フランスの詩人、ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert)のEn sortant de l’école(学校からでてきたら)という詩を紹介します。
フランスの子供たちが学校で学ぶ詩だと思います。プレヴェールの詩は平易なので初心者におすすめです。
学校からでてきたら
子供が朗読している動画を紹介します。
En sortant de l’école
En sortant de l’école
nous avons rencontré
un grand chemin de fer
qui nous a emmenés
tout autour de la terre
dans un wagon doré
Tout autour de la terre
nous avons rencontré
la mer qui se promenait
avec tous ses coquillages
ses îles parfumées
et puis ses beaux naufrages
et ses saumons fumés
Au-dessus de la mer
nous avons rencontré
la lune et les étoiles
sur un bateau à voiles
partant pour le Japon
et les trois mousquetaires
des cinq doigts de la main
tournant ma manivelle
d’un petit sous-marin
plongeant au fond des mers
pour chercher des oursins
Revenant sur la terre
nous avons rencontré
sur la voie de chemin de fer
une maison qui fuyait
fuyait tout autour de la terre
fuyait tout autour de la mer
fuyait devant l’hiver
qui voulait l’attraper
Mais nous sur notre chemin de fer
on s’est mis à rouler
rouler derrière l’hiver
et on l’a écrasé
et la maison s’est arrêtée
et le printemps nous a salués
C’était lui le garde-barrière
et il nous a bien remerciés
et toutes les fleurs de toute la terre
soudain se sont mises à pousser
pousser à tort et à travers
sur la voie du chemin de fer
qui ne voulait plus avancer
de peur de les abîmer
Alors on est revenu à pied
à pied tout autour de la terre
à pied tout autour de la mer
tout autour du soleil
de la lune et des étoiles
A pied à cheval en voiture
et en bateau à voiles.
詩心はまったくない私ですが、和訳します。視覚的なイメージを大事にするために、頭から訳してみます。
En sortant de l’école 学校からでてきたら
学校からでてきたら
僕たちは出くわした
大きな線路に
その線路は僕たちを連れていってくれる
大地をぐるっとまわって
金色のワゴンにのって
僕たちは出くわした
海だ。海は散歩していた
貝殻、全部
いいにおいのする島々
それにとってもきれいな難破船
それとくんせいにした鮭といっしょに
海の上で
僕らは出くわした
月とお星様
帆かけ船の上で
日本に向かっていた
三銃士が
5本の指で
僕のハンドルを回している
それは小さな潜水艦のハンドル
海の底まで沈んでいく
ウニを探しに
大地に戻ったら
僕たちは出くわした
線路の上を
逃げていく1軒の家に
大地をぐるっとまわって逃げていく
海をぐるっとまわって逃げていく
冬の前を逃げていく
冬はその家をつかまえようとしていた
でも線路の上を
僕たちは進み始めた
冬の後を進んで
冬をひいてしまった
そして家は止まった
そして春が僕たちにあいさつをした
春こそが、踏切番だったんだ
春は僕たちにとても感謝した
大地の上の花々が
突然、大きく伸び始めた
てんでんばらばらの方向に
線路の上で
線路はもう前に進みたくなかった
花をひいてしまいそうだから
だから僕たちは歩いて帰った
大地をぐるっと歩いてまわった
海をぐるっと歩いてまわった
太陽のまわりもまわって
月やお星様のまわりも
歩いて、馬にのって、車で、船で
単語メモ
chemin de fer 鉄道
鉄道ですが、「鉄道でお出かけします」とは言わないので、訳では「線路」にしました。しかし、厳密に言うと、線路は、もう少しあとに出てくる voie de chemin de fer です。
wagon 車両、貨車
naufrage 難破
manivelle クランク
クランクは往復運動を回転運動に、回転運動を報復運動に変える装置。手回しのハンドル。
oursins ウニ
fuyait < fuir 逃げる 半過去、3人称単数
活用は、fuyais, fuyais, fuyait, fuyions, fuyiez, fuyaient
rouler ~を転がす;(車輪のついた物を)動かす、~で移動する
écraser 押しつぶす、(自動車が)ひく
garde-barrière 踏切の保安係、踏切り番
se mettre à inf. ~を始める、取りかかる
se mettre à rire 笑い出す
se mettre à manger 食べ始める
se mettre au régime ダイエットをする
☆この単語、よく「プチ・ニコラ」に出てきます。ニコラは泣き始めた、とか、友だちの◯◯が泣き始めた、とか。
プチ・ニコラとは? ⇒ プチ・ニコラ(映画)予告編のフランス語(前編)
à tort et à travers 軽率に、でたらめに、分別なしに
abîmer 傷める、破損する、損傷する
きょうの文法プチポイント:ジェロンディフ
ジェロンディフ というのは、en + 現在分詞 という形です。これは動詞ですが、メインの動詞の説明をする副詞句として登場します。
この詩のタイトルでもあり、冒頭にもでてくる En sortant が、そうです。 sortant は sortir(外に出る)という動詞の現在分詞です。
副詞句とは、副詞(いろいろなものに説明を加えている言葉)として機能している単語の集まりです。単語が連なっていますが、「主語+動詞」という形はとっていません。
「主語+動詞」があるかたまりで、副詞の役割をしているのは、副詞節と呼びます。
En sortant de l’école, nous avons rencontré un grand chemin de fer qui 以下は鉄道の説明
この文章のメインの動詞は、avons rencontré 「(鉄道に)偶然出会った」ですが、ジェロンディフを使って、どんな状況で偶然出会ったのか説明しているのです。
ジェロンディフの意味は前後の文脈から推測します。この場合は、鉄道に偶然出会ったのは、学校から出た時である、と考えられるでしょう。
ジェロンディフは、ENと現在分詞が骨組みであり、主語がついていませんが、基本的に、メインの主語と同じです。いつも現在分詞で活用しないので、脳に負担の少ない文法事項と言えましょう。
意味だって、文脈から適当に解釈してしまえばいいのです(だから人によって解釈が変わることもあります)。
とはいえ、ジェロンディフで表す意味には、一定の傾向があり、文法書によって使う言葉は違いますが、だいたい以下のような意味で使われます。
◯時(同時性) ~しながら、~するとき
◯原因・理由・方法 ~だから
◯条件・仮定 ~ならば
◯対立 ~であるにもかかわらず ☆この意味のときは、tout en ~ と tout がつくことになっています。
例文
On progresse en langue en faisant des exercises. 練習問題をすることで語学は進歩します。 ☆これは「方法」です。
6分45秒ありますが、フランス語でジェロンディフを説明している動画を貼っておきます。
こちらでも説明しています⇒「まいにちフランス語」42:L64 現在分詞とジェロンディフ
学校をでてきたら・歌バージョン
En sortant de l’école は、歌にもなっています。作曲は Joseph Kosma(ジョゼフ・コズマ)です。
とても楽しい歌です。
こちらは男性が歌っています。私はこちらのアニメーションのほうがかわいいので好きです。
今年はプレヴェール(1900年2月4日 – 1977年4月11日)没後40周年です。記念イベントを行っているフランス語学校も多いかもしれません。
当ブログでは、過去にこんな詩も紹介しています。
Le Jardin(ジャック・プレヴェール)という詩を読んでみた
また機会があったら別の詩も紹介しますね。
*******
退屈な学校の授業を終えて、外にでたら、いきなり線路ができてて、ワゴンに乗って、地球を一周した、なんて本当に夢がありますね。
列車はもともと夢のある乗り物なのかもしれません。
スピルバーグ監督の映画、ポーラー・エクスプレス(The Polar Express)(原作は絵本)とか、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の銀河鉄道みたいに、不思議なところへ誘ってくれる鉄道はほかにもあります。
銀河鉄道は確か線路の上を走っていなかったと思いますが。
この記事へのコメントはありません。