フレンチポップスでフランス語になじむシリーズ。今回は懐メロです。
フランス・ギャルの1964年発売の歌、Sacré Charlemagne(サクレ・シャルルマーニュ)という歌を紹介します。
タイトルの直訳は「神聖なるカール大帝」ですが、sacré は、「いまいましい、憎らしい」という意味もあるので、「まったくもう! シャルルマーニュったら」みたいなニュアンスです。
学校の勉強が嫌いな子どもの視点から、義務教育制度をつくったシャルルマーニュ大帝を冗談まじりに責める歌です。
Sacré Charlemagne
とても覚えやすい節回しなので、聞いたことがある人も多いと思います。
それでは歌詞を訳してみましょう。
サクレ・シャルルマーニュ・歌詞
サクレ・シャルルマーニュ:訳詞
誰がこんなばかげたことを思いついたの?
ある日、学校を発明するなんて。
(誰がこんなばかげたことを思いついたの?
ある日、学校を発明するなんて。)
それはあのシャルルマーニュ
いまいましいシャルルマーニュ
私たちの生活に残されたのは
日曜日と木曜日だけ
(私たちの生活に残されたのは
日曜日と木曜日だけ)
それはあのシャルルマーニュ
いまいましいシャルルマーニュ
小ピピンの息子は
私たちにたくさんの悩みをくれた
私たちは100もの不満を
彼に、彼に、彼に抱いている
誰がこんなばかげたことを思いついたの?
ある日、学校を発明するなんて。
(誰がこんなばかげたことを思いついたの?
ある日、学校を発明するなんて。)
それはあのシャルルマーニュ
いまいましいシャルルマーニュ
過去分詞
4足す4は8
フランス語の授業
算数の授業
なんて、なんて、たくさんの宿題
いまいましい、いまいましい、いまいましい、いまいましいシャルルマーニュ
彼はなでていればよかったの
長いあごひげを
(彼はなでていればよかったの
長いあごひげを)
オーオー、いまいましいシャルルマーニュ
いまいましいシャルルマーニュ
地理で私たちを退屈させる代わりに
(地理で私たちを退屈させる代わりに)
オーオー、いまいましいシャルルマーニュ
いまいましいシャルルマーニュ
戦いや狩りにだけ
かまけていればよかったのに
そうすれば私たちは
毎日教室に通う必要はなかったのに
数を数えることを学ばされ
山ほどの書き取りをさせられる
(数を数えることを学ばされ
山ほどの書き取りをさせられる)
オーオー、いまいましいシャルルマーニュ
いまいましいシャルルマーニュ
過去分詞
4足す4は8
フランス語の授業
算数の授業
なんて、なんて、たくさんの宿題
いまいましい、いまいましい、いまいましいシャルルマーニュ
だって彼がいなければ
私たちの生活には木曜日しかなかったのに
(だって彼がいなければ
私たちの生活には木曜日しかなかったのに)
オーオー、いまいましいシャルルマーニュ…
☆作詞はRobert Gall(フランス・ギャルのお父さん)。
固有名詞の解説
シャルルマーニュ(Charlemagne):8~9世紀に西ヨーロッパを支配したフランク王国の皇帝。ピピン3世(ピピン短躯王)の子で、ヨーロッパ統合の象徴的存在。
彼が学校制度を広めたと言われています。
小ピピン:ピピン短躯王(ピピンたんくおう Pépin le Bref):シャルルマーニュの父。フランク王国の王。歌詞では「ピピン短躯王の息子(=シャルルマーニュ)」という形で登場。
木曜日の休日:歌詞に出てくる Que les dimanches, les jeudis(私たちに残されたのは日曜と木曜だけ)は、当時のフランスの学校制度の話です。昔のフランスの小学生は、木曜日が休日(授業がなかった日) でした。
単語メモ
idée folle ばかげた考え
ennui 悩み、迷惑、面倒
grief 不満、文句、恨み
caresser なでる、愛撫する
obliger 義務づける、~せざるを得ない nous n’serions pas obligés = 私たちは~せずに済んだのに。
barbe fleurie 直訳は花のように咲いたひげで、長く立派なひげのこと
プチ文法:aurait dû + 不定詞
「~すべきだったのに」「~しなくてもよかったのに」 という後悔や批判を表すときに、条件法過去(conditionnel passé)+ devoir + 不定詞 を使います。
Il aurait dû caresser longtemps sa barbe fleurie. 彼は長いひげをずっとなでていればよかったのに
aurait dû は、実際にはそうしなかったけれど、本来はそうすべきだったということ。
ほかの例:
Tu aurais dû me prévenir. 君は私に前もって知らせるべきだったのに
Vous n’auriez pas dû dire ça. そんなこと言うべきじゃなかったのに
活用はこちらの動画を参照してください。
シャルルマーニュ・関連動画
シャルルマーニュについて説明している子ども向けの動画です。
Qui était Charlemagne – Son histoire pour les enfants (カール大帝って誰?)
内容のまとめ:
出自:742年生まれ。祖父はカール・マルテル、父はピピン3世(小ピピン)、母はベルタ(大足のベルタ)。カロリング朝に属する。
幼少期:学ぶことが大好きで、騎士ごっこや勇気ある物語を楽しんだ。
若くして即位:20歳前後でフランク王に。戦いに長け、王国を守り広げる。
賢明な王:学校を建て学びを奨励、公平な法律を整備し、正義を重んじた。
戴冠:800年、ローマで教皇により「ローマ皇帝」に。ヨーロッパを統合し、平和と秩序を維持。
レガシー:死後も大帝国と伝説を残す。「勇気・知恵・学び・公正」が優れたリーダーの条件だと示した。
シャルルマーニュは勇敢に戦って国を広げただけでなく、学校を建てて学びを奨励し、公平な法律を整え、民の暮らしを良くすることにも力を注いだ人物です。
歌では、「もう、シャルルマーニュったら!」と言われていますが、実際はとても偉大な人ですね。
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⇒学校に関するフランス語~かわいいフランス語教えます(86)
このアルバムでは、「シャルルマーニュ大王」という邦題がついています。
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1964年の歌はどこかのどかで、「ディクテやりたくない」「学校行きたくない」という軽やかな雰囲気が感じられます。今は学校をめぐる問題がもっと複雑になっているかもしれませんね。
それでも、サクレ・シャルルマーニュは、今も昔も学校嫌いの子どもの気持ちをうまく代弁している歌です。
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