古い町並み

フレンチポップスの訳詞

Nous ne le savions pas(僕たちは知らなかった):パトリック・フィオリ(歌と訳詞)

フレンチ・ポップスからフランス語になじむシリーズ。

今回は、パトリック・フィオリ(Patrick Fiori)の、Nous ne le savions pas(僕たちは知らなかった)という曲を紹介します。

前回に引き続き、フランス人のVéronique Moulin(ヴェロニック・ムーラン)さんの訳詞でお届けします。

Nous ne le savions pas

4分

彼はとてもいい声の持ち主ですね。

歌詞

Je te chante un monde presque oublié
Où les grand-mères embrassaient les enfants
Un monde tête à tête et mains nouées
Sans crainte ni gants, y a pas si longtemps
Je chante un monde envolé

Je chante une foule toute emmêlée
Épaule contre épaule et pleine voix
Ces évidences, aujourd’hui des regrets
Mais nous ne le savions pas

Ici murs et pont-levis
Mains dans les mains que nenni
Filez et foules s’éparpillent et nos villes coupent les ponts
Demoiselle, permettez
On pourrait boire un café
Les yeux dans les yeux mais la belle effrayée s’est envolée

Je te chante un monde tout défaitiste
Noces, anniversaires, adieux périlleux
Nos élans, nos étreintes embarrassées
Danse à distance et soirée couvre-feu
Éclats de rire étouffés

Je pleure nos rendez-vous mélangés
Stades et théâtres, arénas, cinémas
Nous avons tous une dernière fois
Mais nous ne le savions pas

Ici murs et pont-levis
Mains dans les mains que nenni
Filez et foules s’éparpillent et nos villes coupent les ponts
Demoiselle, permettez
On pourrait boire un café
Les yeux dans les yeux mais la belle effrayée s’est envolée

Serpentines et cotillons
Ronde enfantine, c’est non
À vos larmes citoyens
Déformons tous nos bataillons

Bouche à bouche censuré
Corps à corps excommuniés
Les baisers dans les musées
Nos bonheurs archivés

Je chante un ancien monde que j’aimais
Plein de merveilles qu’on ne voyait plus
Reviendra-t-il un beau jour ou jamais ?
Nous étions des princes, nous étions rois
Mais nous ne le savions pas

では、ここからヴェロニックさんによる曲の紹介と訳詞です。

僕たちは知らなかった

« Nous ne le savions pas »(「私達はそれを知らなかった」)は2020年にリリースされたパトリック・フィオリのアルバム « Un air de famille» の一曲です。

フランス人の一番好きなアーティストに選ばれたジャン=ジャック・ゴールドマン(Jean-Jacques Goldman)が作曲したこの曲は、コロナウイルスの影響により変わってしまった今の世界を描いています。

サビの、中世を思い出させる独特なメロディーと歌詞に注目です!

コロナが発生してから2年しか経っていないにもかかわらず、前の世界を中世のようにとても遠く感じる皆さんは、是非詞訳を読みながら、曲を聞いてみてください!

☆僕たちは知らなかった☆

ほとんど消えてしまった世界を歌う
おばあちゃんが子供たちを抱いていた世界
手をつないだり、親しく話したりしていた世界
恐れも手袋もなかった少し前の世界
失ってしまった世界を歌う

人々がひしめいていた世界を歌う
肩と肩がふれあい、大声を出せた世界
当たり前のことが、今日は後悔に
でも僕たちはそれを知らなかった

☆ここは壁と跳ね橋だ
手をつなぐだと? ありえぬ!(昔風の話し方)
そして人々は散り散りになり
町の跳ね橋を上げる
「お嬢様、よろしければ
コーヒーでも飲みませんか?」
目と目を合わせる
でも怖がっている美女は行ってしまった☆

敗北主義の世界を歌う
結婚式と誕生日パーティーにさようなら
僕たちの情熱は、恥ずかしい抱擁に
リモートでダンスする外出禁止パーティーだ
はじけるような笑い声が押さえこまれる

みんなとの待ち合わせを嘆く
スタジアムも劇場もアリーナも映画館も
誰にでも「最後の…」がある
でも僕たちはそれを知らなかった

☆~☆ 繰り返し

紙テープや紙吹雪を投げるのも
子供が輪になって踊るのもダメ
涙をもて 市民よ(マルセイエーズ風に)
軍隊を解散しよう (マルセイエーズ風に)

口にキスは禁止
体と体は破門
博物館でのキスも
僕たちの幸せがアーカイブされる

好きだった昔の世界を歌う
見えなくなってしまっていた素晴らしいものに満たされていた世界
いつか戻ってくるのか、来ないのか?
僕たちは王子だった、僕たちは王だった
でも僕たちはそのことを知らなかったんだ

単語メモと補足

emmêler  もつれさせる

un pont-levis  跳ね橋

nenni  否、そうではない ☆古い言葉 = non 
 
s’éparpiller 散る

un élan  はずみ、突進、感情のほとばしり

une étreinte  しめつけること、握りしめること、抱擁

un serpentin  色のついた紙テープ

un bataillon  大隊

censurer  検閲によって禁止する、懲罰処分にする

excommunier  破門する;追放する、除名する

À vos larmes citoyens
Déformons tous nos bataillons

ここは、ヴェロニックさんが書いているように、フランスの国歌、ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)の歌詞、

Aux armes, citoyens (武器を持て、市民よ)
Formez vos bataillons (大隊を作れ)

のもじりです。

ラ・マルセイエーズは、こんな曲です。

1分6秒。

マクロン大統領がテレビでスピーチする前に流れるし、オリンピックでフランスの選手がメダルを獲得すると演奏されますね。

Nous ne le savions pas・関連動画

歌詞付きの動画です。

私が気づいた限り、上で引用した歌詞と違うところは、

Je te chante un monde tout défaitiste の défaitiste が、défèté に

Ici murs et pont-levis の ici が Hissez に なっているところです。

ですが、ヴェロニックさんは、それぞれを「ここ」と、「敗北主義」と訳していたので、そのようにしておきました。

私は、défaitiste じゃなくて、défaire (負かす、圧倒する、殺す)の活用形かなと思ったのですが、défèté というスペルの単語はないみたいだし、défaire の過去分詞は、défait です。

日本のレコード(CD)には、歌詞カードがついてきますが、海外のCDには、ふつう歌詞カードがついていないので、ネイティブでも、人によって、解釈が違うんですよね。

まあ、COVID-19のせいで、かつて普通だったことができなくなってしまった、と歌っていることには変わりはありません。

このCDに入っています。

パトリック・フィオリの歌はこちらでも訳しています⇒Les gens qu’on aime(僕たちが好きな人たち)パトリック・フィオリ:歌と訳詞 簡単なプロフィールも書いています。

ヴェロニックさんは、前回の記事で紹介しましたが、現在日本で国際交流員の仕事をされているフランス人女性です。

YouTubeにも登場されています⇒⇒Tomioka Silk Mill – YouTube

*****

今、カナダでは少しずつ規制が解除されていて、たぶん夏頃はふつうの感じで暮らせそうです。

とは言え、新型コロナウイルスは消えたわけではないので、秋冬は、また規制されるかもしれませんね。






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