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フランスのことわざ

1日の苦しみは1日で足りる:フランス語のことわざ69

きょうご紹介するフランス語のことわざはこちらです。

A chaque jour suffit sa peine.
1日の苦しみは1日で足りる



1日の苦しみは1日で足りる

きょうは、きょうの分の苦しみがしっかりあるので、明日の苦しみまで心配する必要はない、ということです。

明日はどうなるか、人はいろいろ心配するものです。でも、明日には、明日の苦しみがあるから、今思い煩うことはない。明日は明日の風が吹くのです、というのが一般的な解釈。

まだ起こってもいない先のことを心配しすぎている人に言ってあげるといいですね。

さらに、逆説的ですが、今日のことも明日のことも何も気にかけていない人にも使えます。明日は明日の苦しみがあるのだから、きょうの分の心配はきょうのうちに片付けておくように、と。

出典は聖書

このことわざは聖書の言葉からできました。マタイによる福音書第6章の19~34節 l’Evangile selon saint Matthieu (chapitre VI, verset 19~34)に記述があります。

ここでは、富について書かれています。まず、地上で富をたくわえるべきではない、天に積みなさい(信仰しろってことですかね?)とお話があります。

地上で富をたくわえても、虫がくったり、錆びついたり、盗まれたりするからです。

つまり、お金や物をためこんでも、ずっとそういうものを所有していられるわけではないのです。

ちょっと長いのですが、24節からこのことわざが出てくるところまで、日本語訳を引用します。

24 だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。

25 それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。

26 空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。

27 あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。

28 また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。

29 しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。

30 きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。

31 だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。

32 これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。

33 まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。

34 だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。

34節のフランス語は

Ne soyez donc pas en souci pour le lendemain ; car le lendemain aura soin de ce qui le regarde : A chaque jour suffit sa peine.

ここがこのことわざの元の文章です。

日本語訳はこちらから引用しました。
マタイによる福音書(口語訳) – Wikisource

聖書では、明日のことなんて心配しなくたって、それは神が決めることなんだから、と言っているのでしょうね。

単語の説明

A = À suffir à の à です。

chaque それぞれの、めいめいの

jour 日、1日

suffit à < suffire à ~に充分である、足りる
Une heure suffira pour ce travail.
この仕事には一時間あれば充分だ。

Un verre de vin suffit à le soûler.
グラス1杯のワインがあれば、彼を酔わせるには充分だよ。

L’offre ne suffit pas à la demande.
需要に供給が追いつかない。

このような使い方をするので、主語は物なので、活用は3人称を覚えておくといいです。

sa その(所有代名詞) ここでは その日の

peine 苦労、骨折り、苦痛

直訳:その日の苦しみはそれぞれの日に足りている

文法ワンポイント~倒置(とうち)

このことわざは主語が後ろに行っています。主語と動詞がいつもの語順と反対になっているのです。こういうのを倒置といいます。

さかさまになっているということですね。

西洋の言語は、主語と動詞の並ぶ順が決まっています。主語は文頭に来ます。日本語は適当に言葉を並べても通じるのですが(助詞があるので)、フランス語はそういうわけには行きません。

だから、主語と動詞が逆になる場合は、この現象を「倒置」という文法用語で区別しています。

なんでも倒置にできるわけではなく、倒置するには倒置する理由があります。たとえば疑問文ですとか。

このことわざの場合は A chaque jour を強調するために、前に出したので、そのあとの主語と動詞が逆になったのだと思います。フランス語的にそのほうがおさまりがいいんでしょうね。

倒置しない語順は
Sa peine suffit à chaque jour.



似ていることわざ

Ne remets pas au lendemain ce que tu peux faire le jour.
きょうできることを明日まで延ばすな。

英語
Never put off till tomorrow what you can do today.
意味は上のフランス語のと同じです。

英語
Tomorrow is another day.
明日はまた別の日だ(きょうだめでも明日はうまく行くかもしれない)。

日本語
明日は明日の風が吹く

このことわざは、以下のことわざと似ています。
46~不幸は1つでは済まない、弱り目にたたり目
Un malheur ne vient jamais seul.

64~日々は続くとも等しからず
Les jours se suivent et ne se ressemblent pas.

★ことわざの記事の目次を作りました。ご利用ください。
その1⇒フランス語のことわざ~目次 その1
その2⇒フランス語のことわざ~目次 その2
その3⇒フランス語のことわざ~目次 その3

いかがでしたか?

A chaque jour suffit sa peine の解釈1つにしても文脈によっていろいろ考えられますね。

きょうの苦しみは明日になれば消えるけど、明日は明日の苦しみがまたある、と思うと、「ああ、やっぱり人生って苦しみの連続だな」と気がめいります。

ですが、苦しみがあるから、喜びもありますよね。






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