今日、ご紹介するフランス語のことわざは猫がでてくる格言です。
夜は物の文目(あやめ)も分かず
La nuit tous les chats sont gris.
(夜、猫はみんな灰色だ)
日本語のことわざの説明
まず日本語のことわざが難しいので説明します。
「夜は物の文目(あやめ)も分かず」
文目とは?
意味1:織物や木目の模様。
意味2:比喩的に、物の区別、見分け、けじめ。
比喩的に使う場合は、たいてい、文目のあとに「知らず」「分かず」「見えず」というような語が来ます。
使い方の例として、源氏物語の玉鬘(たまかずら)の詠んだ歌をご紹介しますね。
あらはれていとど浅くも見ゆるかな文目も分かず泣かれける音(ね)の
この歌の文目は植物のアヤメもさしています。
蛍兵部卿宮(ほたるひょうぶきょうのみや)が、玉鬘に「あなたに相手にされなくて泣いてばかりいます」と求愛の歌を送ったのに対して、
分別もなく、好きだと泣きわめいているあなたの気持ちはさして深いものではないのでは?
といなしています。
La nuit tous les chats sont gris.の説明
夜間、猫はみんな灰色である
これはそういう科学的な現象を述べているだけです。
夜間、猫がカメレオンの色のように変色するのではなく、私たちの目のメカニズムのせいで灰色に見えるのですね。
猫が灰色・・・だからなに?と聞きたくなってしまうことわざです。
実は猫はみんな灰色⇒どんな猫もみんな同じ、と考えて
●夜はものがよく見えないので、女性の容貌は関係ない。
あまり美しくない方ともおつきあいできる。
あるいは、女性なら誰でもよい。
●何らかの理由で物がよく見えない状況においては、
正しい判断をすることが難しい。
という二つの使われ方があります。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
nuit 夜
tous すべての
chat 猫
sont < être ~である gris 灰色 ★直訳 「夜は猫はみんな灰色だ」 ★ la nuit 文頭にある「夜」は時をあらわす副詞として使われています。
同じ意味の英語のことわざ
ちなみに、英語にも同じ意味のことわざがあります。
All cats are grey in the dark.
1546年のジョン・ヘイウッド(John Heywood)ということわざ集の編さんで有名な作家の本にのっているそうです。
英語で調べると、ベンジャミン・フランクリンが言ったとされる「夜のお供のご婦人は年齢は関係ありません」というような引用がたくさん出てきます。
現在は夜も人工の照明で昼のように明るいですから、そうもいかないかもしれません。
さて、このことわざは猫をご婦人にたとえる以外にもいろんな解釈ができます。
たとえば、まだ世界が始まっていない状況を夜としてみます。
フランス語を始めたばかりなら、フランス語の文章を読んでも単語の区別など全くつかないでしょう。
けれども、闇夜にひとずつ灯りをともしていくように、ひとつひとつ単語を覚えていき、星空のようにしていけば、それぞれの単語が区別できるだけでなく、どれもとても美しいものだということに気づけるのではないでしょうか?
あなたの夜明けは思ったより近いかも?
La nuit tout blé semble farine 夜はすべての小麦粉が上等に思えるとも言うようです。日本語では「闇夜の錦」「夜目、遠目、笠のうち」といって、暗い所では物の色や人の顔付や着衣がわからないから、警戒しろという意味で使われています。 佐渡けさでも阿波踊りでも、口元をきりりと締め、笠で全体が見えないようにすると女ぶりは一段と上がります。素敵だな、と思っていた顔が鳥追い笠を脱ぐとおかめ面だったりしてがっかりすることは何回も経験しました。
樋沼さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
La nuit tout blé semble farine.
小麦粉のことわざ、おもしろいですね。きっと、白いのや茶色いのやいろいろあるからですね。
「夜目、遠目、笠のうち」って知ってましたけど、笠は傘かと思っていました。
いつもありがとうございます。