フランス映画の予告編でフランス語を学ぶシリーズ。今回は La tête en friche という映画を紹介します。記事タイトルでは文字化け防止のため、アクサンを入れてません。
眠っていた才能
La tête en friche(ラテットオンフリッシュ)は、直訳「未開の頭」。en friche は「荒れ地のままの、放置した」という意味です。
jardin en fliche 荒れ放題の庭
laisser ses dons en fliche 天賦の才を埋もれさせる
すごく才能があるものの、埋もれたまま、それが発揮されていない頭、磨かれていない原石のダイヤモンド、使っていない頭、といった感じです。
ちょっと探してみましたが邦題が見つからなかったので、便宜上「眠っていた才能」としてみましたが、これだとちょっとニュアンスが違います。しかしいい訳が思いつきません。
映画の内容は、ほぼ文盲のジェラール・ドパルデュー演じるジャルマンという頭はあまりよくないが、気のいい中年男が、公園で95歳(!)の元研究者マルグリットと出会い、カミュの小説を通じて友情を結ぶ、というものです。コメディタッチのほのぼのドラマです。
では、予告編をごらんください。2010年の映画です。
La tête en friche 予告編
今回は35秒あたりまでチェックします。
Salut, Germain !
Salut, Paulo !
Salut, Germain !
Ah, Germain ! Viens ! C’est mon anniversaire.
Un spaghetti pomodoro !
Et puis je disais à Jojo qu’il avait du pot d’être cuisinier hein, à sa place, Zekouc’.
Germain…
Oui…
Je m’appelle Joël Pelletier. ‘The cook’, c’est parce que j’étais en Angleterre.
Ah!
Alors, c’est un surnom
C’est comme si on disait de toi: ‘Zecon’. Tu vois ?
Germain, il est pas plus con que vous. Et en plus, c’est le plus gentil.
おっす、ジェルマン
こんちは、ポロ
おっす、ジェルマン
あ、ジャルマン、ねえ、きょう俺の誕生日なんだ。
スパゲッティポモドロ、あがったよ。
ジョジョにこう言ったんだ、ズコックが料理してくれるなんてラッキーだって。
ジェルマン
はい
僕の名前はジョエル・ペルティエで、「ザ・コック」と呼ばれるのは、イギリスにいたからなんだ。
ああ、
つまり、あだ名なんだよ。
おまえのことを、「ザ・おばか(Zecon)」と呼ぶのと同じだよ。わかる?
ジェルマンはおたくみたいにばかじゃないよ。それに、ずっと優しいし。
Je m’appelle Margueritte, avec deux t.
Et vous venez souvent ici?
Presque tous les jours que le bon Dieu fait.
私はマルグリット。2つtがつくの。
よくここに来るんですか?
ほとんど毎日ね。
Aimez-vous lire ?
C’est compliqué la lecture, tu sais. À toi, je peux le dire parce que tu ne te fous pas de ma gueule.
あなた、読者はお好き?
読むのはむずかしいな。あんたにはそう言える。俺のことを馬鹿にしないから。
☆スクリプトはこちらを参照しました⇒Bande-annonce: La tête en friche
★以前紹介したお年寄りが出てくる映画
単語メモ
avoir du pot = avoir de la chance ついている
chaque jour du bon Dieu = chaque jour que (le bon) Dieu fait (人生の)日々、毎日毎日
se foutre de qn/qc ~を馬鹿にする
ma gueule 僕、おれ(=moi)
pomodoro はイタリア語でトマトのことです。
マルグリットという名前は、通常、Marguerite とつづり、tは1つだけです。
今回のお話
ジェルマンは50歳ぐらい。小さいときから、物覚えが悪く、学校や家庭で、バカにされて育ちました。しかも母親がいわゆる毒親。今はレストランその他で便利屋のような仕事をしています。彼は頭の回転は遅いけれど、とても心がやさしく、皆にバカにされつつも好かれています。
彼が公園で出会ったマルグリットは、若いときはWHOに勤めていた研究者。大変なインテリです。今は老人ホームに一人暮らし。毎日公園にやってきて読書をしています。ジェルマンもよく公園に来ていて、ハトに名前をつけているほどです。
こんな2人があるとき、隣同士に座り、なんとなく会話を始めました。
実はジェルマンはとても豊かなイマジネーションの持ち主ですが、誰も(本人さえも)耕していなかったところを、マルグリットがカミュの小説を通して耕した、という感じなので、「眠っていた才能」だとやはりちょっとニュアンス違いますね。ちなみに英語の題名は、My Afternoons with Margueritte です。
この映画は、Marie-Sabine Roger という作家が書いた同名の小説が原作です。
監督はJean Becker(ジャン・ベッケル)。この人は、「殺意の夏 L’Été meurtrier 」とか「クリクリのいた夏 Les enfants du Marais 」とか「画家と庭師とカンパーニュ Dialogue avec mon jardinier」といった作品があります。
お父さんは、名匠、ジャック・ベッケルです。
後編はこちら
マルグリット役の Gisèle Casadesus(ジゼル・カザドゥズュ という読み方でいいのか?)という女優さんですが、役と同じ年齢でこのとき95歳。なんてお元気な。しかも今もまだ存命で、102歳とのこと。1934年から女優業をされています。すごいです。
この映画、日本では公開されてないですかね。以前、ラジオ講座のテキストか、「ふらんす」という雑誌で、この映画の写真を見た記憶があるのですが。まあ地味な映画なので公開されないのもわかる気がします。
それにしても、95歳の女性がヒロインの映画を作るのはフランスぐらいかもしれませんね。しかも、この95歳が公園でカミュを朗読するのですから。それでは、この続きをお楽しみに。
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