シルヴィ・バルタンの代表曲であり超有名曲、あなたのとりこ(Irrésistiblement)を紹介します。1968年の曲です。
日本でも人気がある曲なので、訳詞を書いているサイトは他にもたくさんあると思います。この記事では単語の説明を少し丁寧にします。
Irrésistiblement (あなたのとりこ)
すごくいい曲だと思うので、ふつうにオーケストラかなんかをバックにシンプルに歌えばいいと思うのですが、バックダンサーをつけたほうがよい時代だったのでしょうか。
映像なしで、音だけ聞いているほうがいいぐらいですね。
タイトルの、Irrésistiblement は 副詞で、どうしようもないほど、抵抗できないほど、という意味です。発音(読み方)は イレジスティブルモン です。
歌のテーマはごくシンプルで、「私はあなたに夢中です、たとえ何があっても、愛があれば大丈夫、愛してます、あなた」というラブソングです。
単語もそこまで難しくありません。では和訳します。
Irrésistiblement どうしようもないほど
Tout m’entraîne, irrésistiblement vers toi comme avant
Tout m’enchaîne, irresistiblement a toi je le sens
どうしようもなくあなたにひかれてしまうの、以前のように
どうしようもなくあなたに結びついてしまうの。そう感じるの
Comme le jour revient après la nuit
Et le soleil toujours après la pluie
Comme un oiseau qui revient vers son nid
Vers mon amour je vais aussi
夜のあとに朝が来るように
雨が上がったあと太陽が出るように
鳥が巣に戻るように
私も彼のところに行ってしまうの
Tout m’entraîne, irrésistiblement vers toi a chaque instant
Tout m’enchaîne, irrésistiblement a toi je le sens
どうしようもなくあなたにひかれてしまうの、どんな時でも
どうしようもなくあなたに結びついてしまうの。そう感じるわ
Comme la mer qui frappe le rocher
Obstinément sans jamais désarmer
Par le malheur on est souvent frappé
Mais l’amour seul peut nous sauver
岩に打ちつける海のように
決してこの気持ちは変わらない
2人の間に不幸なことが起きても
愛さえあれば、立ち直れる
Tout m’entraîne, irrésistiblement vers toi a chaque instant
Tout m’enchaîne, irrésistiblement a toi je le sens
どうしようもなくあなたにひかれてしまうの、どんな時でも
どうしようもなくあなたに結びついてしまうの。そう感じるわ
Comme la joie revient après les pleurs
Après l’hiver revient le temps des fleurs
Au moment où l’on croit que tout se meurt
L’amour revient en grand vainqueur
涙のあと喜びが戻るように
冬のあと花の季節がやってくるように
すべてが死に絶えてしまうと思っても
再び愛が打ち勝つのよ
Tout m’entraîne irrésistiblement vers toi, comme avant
Tout m’enchaîne irrésistiblement à toi, je le sens
どうしようもなくあなたにひかれてしまうの、どんな時でも
どうしようもなくあなたに結びついてしまうの。そう感じるわ
☆歌詞はこちらを参照しました⇒Sylvie Vartan – Irrésistiblement Lyrics | Genius Lyrics
単語メモ
entraéîner ~を引いていく、引きずり込む、連れて行く
traéîner は「引く」という意味で、それに en という接頭語がついています。enが動詞につくときは、行為の開始、完遂、強意を表す、と辞書にあります。
ずるずると引きずり込む感じですね。
irrésistiblement どうしようもないほど、抵抗できないほど ← irrésistible
Le prix de la vie monte irrésistiblement 物価は容赦なく上昇している。
単語の成り立ちは、
résister が 抵抗する(動詞)
これに 「~できる」という意味の接尾語 ble がついて、抵抗できる(形容詞)
前に、否定(打ち消し)のir がついて、抵抗できない。
そして、副詞を作る接尾語 ment がつき、抵抗できないほど、という意味になります。
mentはおもに形容詞女性形につき、~の仕方で、~のように、という意味の副詞になります。
enchaîner 鎖でつなぐ
enchaîner qn/qc à ~を~に鎖でつなぐ
chaîne は鎖です。
派生語に、enchaînement アンシェヌマン(オンシェヌマン)があります。
obstinément 頑固に、執拗に ← obstiné
désarmer 怒りや感情がやわらぐ
au moment où ~の時に
Au moment où il partait, elle arriva.
彼が出発しようとしていた時に彼女が到着した
meurt < mourir 死ぬ、死にかけている
vainqueur 勝利者
文法メモ
Tout m’entraîne, irrésistiblement vers toi comme avant
この文から副詞と副詞句を取って、文の要素だけ取り出すと、
Tout m’entraine vers toi.
何もかもが私をあなたのほうに引っ張っる。
という意味です。
最初のtoutは訳しませんでした。要するに、どんな時でも、何をしていても、ことあるごとに、自分は恋人に引かれてしまう、まさに私はあなたのとりこなんだ、ということです。
「あなたのとりこ」なんて箇所は歌詞には1つもないけれど、実体はとりこですから、「あなたのとりこ」というのはうまいタイトルですね。
Obstinément sans jamais désarmer 頑固に武装をとく(気持ちが変わる)ことなど決してなく つまり、ずっとこの気持ちは変わらないよ、ということです。
Par le malheur on est souvent frappé
Mais l’amour seul peut nous sauver
最初の文は、On est souvent frappé par le malheur という文の、par le malheurが文頭に出ています。
直訳は、不幸(逆境、災難、災い)にしばしば見舞われても、愛が唯一、我々を救うのだ。つまり、愛さえあれば、何が起きても大丈夫、ということです。
Au moment où l’on croit que tout se meurt
L’amour revient en grand vainqueur
直訳は、何もかもが死んでしまうと私たちが思う時も、愛が、圧倒的な勝利者の状態で再び戻ってくる、です。この enは 「~の状態の」という意味です。
en panne 故障中の
en fleurs 花盛りの
のenと同じです。
歌詞つき動画とカバーバージョン
この歌をカバーしている人はあまりいない(というかYouTubeにない)ので、ポール・モーリアのインストゥルメンタルを紹介します。
シルヴィ・バルタンについて(プチプロフィール)
シルヴィ・バルタン(Sylvie Vartan)は1960年代を代表するフランスの女性歌手。アメリカやイギリスではそんなに人気がないと思いますが(よく知りませんが)、日本では大変人気があります。
1944年8月15日、ブルガリアのバルカンという小さな街生まれ。終戦記念日の1年前ですね。お父さんはフランス大使館に勤務していました。
シルヴィが生まれた年の9月にソビエト軍がブルガリアを侵略したので、シルヴィー一家は、ソフィアに引越し。しかし、ここでの生活もつらいものだったので(何もかも配給で、食べ物がなかった)、1952年に一家でパリに移住します。
シルヴィが8歳のときです。
彼女はフランス語が全くしゃべれなかったので(あたりまえですけど)、最初は苦労したみたいですが、2年でフランス語をマスター。語学の才能があったようです。
シルヴィには7歳年上のお兄さん、エディーがおり、RCAレコードで働いていました。
彼がプロデュースしていた、フランキー・ジョーダンという歌手が、アメリカのフロイド・ロビンソン(Floyd Robinson)の Out of Gas という曲をカバーしようとしていました。
エディはジョーダンのデュエットの相手を探しており、目当ての歌手に断られてしまいました。そこで、妹(当時高校生)に「ちょっと歌ってくれない?」と頼んだのです。
それがこの Panne d’essence です。
シルヴィは高い声で歌っていますが、これはもともと予定されていた歌手の音域です。彼女の地声はもっと低いです。
シルヴィの両親は、娘に学業に専念してもらいたかったので、このレコーディングには反対していました。シルヴィもそこまでやる気はなかったようです。
しかしこの曲がヒットして、RCAレコードはシルヴィを本格的に売り出したいと思ったのです。両親はずっと反対していましたが、結局折れて、シルヴィは高校を途中でやめRCAと契約。
レコードを吹き込み、1961年12月12日にオリンピア劇場でも歌いました。17歳のときです。
デビュー当時
リトル・エヴァのロコモーションのフランス語版。作詞はジェリー・ゴフィン、作曲はキャロル・キングです。
シルヴィは最初はこんなふうにアメリカの曲のフレンチカバーをよく歌っていました。これは当時の日本の歌手と同じですね。
その後イエイエの時代が来まして、1964年に「アイドルを探せ」という曲が大ヒット。
この時20歳ぐらいです。大人っぽいですね。
歌詞をこちらで訳しています。
そのあと、ジョニー・アリディと結婚して離婚したり、2度も大きな交通事故に遭い整形することになったりと、いろいろありましたが、今も現役で活躍しています。
こちらの記事でもヴァルタンの曲を紹介しています。
「あなたのとりこ」が入っているCD↓
私はシルヴィ・バルタンが大好きというわけではなく、「リアルタイムで聞いたな~」と思うのは、「哀しみのシンフォニー(Caro Mozart)」ぐらいです。
これとて、原曲のモーツアルトの交響曲、第40番、第1楽章ト短調(K550)が好きだから、「いい曲ね~」と思って聞いていただけです。
しかも、これイタリア語です。
整形後なので人相、変わってます。音はレコードで口パクなんですが、デビュー当時より歌がうまくなっていますね。
シルヴィはフランス語、英語、イタリア語が得意らしいです。ロシア語やスペイン語でもレコーディングしています。
また、何かよい曲を見つけたら紹介しますね。
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