仏作文力養成講座第5回後半の受講メモです。
後半は名詞を中心した文の講義と練習問題の解説でした。
きょうのメニュー
きょうも先に問題を書いておきますので、解いてみてから続きを見てください。
【次の文のマーカー部分を名詞にした文を書け。】
1. Il attend avec impatience que le courrier arrive.
2. Elle se montre de plus en plus discrête.
3. On se demande si ce médicament est efficace.
それでは、復習、行ってみよう!
名詞化とは?
記事のタイトルの「名詞化」とは何かといいますと、ある文の中の形容詞や動詞(副詞もありうる)をその派生語の名詞にすることです。これは仏検準1より上の問題に出てきます。
たとえば
Son dernier livre n’était pas intéressant.
彼(女)の最新作はおもしろくなかった。
この形容詞 intéressant(おもしろい)を名詞にしろ、という問題が出ます。
名詞はintérêt なので
Son dernier livre était sans intérêt.
とすれば、だいたい同じ意味の文章にします。
このように、ただ名詞にするだけでなく、それに応じてその前後や文の構造自体を変える必要がでてきます。
なぜ名詞化の問題などが出るのかというと、フランス語は名詞中心に文を組み立てることが多いからです。
解説によれば、彼らは文を書く時、まず名詞から発想しているそうです。
それに反して、日本語は動詞表現中心なので、その発想でフランス語を書いてしまうと、意味は通じるが、あまりフランス語らしくない、あるいは洗練されていない文になってしまいます。
そこで練習が必要なのです。
準1のレベルでは派生語の名詞を書くだけでいいのですが、1級になると文を全部書かなければなりません。
これはとても難しいです。そもそも該当する名詞を知っていなければいけませんし、それを中心として、フランス語として正しい文を書かなければなりません。
結論として、名詞化の力をつける=とにかくいろいろ覚える
という世界の話になります。
名詞化の3つの注意点
1.冠詞に注意する
名詞には冠詞がつきものなので、該当の形容詞、動詞を名詞にしたら、必ず、それにふさわしい冠詞について考えなければなりません。
簡単なものなら、ぱっと反射的に書いてしまえますけどね。
たとえば、
Ce n’est pas facile de résoudre ce problème.
その問題を解決するのは難しい。
のrésoudreを名詞化した文章は
La solution de ce problème n’est pas facile.
で、冠詞は定冠詞のlaがつきます。
あるいは
La situation économique s’est rapidement amélioré.
経済状況は急速によくなった。
のamélioréを名詞化すると
On assiste à une rapide amélioration de la situation économique.
となり、冠詞はuneです。
ちなみに、「ある現象が進行している」と言いたいときは、
On assiste à + 名詞
On constate + 名詞
がよく使われます。
on assiste à については前回の記事に書いています。
⇒「~の数が増えている」など3つの表現モデル~仏作文力養成講座第5回 前半
冠詞の選択については第3回後半の記事を参考にしてください。
⇒冠詞の理解を深める~仏作文力養成講座第3回 後半
2.文の構造を変化させる
名詞中心の文に書き換えるとき、ただ、形容詞や動詞の部分に名詞を入れればいいわけでない、というのはわかると思います。
特に動詞を名詞化したら、大幅に変わりますよね。
それは1に書いた3つの例文で、名詞にしたあと、微妙に違っていることからもわかると思います。
たとえば
Où étiez-vous quand son appartement a été cambriolé ?
空き巣に入られた時、あなたはどこにいたのですか?
動詞 cambriolé を名詞にして似た意味の文を書く場合、動詞が動詞ではなくなるのだから、quand以下は主語+動詞の形にはできません。
そこで、
Où étiez-vous au moment du cambriolage de son appartement ?
と、au moment de という前置詞と名詞のまざった句(複合前置詞と呼ばれます)を使用します。名詞の前は前置詞が来るので、接続詞の代わりにそのようなものをつけるのですね。
3.表現モデルを使用
これはどういうことかというと、それぞれの名詞と並んで出てくる単語は、なんでもいいわけでなく、ある程度決まった形がある、ということです。
これは仏作文力養成講座 第1回 表現モデルの大切さでも書きましたが、日本語では
将棋は指す けど、碁は打ちます。
これをフランス語にすると、
jouer au shôgi
jouer au go
と、両方ともjouerでいいのです。
日本語からフランス語にするときも、逆のことが起こりえます。
日本語では「引き起こす」という言葉が使えるものが、フランス語では、引き起こすそのもの(名詞)によって、それぞれ違った動詞を使うことになっていたりするのです。
前置詞との結びつき
2に関連しますが、名詞の前によくついてるものに前置詞があります。この前置詞がある程度決まっているケースが多々見られます。
Les jeunes sont venus massivement écouter la vie.
若者たちが大挙してそのライブを聞きに来た。
副詞 massivement を名詞にすると、
Le jeunes sont venus en masse écouter la vie.
この en masse は決まった表現なので、
1) en をつける
2)masse の前には冠詞がない
ということを覚えておかないといけません。まあ、これは短いので en masse とまるごと覚えておけばいいですね。
動詞との結びつき
上の将棋の話で書いたように、ある名詞にはほぼ決まった動詞がつく、という慣用的なつながりがあります。
Il n’y avait pas encore de preuve crédible permettant de lier la psychose actuelle de la maladie de charbon à Al Qaida.
現在の炭疽病パニックとアルカイダとを結びつけるのに十分な証拠はまだなかった。
* psychose 強迫観念、精神の不安
lier を名詞にすると
Il n’y avait pas encore de preuve crédible permettant d’établir un lien entre la psychose actuelle de la maladie du charbon à Al Qaida.
établir un lien は決まった表現なので、動詞は établir を使います。
問題の解答例
1. Il attend avec impatience l’arrivée du couorrier.
2. Elle fait preuve de plus en plus de discrétion.
* se mettre + 形容詞は faire preuve de (態度などを)示す、という言い方で書き換えることができます。
3. On s’interroge sur l’efficacité de ce médicament.
* se demande si は s’interroger sur で書き換えることができます。
補足
名詞構文についてはこちらの記事も参照してください。
⇒抽象名詞~翻訳講座第10回前半
名詞化の書き換えの練習本の定番、「名詞化辞典」をご紹介しています。
⇒『フランス語名詞化辞典』を買いました アメブロ
この本は仏検準1,1級の対策本としてよく使われています。時事系の文章が多く難しいです。私もまだやりこんでいません。
今回出てきたような難しげな単語ではなく、もう少し簡単な動詞、形容詞とその名詞のリスト(時々増殖します)を作りました。よろしければご利用ください。
名詞化をしようとすると、覚えることがいっぱいあって大変な気分になりますが、なるべく名詞を使って作文しようとすれば、日本語とは違う発想の楽しさを味わうことができるかもしれません。
ふつうに動詞表現で書いてしまった文を見なおして、これってどこかで名詞を使えないかな、と考えるクセをつけるといいですね。
言うは易しですけど。
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