ジャック・ドゥミ監督の1964年のミュージカル映画、 Les parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)から、Scène du garage(修理工場のシーン)を紹介します。
冒頭のタイトル曲(インストゥルメンタル)の次に流れる、物語が始まって最初の曲です。
修理工場のシーン
映像はありませんでしたが、サントラがありました(画像はサントラ盤のカバーです)。
2分48秒。
軽快でおしゃれな曲ですね。フランス語は難しくありません。
では、訳詞に挑戦!
歌: Jose Bartel
作曲: Michel Legrand
作詞: Jacques Demy ルグランも協力していると思います。
修理工場のシーン:訳詞
客:終わったかい?
ギイ:ええ、冷えるとモーターがまだ少しガタガタ言いますけど、それはふつうのことですから。
客:ありがとう。
G:ありがとうございます。
ボス:フーシェ、今夜、1時間残業できるか?
G: 今晩は、無理です。でも、ピエールならあいてると思います。ピエール、今夜、残れるかい?
ピエール:ああ。
ボス:この方のメルセデスのイグニッションをチェックしてくれ。
修理工:今夜、ゲームに一緒に来るかい?
G: いや、だめだ。きみは、行くのかい?
修理工:もちろん。
G:オーバン(ボスのこと)に、さっき、1時間延長してくれって頼まれたんだ。とんでもないよ。今夜は大事なんだ、劇場に行くから。
別の修理工:何を見るの?
G:カルメンさ。
修理工:「恋は自由な子供、ラララ~」(ハバネラの一節)
別の修理工:オペラは嫌いだ。映画のほうがいいよ。
修理工:僕は、踊りにいくよ。ララララ~ [ギイに]たばこを1本くれ。
別の修理工:全員で歌を歌うなんてさ、頭が痛くなる。映画のほうが好きだよ。
修理工:それはもう聞いたって(←きみは、すでにそれは言った)
ギイ:みんな、じゃあな。
従業員たち:チャオ
ギイ:また明日。
単語メモ
un garage 自動車修理工場、サービスステーション
une cliquette 拍子木、カスタネットなどの打楽器。ここではその音。
un allumage エンジンの点火、イグニッション
volley ボレー、バレーボールのことかもしれませんが、修理工が、仕事のあと、バレーボールするとは思えないので(これは1958年の話だから、それもありうる?)、ここではゲームとしました。
Tu parles ! よく言うよ、とでもない、もちろんだ(嘲笑、怒り、ときに感嘆の表現)(話)
ciné 映画(話)☆cinémaの略
une pipe (紙巻き)たばこ (話)
Tu vérifieras l’allumage de la Mercedes de monsieur. 単純未来形で、命令・依頼を表しています。
修理工場のシーン・補足
1958年11月、フランスのシェルブール。
この映画の主人公は、傘屋の娘、ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と自動車の修理工のギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)ですが、まずギイが職場で働く様子が描写されます。
この工場は全体的に明るい感じで、ギイはほかの従業員ともうまくやっている様子です。この頃は、彼も幸せだったので、にこにこしています。
彼は、このあと、ジュヌヴィエーヴとデートです。
映画については、以前、主題歌を訳したときに説明しているのでそちらを見てください。
別のブログ(放置中^^;)にレビューも書いています⇒シェルブールの雨傘:ジャック・ドゥミ監督(1964)の感想。
サントラ盤はこちら。
修理工の一人が、しつこく、「僕は映画のほうが好き」と言っているのがおもしろいですね。彼が、「オペラはみんなが歌を歌うのがいやだ」と歌いながら言うのがおかしいです。
この映画は、オペラではなく、映画なのに、出てくる人は、ずっと歌を歌っている画期的な映画です。歌は、すべてプロの歌手による吹き替えです。
この続きはこちら⇒店の前で(映画「シェルブールの雨傘」より):歌と訳詞。
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先日、この映画を見ていて、「あ~、この映画って、何もかもが歌になってるんだよね」と今更ながらに気づき、歌を訳せば、シナリオそのものを訳したことになると、思いました。
そこで、前から順番に歌を訳していくことにしました。
この映画のフランス語は決して難しくないので、初心者でもそんなに苦しい思いをせず、楽しめると思います。
アマゾンのレビューによると、日本で発売されているサントラ盤には、歌詞も対訳もすべてのっているそうなので、そちらを買っていただいてもいいでしょう。ただし、フランス語の注釈はないそうです。
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