フランスの朝食は、コーヒーにクロワッサン、あるいはバゲット(フランスパン)、こんなイメージを持っている人が多いと思います。
実際のところ、フランス人は朝ごはんに何を食べているのでしょうか?
ある家庭の朝食の様子をリポートしたニュースクリップとスクリプトの和訳を紹介します。
フランスの朝ごはん
Que Mangent Les Français Au Petit Déjeuner ?(フランス人は朝食に何を食べているか?)
3分30秒。
フランス語の学習サイト、Iliniには、フランス語の字幕を表示させることのできるプレイヤーがあります⇒Ilini | What do the French eat for breakfast?
そちらの動画を埋め込んでみましたが、うまく字幕が出ないので、YouTubeの動画にしました。
以下の和訳やIliniのスクリプトを参考に訳したものです。
スクリプトの和訳
紅茶、それともコーヒー?
バターやジャムを塗ったパン、それともシリアル?
家庭では朝ごはんに何を食べているのでしょうか?
詳しく知るために、ある家庭の早朝の様子を追ってみました。
マエル・ケルゲヌのリポートです。
朝8時、パリ地域圏のリボテ家です。一番早く起きるのはパパのフィリップです。
-これが私の1日の始まりです。実際そうなんです。朝ご飯を食べるまで目が覚めませんから。
この時間、フィリップは、1人で朝食をとります。いつも食べるのは、濃く淹れた紅茶に少しミルクを入れたもの、ジャムかはちみつを塗ったパンです。
そうです。フランスでおなじみのバゲットは、欠かすことができません。
フランスでは大人の70%以上が、1日の最初の食事にバゲットを食べます。
そろそろ、マキサン、ティモテ、オルランの起きる時間です。寝起きはちょっとぼーっとしています。
-ほら、ちゃんと目が覚めた? マキソンス、オルラン?
ですが、毎朝、おなかがすいて、目が覚めます。もし、皆が同じメニューだと思っていたら、驚くでしょう。
というのも、この家では、それぞれが違うものを食べるのです。
たとえば10歳のマキソンスのように。
-マキソンス、朝ご飯に何を食べるの?
-温めたミルクにシリアルを入れたやつ。
ああ、朝ご飯にシリアル! シリアルは60年代にフランスに上陸しましたが、いまや、1年に12万8千トン消費されています。一家で6.5キロです。
食品の消費を専門とする経済学者、パスカル・エベルが、シリアルの人気の理由を語ってくれました。
-マキソンスは、ミルクと一緒にシリアルを食べていますが、これは、子どもたちの間でよくあることです。
子どもたちの朝食メニューの4分の1ほどをシリアルが占めています。
シリアルとミルクを食べるのは、朝食として完成しています。便利でもありますね。だから子どもたちの間に広がっています。
ただし、シリアルには砂糖がたくさん含まれているので気をつけなければなりません。
マキソンスの弟、ティモテは、パンに、よくあるスプレッドとつけて食べています。
フランスでは毎年、75000トン、パン用のスプレッドが消費されています。
-ティモテは、他の子供たちと同じようにスプレッドをパンにつけて食べていますね。ですが、朝食でスプレッドを使う割合は減ってきています。
パーム油が問題になっていて、消費が減ってきているのです。
食事の点から見るとむしろいいことです。ジャムにしたほうがいいですね。
リバト家の飲み物としては、伝統的なオレンジジュースが毎朝登場します。朝ご飯によく飲むものですが、こちらも消費が減ってきています。
-2010年から2013年の間に、オレンジの価格がずいぶんあがりました。その結果、ジュースの値段もあがり、不況もあってフランスの朝食での消費がいくぶん減りました。
なるほど、オレンジジュースの人気は以前ほど高くありません。
さてデルフィーヌは、何を飲むのでしょうか?
-いつも、イギリス風のミルクティーを飲みます。
ご主人の真似でしょうか?
実は、紅茶は特に流行しています。
-デルフィーヌやフィリップのように紅茶を飲む人が本当に増えています。ここ10年の間に、ずいぶん消費が増えました。というのも、紅茶には抗酸化物質が含まれているからです。
それに、不況なので、ほかの飲料より安い紅茶に人気が集まっています。温かい飲み物は、コーヒーも含め、消費が増えています。
コーヒーはとても人気があり、大人の58%が、朝、コーヒーを飲むと言っています。
ですが、子どもたちには、飲むヨーグルトのほうが人気で、食卓にのぼる率がどんどん増加しています。
単語メモ
tartine タルティーヌ、パンにジャムやバターを塗ったもの。この家のお父さんは、はちみつを塗ったものも食べると言っていました。
伝統的には、フィリップのようにバゲットを切ったものですが、最近は、食パン(買ったときからスライスされているもの)にジャムやらを塗る人も多いです。
デルフィーヌ(奥さん)やティモテは、食パンに何か塗って食べていますね。
日本でタルティーヌというと、何やらおしゃれなオープンサンドイッチになりますが(こちらで紹介⇒かわいいフランス語、教えます~その5 パンとお菓子)、フランス人にとっては、単にパン切れにジャムなどを塗った庶民的な食べ物です。
おにぎりと同じ位置づけ、と言えるかもしれません。
プチ・ニコラに出てくるアルセスト(ニコラの親友で、いつも何か食べているふっくらとした少年)も、よくタルティーヌを食べています。
プチ・ニコラとは?⇒プチ・ニコラ(映画)予告編のフランス語(前編)
ménage 夫婦、世帯、世帯
potron-minet 夜明け
indétrônable 取って代わることができない、欠かすことができない
se diffuser がる
jeter son dévolu sur ~ ~を特に選ぶ
pâte à tartiner スプレッド、パンに塗るもの
たとえばヌテラ⇒ヌテラのCMで基本動詞の聞き取り練習
suites 結果、帰結
miser sur ~を当てにする
effacé 消えた
cote 評価
avoir la cote auprès de qn ~に高く買われている
antioxydant アンチオキシダント、抗酸化物質
prépondérant 卓越した、支配的な
フランスの朝食の特徴
ニュースに出てきた家族はわりと一般的な朝食を食べていたと思います。
個人差もあるでしょうが、フランスの朝食の特徴は
・軽い、そんなに食べない(昼食をしっかり食べる)
・甘い(ジャムのように、甘いものをパンにつけているし、シリアルも甘い)。
・辛いものは出ない(英語圏の人のように、朝から卵やベーコンを食べたりはしません)。
・よって、手のこんだ料理をしない(パンにジャムやらを塗って、むしゃむしゃ食べるだけ)。
この一家は、紅茶のお湯は電気ポットで作っていたし(まあ、私も電気ポットで作ったお湯でお茶を入れてますが)、息子は、電子レンジでミルクを温めていました。まったく火を使っていませんね。
女の子は、パンケーキみたいなものを食べていましたが、これも一から作ったのでなく、市販品のパンケーキをレンジであたため、市販品のシロップをかけているのだと思います。
・この一家は食べていなかったが、ヨーグルトを食べる人も多い
・クロワッサンは日本でフランスのパンとして有名な、パン・オ・ショコラは特別なときだけ。
食べたとしても、前日か数日前にパン屋で買ったもの(パンにこだわる人は、朝から、ブーランジェリーに行って、新鮮なものを買ってくるでしょうが、朝、余裕がないとこんなことはできません)。
日本の雑誌では、「パリジェンヌの朝は、挽きたてのコーヒーに、焼き立てのバゲットやクロワッサンで始まる」などと、まるで昔のネスカフェのCMみたいなことが書かれていますが(最近の雑誌は知りませんが)、典型的とは言えないと思います。
パン・オ・ショコラはどちらかというと子供が好むパンです。
・コーヒーはしばしばインスタント
・イギリス風にミルクティーを飲むときも、おわんのようなカフェボールで飲む(少なくとも自宅では)
・子供向けのシリアルはどれも甘い(砂糖がしっかりコーティングされている)。
北米では、大人もよくシリアルを食べるため、最近はヘルシーなもの(全粒粉のシリアルとか)を含め、ひじょうに種類が豊富です。しかし、フランスでは、シリアルは子供むけにマーケティングされているように思います。
・朝食を食べない人(飲み物だけ)も多いらしい
なぜ、朝食を食べない人が多いらしい、と思ったかというと、こちらのニュースでは、小学生の5人に1人は朝ご飯を食べない、と言っているからです。
Petit-déjeuner : la bonne recette ?(朝ごはん、よいメニューとは?)
1分50秒
このクリップに出てきた家族の子供も、最初の家族と似たようなものを食べていましたね。
もっとちゃんと朝食を食べましょう、と指導している専門家の言う、理想の朝食は
- céréales (シリアル)パンでもOK.
- produit laitier (乳製品)牛乳やヨーグルト
- fruit (フルーツ)フルーツをベースにした食品でもOK.たとえば、オレンジジュースやジャムなど。
以上の3つです。だから、最初のクリップで話していたパスカルさんは、「シリアルにミルクをかけて食べるのは、それだけで朝食として完成している(est déjà assez complet)と言っていたのですね。
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フランス人の朝食についてお伝えしました。
最初のクリップに出てきたお父さん、朝8時って遅くないですか?
きっと職場が近いんでしょうね。
フランス人は夜が遅いと思うので(夕食を食べるのに時間をかける)、朝も遅くなるのでしょう。
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