フランスの小説家、スタンダールの名言をご紹介します。
Un roman est un miroir qui se promène sur une grande route.
– Stendhal (1783-1842)
小説は街道を歩んでゆく鏡です。
スタンダール
小説は街道を歩んでゆく鏡です。
これは、先週ご紹介した、スタンダールの小説「赤と黒」の中で登場人物が言う言葉。
スタンダールの経歴と代表作「赤と黒」についてはこちら⇒名言その18~広く好かれれば好かれるほど~」
スタンダールが、小説とは何か、について語っています。
鏡はいろんなものを映し出すもの。
街道は、その映しだされることが起こっている場所。
この社会で起こっているさまざまなことを、まるで鏡を使ったように、そっくりそのまま投影したものが小説である、といわけです。
これは、現実を客観的に描写する手法。
写実主義とかリアリズムと呼ばれるものです。
リアリズムの前に、ロマン派の文学というものがありました。
これは、自分の気持ちに忠実に、個性や自由を重んじる流れ。
この反動で、19世紀の半ばにフランスでは、リアリズムを追求する文学の傑作が生まれました。たとえば、バルザックやフロベールの小説です。
スタンダールはこの人達より少し早く生まれています。バルザックよりは16歳、フロベールよりは38歳年上。
ロマン派からリアリズムにうつる中間地点で「赤と黒」が書かれました。
「赤と黒」のサブタイトルは「1830年代記」です。
王政復古の時代で、1789年の革命以前の社会に戻そうと、保守的な政治が行われており、彼はその当時の支配者たちを、小説の中で批判しています。
さて、現実をリアルに移す鏡ですが、自分で動くわけではなく、誰かが持ち歩いています。持ち運べるのだから、この世界すべてを映せるほど大きな鏡ではなさそうです。
持ち歩いている人はどの道を歩くかはわかりません。メインストリートを行く人もいれば、どこかの路地裏みたいなところを行く人もいるでしょう。
歩く道を自分で選んでいる人もいれば、誰かにつきあって、いやいや歩いている人もいるかもしれません。
その道を行く目的だってさまざま。
それに鏡をどこに向けるかによっても、映るものが違ってきます。上のほうにあるものを映す場合もあるし、電信柱の後ろにまわって、下のほうにいる蟻を映すこともあります。
言うまでもなく、この鏡を持ち歩いている人は、その小説を書いている人。同じものをリアルに写実していても、作家によって、そこに映し出される世界が違うわけです。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
un 男性名詞につく不定冠詞 ひとつの
roman 小説
Elle aime beaucoup les romans d’amour.
彼女は恋愛小説が大好きだ。
est < être ~である
miroir 鏡
qui 関係代名詞 ~(するところ)の
くわしくはこちらをお読みください⇒「まいにちフランス語」39:L61 関係代名詞 qui と que
se promène < se promener 散歩する、動きまわる
sur ~の上に
une 女性名詞につく不定冠詞 ひとつの
grande 大きな
route (都市間を結ぶ)道路、街道
都市内部の街路はrue dans la rue 通りで
道路上で、は sur la route
辞書によると、dans と sur の違いは、rueの閉鎖性と、routeの開放性の違いを表すそうです。
直訳
小説は街道を散歩する鏡です。
映画「赤と黒」
1954年、ジェラール・フィリップ主演、クロード・オータン・ララ監督
「赤と黒」はさまざまま映像作品になっていまうが、この映画が一番有名だと思います。
2009年にジェラール・フィリップ没後50周年を記念して、デジタルリマスター版が出ました。
法廷のシーンです。
レナール夫人役はダニエル・ダリューです⇒すずらんの咲く頃・ダニエル・ダリュー、歌と訳詞。
ジェラール・フィリップはこの映画がリリースされた5年後、36歳でガンで亡くなっていますので、どの映画見ても若若しいですね。
名言の記事の目次を作りました。ご利用下さい⇒フランス語の名言の記事の目次
岩崎良美の歌に「赤と黒」というのがあります。
今、YouTubeで見たら、ボタンが2列に並んでいる、黒いコートみたいなワンピースを着て歌ってました。軍服風なのでしょうか。
岩崎良美って、「愛してモナムール」とか「あなた色のマノン」とか、ちょっとフランス語ふうのタイトルの曲がありますね。ちょっとだけね。
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