今日、ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
困難を切り抜けるための手段が新たな困難を引き起こす。
Il ne sert à rien de déshabiller Pierre pour habiller Paul.
ピエールの服を脱がして、ポールに着せても意味がない
直訳は、「ピエールの服を脱がして、ポールに着せても意味がない」、です。
なぜピエールの服を脱がすのかというと、ポールは着るものがないからですね。でもピエールの服をポールに着せると、今度はピエールの服がありません。
よって、根本的な解決にはなっていないのです。
このことわざは、困難を切り抜けるために別の困難を背負い込む状況をさしています。
特に、借金を支払うために、別のところから借金をしたり、ビジネスなどで自転車操業をするさまを戒めるために使われることわざです。
現代では、クレジットカードの利用による多重債務などが、これにあたりますね。
一つのクレジットカードの支払いをするために、別のクレジットカードを使ってキャッシングをし、すごく利息がついて、払えなくなっていく、という怖い状況です。
今は、クレジットカードを作るのも、キャッシングをするのも簡単なので、借金を作りやすい世の中です。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
il 後ろのde以下をさしています。
sert à < servir à ~に役立つ
À quoi ça sert, cet instrument ?
この道具は何に使うのですか?
rien 否定のneと一緒に、何もない
déshabiller ~の服を脱がす dé + habiller
Pierre ピエール、あるいは聖ペテロ 12使徒の1人 パウロとともに原始キリスト教団の基礎を固めた。
pour ~のために
habiller 服を着せる
Ma femme est en train d’habiller mes enfants.
妻は子どもに服を着せているところです。
Paul ポール、あるいは聖パウロ
直訳
「ピエールの服を脱がしてポールに着せることは意味のないことである。」
補足
トラブルを切り抜けるためにすることが別のトラブルを生む意味で、déshabiller Pierre pour habiller Paulの部分のみを使うことが多いです。
On ne peut accepter de déshabiller Pierre pour habiller Paul.
困難を回避するために、別の困難を呼ぶようなことはすることはできない。
似ていることわざ
英語には、
It’s robbin Peter to pay Paul.
To rob Peter to pay Paul.
一方から奪って他方に返す, 借金で借金を返す。
という表現があります。
このことわざの起源は不明ですが、とても古いことわざであることは確かです。
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昔は、お金を借りるためには、親兄弟、親戚、友人、知人に頭をさげて、ばつの悪い思いをしなければなりませんでした。現代のクレジットカードを使った借金にはそれがありません。
しかも「借金」と言わず、「キャッシング」などと呼び、金融会社はスマートなイメージを作っています。
クレジットカードで買い物をすることは、現実感に乏しいわけですが、借金であることに変わりはなし。
返済のめどが立たないときは、むやみにカードを使うべきではありませんね。
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