今月はジョルジュ・ムスタキのLes eaux de mars 「3月の水」を訳しています。とても美しいボサノバです。
アトランティック・カーンの「3月の水」
3回目のきょうは アトランティック・カーン(Atlantique Khanh)のバージョンをご紹介します。
この方は80年代後半から90年代始めに活躍したフランスの歌手です。アトランティックって聞くとレコードレーベルを思い浮かべる人が多いかもしれないですね。苗字のスペルが本名とちょっと違いますが、アトランティックは本名のようです。
アトランティックのお母さんがエマニュエル・カーンです。エマニュエル・カーンは70年代、80年代に活躍したデザイナーです。
はじめはモデルをやっていて、それからキャシャレルのスタイリスト、そしてプレタポルテのデザイナーに転身、自身のブランドを設立。この方のブランドの服がジュンとかぺぺに置いてあったような気がしますが、昔のことすぎて忘れました。
さて、アトランティックのバージョンはムスタキのオリジナル(1974年)よりもう少しビートを聞かせていて、なかなかよい感じです。
1994年の「Atlantique」というアルバムに入っています。
Les Eaux De Mars. Atlantique Khanh
3分37秒 静止画です。
その1⇒歌と訳詞:3月の水~ジョルジュ・ムスタキ その1 全歌詞はこちらでごらんください。
「3月の水」6つ目のパッセージから8つめまでの和訳
アトランティックの歌だと1分20秒ぐらいから
魚の出てくるところです。
一番最初だけ、歌詞を引用します。
3月の雪解け水ほか、この季節のものを並べている歌詞です。
Un poisson, un geste, c’est comme du vif argent
C’est tout ce qu’on attend, c’est tout ce qui nous reste
C’est du bois, c’est un jour le bout du quai
Un alcool trafiqué, le chemin le plus court
魚、身ぶり、それは現ナマのよう。
それは人が待つものすべて、それは私たちがとどまっているものすべて
それは森、それは埠頭の端っこでの一日
それは密売酒、一番近い道
それはミミズクの叫び、眠り込んだからだ
走る車、それは泥、それはぬかるみ
一歩、橋、くわっくわっと鳴くヒキガエル
それは通り過ぎていく平底船、それは美しい地平線
それは雨の季節、それは氷のとける時期
それは3月の水、生命の約束
石、棒きれ、それはジョセフでそれはジャック
襲いかかってくる蛇、かかとの傷
一歩、石ころ、続く道
残った根っこ、それは少しだけさみしい
「3月の水」その4はこちら⇒歌と訳詞:3月の水~ジョルジュ・ムスタキ その4 ステイシー・ケント
単語メモ
vif むき出しの
vif/vive 生き生きとした、活発ななまなましい、というニュアンスなので vif argent は現ナマと訳しました。
trafiquer 不正取引する
hibou ミミズク 複数形はhiboux
boue 泥、ぬかるみ
avoir de la boue sur ses chaussures 靴に泥がついている
croasser (カラスが)かあかあ鳴く
crapaud ヒキガエル
chaland 平底船
fonte 溶けること、溶解
fonte des neiges 雪解け(の時期)
entaille 切り込み、溝
talon かかと;(靴の)ヒール
ヒキガエルの鳴き声とは?
un crapaud qui croasseの箇所で「ヒキガエルってどういう声で鳴くのだろう」と考えこんでしまいました。
「カエルの合唱」という歌では♪けろけろけろくわっくわっくわっ♪と歌われるので「くわっくわっ」にしてみましたが、一応YouTubeで鳴き声を確認しました。
ヒキガエル鳴き声 45秒
なんだか、鶏の声みたいに聞こえますね。あるいは子犬みたいにも思えます。日本とフランスのヒキガエルが同じように鳴くとも限りませんが、まあうるさいことはうるさいですね。
それから、ジョゼフとジャックって誰よ?と思うわけですが、聖人の名前かな・・と思いつくぐらいです。
Jacquesは直後のattaqueと韻をふませるためにだけ登場していることもありえます。
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