります。似ているのですが、厳密に言うと、「本末転倒」は、根本的で大切なことと、ささいでさして重要でないことを取り違えることなので、ちょっと違います。
状況によって、同じように使える場合もあるとは思いますが。
Il ne faut pas mettre la charrue avant les bœufs. は「順番を間違えてはいけない」という意味から派生して、「物事を急いでやりすぎてはいけない」という意味でも使われます。いきなり結果を求めてはいけないわけですね。
この意味だと、「急いては事を仕損じる」ということわざが同じような意味を持つものとして考えられます。
英語では、To put the cart before the horse. (馬の前に荷馬車を置く)という表現があります。
ことわざの記事の目次を作りました。ご利用ください。
その1⇒フランス語のことわざ~目次 その1
その2⇒フランス語のことわざ~目次 その2
きょう例に出した順番を間違える例は極端で、わかりやすいものです。でも、自分が日々行おうとしているプロジェクトの優先順位をつけようとする場合、何が正しい順番なのか、よくわからない時もありますよね。順番の正解なんてないものも多いことでしょう。
確かなのは、ステップバイステップで進まないと、何事も形にならないことです。いきなり魔法で望む結果を出せたらいいのですが、そんなことは決して起こりません。
「木もと竹うら」という諺は木は根のほうから竹は先のほうから割ればきれいに割れるし、「魚身鳥皮」は魚肉は身から鳥は皮から焼くときれいに焼きあがるという意味。「馬を買わずして鞍を買う」ことはさける。
以上 田辺貞乃助が書いています。
樋沼さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
「木もと竹うら」も「魚身鳥皮」も初めて聞きました。
馬の鞍のも似ていますね。
教えていただき、ありがとうございます。