フランスの女流作家、劇作家のフランソワーズ・サガンの名言をご紹介します。
La mémoire est aussi menteuse que l’imagination, et bien plus dangereuse avec ses petits airs studieux.
– Françoise Sagan (1935-2004)
記憶は空想と同じくらい嘘つきよ。まじめなたたずまいがあるから、空想よりずっと危険だわ。フランソワーズ・サガン
記憶は空想と同じくらい嘘つきよ。まじめなたたずまいがあるから、空想よりずっと危険だわ。
サガンらしいエスプリに富んだ言葉だと思います。
記憶は空想と同じくらい嘘つき…これはつまり、記憶があてにならない、と言うことです。
その理由は2つあります。
1つは、そもそも人間は忘れる動物だから。本当に過去に起こったことを忘れてしまいます。
よく「思い出はたいてい美しいものだ」、と言われますね。私たちはたぶん無意識に、嫌なことは記憶から消し去ってしまうのでしょうね。
時には、自分で自分に思い込ませようとしたり。
悲しかったこと、つらかったことは、みんな無意識の中のどこかに押し込められているのでしょう。
記憶が嘘をつくもう1つの理由は、人間は自分の好きなようにしか、まわりの現象を解釈しないから。
名言その11~みんなめがねをかけている~アルフレッド・ド・ミュッセで書きましたが、人は、周囲で起こっているいろんなことを、全部自分の都合のいいように捉えています。
他の人と同じ情報を受け取っているのに、自分の聞きたいことだけを聞き、見たいことだけを見て、都合の悪いことは、はじくんですね。
記憶はこうした自分の感じたことの集大成ですから、そもそも最初から嘘なのかもしれません。
そうした記憶は、初めから嘘だとわかっている空想よりも、本当みたいに装っているぶん、たちが悪いのです。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
la 女性名詞につく定冠詞 ここでは「~というもの」
mémoire 記憶 mémoire は女性名詞だと「記憶」、男性名詞だと、「報告書、論文、レポート」です。詳しくは⇒男性と女性がある名詞
est < être ~である
menteur, menteuse うそつきの、いつわりの
aussi … que ~とおなじくらい(比較の構文)
l’ = la 女性名詞につく定冠詞
imagination 空想
et そして
bien とても
plus より~である (比較の構文)
dangereux, dangereuse 危険な、危ない
avec ~のせいで
Le lac a gelé avec le froid.
湖は寒さで凍った。
ses その(airsが複数形なので、これも複数形)
petit 小さな、少し
airs 雰囲気
studieux 勉強[研究]熱心な、勉強[研究]好きな
文法~形容詞の比較の文
aussi + 形容詞 + que 比較するもの
~と同じくらい~
plus + 形容詞 + que 比較するもの
~より~です
例文
Elle est aussi âgée que moi.
彼女は私と同年輩です。
Pen est plus grande que Pam.
penはパムより背が高い。
⇒「まいにちフランス語」19:L41~比較
直訳
記憶は空想と同じくらい嘘つきである。そして、それは少し勉強好きな雰囲気があるので、さらにとても危険である。
フランソワーズ・サガン(1935-2004)
18歳の夏、6週間で書いたデビュー作「悲しみよこんにちは」の大ヒットで、一躍時代の寵児になったサガン。その後もベストセラーを続出。
彼女は裕福な家の出身で、若いうちに大成功してさらにお金持ちになります。でも、パーティ、ギャンブル、アルコール、麻薬などにどんどん使ってしまい、晩年はお金がなかったとか。
結婚、離婚を2回繰り返し、自動車事故で重症を負ったり、麻薬、脱税で逮捕されたり、まるでハリウッドの若いスターのようにゴシップ欄をにぎわせていました。
もともと享楽的な性格だったのかもしれませんが、若いうちに名声と巨額の富を手に入れてしまったので、お金目当ての人たちが寄ってきたんでしょうね。
亡くなって4年ほどしてから伝記映画ができました。
予告編です。
この映画はサガンの悪いところばっかり描いてるんで、「いいとこ、なかったんかいな?」と思ってしまいます。
この女優さん、サガンに似てますけど、写真を見るとサガンのほうがもっと可愛かったですね。少なくとも若い頃は。
彼女はすごい読書家で、コクトー、ランボー、プルースト、スタンダール、フルベール、カミュといったフランスの小説家の作品や、フォークナー、ヘミングウェイ、フィッツジェラルドなんかのアメリカの作家の小説が好きだったそうです。.
プルーストなんて、たとえ母国語でも、読むの、大変だと思うんですけどね。また、サルトルとも仲がよかったです。
60年代にフランスの文壇(?)に登場したので、そういった文化人との交流もたくさんあったでしょうね。
ちなみに、サガンというペンネームはプルーストの『失われた時を求めて』の登場人物の名前からとったとのこと。
代表作
●Bonjour tristesse (1954) 悲しみよこんにちは
●Un certain sourire (1955) ある微笑み
●Dans un mois, dans un an (1957) 一年ののち
●Aimez-vous Brahms? (1959) ブラームスはお好き
●Les merveilleux nuages (1961) すばらしい雲
●La chamade (1965) 熱い恋
●Le Garde du cœur (1968) 優しい関係
●Un peu de soleil dans l’eau froide (1969) 冷たい水の中の小さな太陽
●Un profil perdu (1974) 失われた横顔
日本でよく知られているのは、なんといってもデビュー作。そして、50年代~60年代の作品だと思います。
映画化された作品も多いですね
いかがでしたか?
私、サガンの小説はそんなに読んでないんですが、70年代に日本でもたいへん人気があったと思います。
「愛と同じくらい孤独」というエッセイ集(というかインタビューを集めたもの)を読みました。自分で買ったか、友だちに借りたかしました。
中身はすべて忘れましたが、青い表紙を覚えています。山口百恵の「蒼い時」が出た時、この本のことを思い出しましたね。
楽しく読ませていただきました。プルーストの「失われた時を求めて」は7巻から構成されていますが、彼女は5巻の「囚われの女」から読み始めました。この巻は日本語訳は2冊になりますが、全巻、語り手の、同棲中の女性の過去の交際相手に対する嫉妬が書かれていて、サガンはそこに大変興味を覚えたらしく、そのまま終わりまで読み進み、さらに第1巻から読み直し、全部読みきったそうです。「もし、第1巻から読み始めていたら、途中でやめて、全部を読みきることはなかったろう」と言っています。プルーストはどこから読んでもいいと言われていますが、彼女はそれを地で行っています。
樋沼さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
へ~、サガンは5巻から読み始めたのですね。
しかも、その巻の内容は嫉妬がえんえんと書いてあるなんて。
おもしろいですね。
プルーストの小説はどこから読んでもいいなんて知りませんでした。
教えていただきありがとうごじざいます。