今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
石工の価値はその仕事ぶりでわかる
C’est au pied du mur qu’on voit le maçon.
石工の価値はその仕事ぶりでわかる
このことわざにあたる、日本のことわざが思いつかなかったので、そのまま、訳してみました。
maçon は「石工」としましたが、ほかには左官、レンガ職人とも訳せます。
レンガを積んで壁を作る職人さんですね。
このことわざをもっと厳密に訳すと、
「私たちが石工を見るのは壁の下のほうである」となります。
壁の下のほうってなんなのだろう、と考えました。積み始めのところですよね。
つまり、れんがを積み始めて、初めて(シャレではありません)、その石工さんの腕がわかるのかな、と解釈しました。
まだ仕事を始めていない段階では何も評価できないということです。
これはたまたま石工ですが、ほかの職業でも言えますね。
たとえば、ある企業の専務としてすごく手腕をふるっていた人が社長に就任したとします。
これまでの仕事ぶりからきっとすばらしい経営をしてくれるのではないかと、周囲の期待が高まります。
けれども、実際に社長として仕事を始めてみないことには、いいとも、悪いとも言えません。
あるいは、すごく前評判のいい洋画があったとします。賞もとっているし、いい役者さんが出演しています。この夏休みには大当たりしそうです。
でも、やはりこの映画を封切ってみないことには何もわかりません。前評判は必ずしもその映画の成功を保証するものではないのです。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
C’est・・・ que ~ 強調構文 que以下なのは・・・である。・・・の部分を強調します。
たとえば C’est là que je vais danser. 私が踊るのはここよ。
ほかでもない、ここで踊るのよ、と「ここ」という場所を強調しています。
au pied de ~の最下部に、ふもとに
mur 壁
qu’ = que 上で説明した強調構文を作るque
on 人々が
voit < voir 見る、という意味ですが、ここでは見いだす、認める
le maçon 石工(一般に石工というもの)
★直訳
「人々が石工を見るのは、壁の下のほうでこそだ。」
★補足
・être au pied du mar で「決断、返答を迫られる」という意味があります。
・au pied du の du は de+le (mur)の縮約です。
・このことわざを強調構文でないふつうの文にすると
On voit le maçon au pied du mur.
人は、壁の下のほうで、石工を見いだす。
となります。
「壁の下のほう」という箇所の強調をどういうふうに取るかで、このことわざの解釈が違ってきます。
私は「仕事を開始してからこそ」と取りましたが「基礎工事の部分から」とも取れますし「うずくまって働いているその姿から」とも取れます。
あるいは「決断を迫られる」という意味から、たとえば、レンガや漆喰が足りなくなったときや、急に納期が短くなったときなど、ちょっとしたトラブルに見舞われた場合に、どんなふうに仕事をするかで真価が問われるとも取れますね。
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このことわざに当たる英語のことわざとして、よく
The tree is known by its fruit.
木のよしあしはその実でわかる。
というのが紹介されています。
これは聖書から出たことわざで「人のよしあしはその人の行いからわかる」という意味です。
石工のことわざと似てますがど「壁の下のほう」にあたる箇所がないですね。
でも両方に共通しているのは実際に行動して何らかの結果を出すことで、評価が定まる、ということです。
千の言葉を尽くすまえにレンガを一段積んで見せることのほうが石工としてよほど説得力があるわけです。
「行動する」ということが大事なんですね。
A l’oeuvre on connait l’artisant は「職人の良否はその仕事ぶりでわかる。人はその業績で人格が知れる」という意味であるが、別のことわざに C’est au pied du mur qu’on connait le macon がある。
石工の良否は石塀の土台のつくりかたでわかる、というのである。
以上 田辺貞之助。
樋沼さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、土台の作り方がポイントなのですね。
いつもありがとうございます。