シャネル(1883-1971)の名言をとりあげます。
ココ・シャネルは1920~70年代に活躍したフランスのファッションデザイナー。世界的に有名なファッションアイコンですね。
Si une femme est mal habillée, on remarque sa robe mais si elle est impeccablement vêtue, c’est elle que l’on remarque.
下品な服装は服だけが目につき、上品な服装は人物を引き立たせる。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
si もし
une femme ある女性 uneは女性名詞につく不定冠詞
est < être ~である
habillée 服を着た、服装をした(←habillerの過去分詞より)主語が女性なので、過去分詞が一致してEがついています。
mal 悪く
on 一般に人々
remarque < remarquer ~に注目する、気づく
sa 彼女の
robe ドレス
mais でも
elle 彼女
impeccablement 非の打ち所なく、完璧に(形容詞はimpecable)
vêtue ~の身なりをしている(←vêtirの過去分詞)
c’est…que 強調構文
c’est elle que l’on remarque.その女性にこそ、人々が目を留める
・・・ちょっと単語が多かったですね。
直訳
もし、ある女性がひどい身なりをしていたら、人はそのドレスに注目します。でも、もし彼女が完璧な装いをしていたら、人が目を留めるのはその女性です。
補足
que l’on = que on このl’はqueの母音(う)とonの母音(お)の衝突を避けるためにはいっています。しかし、 qu’on という言い方もされます。l’が入っているほうがフォーマルな印象になると思います。
英語では
以下のような文で知られています。
“Dress shabbily and they remember the dress; dress impeccably and they remember the woman.”
最初に書いた和訳は、一般によく聞くもので、直訳は自分で訳しました。
名言の訳は定番があったり、なかったりするので、これとは違う訳でなじんでいる方もいるでしょう。
est mal habillée ひどい装いをする
というのは、シャネルにとっては下品な装いです。彼女は「下品な服装」を嫌っていましたから。
下品な服を着ていると服ばかりが悪目立ちする。しかし、上品な服を着ていると、その服を選んだ人のセンスなどが感じられ、みんなに「中身も素敵な人なんだろうな」と思われる、ということですね。
この言葉だけ見ると、「馬子にも衣装」と言えなくもないですが、シャネルは内面の大切さもよく説いており、服装と人間性には相関関係がある、と考えていたようです。
確かに、プレゼンテーションというのは、時には中身以上に大切なものです。
それと、以前もブログに書きましたが、ファッションはフランス人にとっては「その人自身をあらわす哲学」という要素があるのですね。
シャネルについて
シャネルと聞いてあなたは何を思い浮かべるでしょうか?
トレードマークがいっぱいあります。
4分28秒で彼女の仕事を紹介している動画がありましたので、ごらんください。これはもとは音声だけだったのでしょうか?写真は同じのが何度も出てきます。
Les Fabuleuses destinées sur RTL : Coco Chanel
それまで女性はコルセットや長いドレスできゅうくつな思いをしていました。そんな女性たちに、着やすく、動きやすく、かつおしゃれな服を提供したのがシャネルです。
彼女は常に何か新しいものを創造しつづけたクリエーターでした。そして、自身のブランドで大成功したビジネスマン(ビジネスウーマンと書いたほうがいいのかな?)なのですね。
ココの本名はガブリエル(Gabrielle)
故郷は、南仏のオーヴェルニュ地方ソミュール。貧しい家の生まれで、12歳のとき、母親が亡くなり、行商をしていた父親に、2人の姉妹といっしょに孤児院に入れられてしまいます。
ここで習った縫い物が、後に、彼女のキャリアへの扉を開くのです。
18歳で孤児院を出た時は、歌手志望で、お針子仕事のあいまに、クラブで歌っていました。ここでついた愛称がCocoです(洒落ではありません)。
歌手になる夢はほどなくしぼみましたが、気まぐれで作った帽子が注目をあびます。
そのころつき合っていたお金持ちの将校にスポンサーになってもらい、帽子のブティックを出します。あとはどんどん成功への階段を登っていきました。
はじめのうちこそ、恋人に資金援助してもらって店を出しましたが、すぐに自分の腕でビジネスを展開するようになったシャネル。
そんな彼女の残した言葉はおしゃれ哲学というより人生哲学です。
☆シャネルの生涯はこちらで紹介⇒孤児、ガブリエル・シャネルはいかにしてココ・シャネルになったのか?(1)
☆シャネルの名言その2はこちら⇒名言その2~ココ・シャネル~この世で一番勇気のいる行動とは?
新しすぎてなかなか受け入れてもらえなかったシャネル
今でこそ、彼女の服はエレガンスの代名詞ですが、世に出た頃は、新しすぎて、「下品」あるいは「変てこ」に見えました。
そのあたりのことがよくわかる、『ワンス・アポン・ア・タイム』というショート・ムービーを最後にご紹介します。
帽子のブティックをドーヴィルにオープンした頃のシャネルを題材に、カール・ラガーフェルド(現在のシャネルのデザイナー)が監督した映画です。これは1913年、ドーヴィルのシャネル第1号店オープンの100周年を記念して製作されました。
シャネル役はココ・マドモアゼルという香水のCMに出ているイギリスの、キーラ・ナイトレイという女優です。
シャネルの映画といえば、オドレイ・トトゥがシャネルを演じた『ココ・アヴァン・シャネル』が有名ですね。
私はキーラ・ナイトレイのほうが好きです。問題は、なぜかこのショート・フィルムでは最初の通行人をのぞいて、たまにあいさつで Bonjour,Au revoirと出てくる以外は、みんな英語をしゃべっていることです。
半分プロモーションフィルムという性格があるからかもしれません。でもラガーフェルドの美意識が感じられ、私は気に入っています。
本編は15分ぐらいです。お時間のある方はごらん下さい。
“Once Upon A Time…” by Karl Lagerfeld
ワンス・アポン・ア・タイム
18分
こちらはフランス語の字幕付きバージョンです。
今までと違いすぎて、すぐには受け入れてもらえなかったシャネルのファッション。
しかし、それまでの女性の体や動きに負担をかけないシンプルなモードなので、ほどなくして、あらゆる階層の女性に愛されるようになりました。
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