フランスのお菓子シリーズ。今回は夏のお菓子のイメージがあるサン・トロペの名物、タルト・トロペジエンヌを紹介します。タルト・トロペジエンヌ、言いにくいです。タイプしても一回でカタカナに変換されません。
Saint-Tropez(サントロペ)のお菓子なのでtropézienneという名前です。tropézienneとう単語には、『サン・トロペの女性』という意味もあります。
ニースの『サラド・ニソワーズ(Salade Niçois)』や名古屋の『なごやん』と同じ要領のネーミングです。
タルト・トロペジエンヌ(Tarte Tropézienne)とは
円盤状に焼いたブリオッシュをスライスして中にカスタードクリームをはさんだもの。
クリームはカスタードのほか、バタークリームや、バタークリームに生クリームを混ぜたディプロマットクリームなどバリエーションがあります。キルシュ(kirsch さくらんぼのリキュール)で風味付けすることが多いです。
粒の大きな砂糖がたっぷりトッピングされています。
サン・トロペはどこ?
サン・トロペはフランス南部、バール県にある地中海に面する港街です。マルセイユの東、コートダジュールにある海辺の保養地。今はセレブやお金持ちでにぎあうおしゃれな街ですが、昔は海があるだけの知る人ぞ知る場所でした。
1960年代に女優のブリジット・バルドーがここを気に入って別荘を買ったことから、にわかに注目を集める街になりました。サン・トロペを発見したのはバルドーだと言われています。
関連⇒歌と訳詞:ラ・マドラグ~ブリジット・バルドー ラ・マドラグはバルドーの別荘の名前です。
バルドーは«Et Dieu… créa la femme»『素直な悪女』(直訳は『そして神は女を作った』)という1956年の映画の撮影で、この地に滞在しています。
映画のロケ中、スタッフ全員でタルト・トロペジエンヌを毎日取り寄せて食べていたとか。
こちらは『素直な悪女』の抜粋です。1分19秒。バルドーが踊っているシーンです。
バルドーはこの映画の撮影以前にもサン・トロペが舞台の映画に出演しており、この街の海辺で撮影した水着姿の写真もたくさんあります。
サン・トロペが観光地として人気が出たので、1940年代からあったというタルト・トロペジエンヌも60年代以降、よく知られるようになりました。
関連⇒ジェイソン・バトン(F1レーサー)と道端ジェシカがサントロペの別荘で盗難に。昏酔強盗の疑い 道端ジェシカさんもこのお菓子を食べているかも?
タルト・トロペジエンヌの作り方
このお菓子を作るのは難しくはありませんが、パン(ブリオッシュ)と間にはさむクリームを用意しなければならないので手間がかかります。
このレシピのクリームはオレンジ風味のディプロマットクリーム。ディプロマットクリームとはカスタードクリームにホイップクリーム(生クリームを泡立てたもの)を混ぜたものです。
ブリオッシュはイーストでふくらませるので、発酵させてる間に、クリームを作ればOKです。動画は6分25秒。
材料
ブリオッシュの材料
■ 生地 Pâte à brioche :
2,5 cl de lait ミルク 2.5センチリットル* およそ25ml
7g de levure de boulanger instantanée パンをふくらますドライイースト7グラム
2 œufs 卵2個
1 c à c de fleur d’oranger オレンジウォーター小さじ2
190g de farine 小麦粉190グラム
25g de sucre 砂糖25グラム
sel 塩ひとつまみ
■ 仕上げに使うもの
1 œuf pour la dorure 焼きあがったブリオッシュにぬる卵1個
Sucre glace sucre glace はアイシングシュガーですが、ここでは上に散らす大粒の砂糖
カスタードクリーム crème pâtissière の材料
1L de lait 牛乳1リットル
a gousse de vanille バニラのさや
100g de sucre semoule 砂糖100グラム semoule はセモリナのことでちょっと粒子の細かい砂糖です。グラニュー糖でも三温糖でもいいです。
8 jaunes d’œuf 卵の黄身8個
110g de maiïzena コーンスターチ100グラム
ディプロマットクリーム Crème diplomate à la fleur d’oranger の材料
1 c à c de fleur d’oranger オレンジウォーター小さじ1
375g de crème pâtissière カスタードクリーム375グラム
3 feuilles de gélatine 板ゼラチン3枚
30 cl de crème entière liquide 生クリーム30cc
1 gousse de vanille バニラビーン ひとさや
Le zeste d’une orange オレンジの皮を削ったもの
☆補足☆
clはセンチリットルで欧州の飲料の単位によく使われます。 1cl=1/100リットル=0.01リットル=だいたい10ml
c à c = cuillère à café 小さじ
大さじは c à s = cuillère à soupe
pétrir パンをこねる
オレンジウォーターはオレンジの花からとった水。なくてもいいです。
作り方
ブリオッシュの生地を作る
1.材料にあるミルク(少しあたためる)から塩を順番に入れて、生地ができるまでスタンドミキサー(フードプロセッサー)で5分~6分低速で混ぜる
2.バター(室温に戻しポマード状になったもの)を入れて5分混ぜる。生地のできあがり。
3.ラップをかけて発酵。倍の容量になるぐらいまで、1時間~1時間半ほど放置する。
・・・この間に中にはさむクリームを用意します・・・
4.発酵が終わる15分ぐらい前に、オーブンを170度に予熱開始。
5.発酵したブリオッシュの生地を型に入れる。シリコンの型を使っています。大きさは直径20センチぐらいでしょうか?
6.上に卵の黄身をまんべんなく塗り、あられ糖を散らす。
7.オーブンに入れて20~25分焼く。
8.焼けたら網の上に置いてさます(焼きたてだときれいに切れません)。
オレンジ風味のディプロマットクリームを作る
パンを発酵させているあいだにクリームを用意します。まずカスタードクリームを作ります。
カスタードクリームは1番先に作って冷蔵庫に入れておいてもいいです。
■カスタードクリームの作り方
カスタードクリームの作り方の動画も紹介します。
ただ、コメント欄を見ると「失敗した」という声が多いので、ふだんの自分の作り方で作ったほうがいいかもしれません。
オーソドックスな作り方⇒辻調理師専門学校: 基本技法・製菓・カスタードクリーム
クックパッドにもたくさんあります⇒みんなの推薦 カスタードクリームの作り方 レシピ 118品 [クックパッド] 簡単おいしいみんなのレシピが212万品
このクリームはミルク1リットル、卵8個も使っているので、失敗するとダメージが大きいです。
1.鍋で牛乳とバニラのさや、砂糖を半分入れ火にかける。
2.ボールに黄身に残りの砂糖を入れてかき混ぜる
3.コーンスターチを入れて混ぜる
4.沸騰したミルクを3に少しずつ入れて混ぜる。クリームっぽくなったら、鍋に戻して中火にかけながら好みの硬さになるまで混ぜる
■オレンジ風味のディプロマットクリームの作り方
1.前もってホイップクリームを作り冷蔵庫に入れておく
(生クリームをしっかり泡立てるだけです)。
2.ゼラチンを水でふやかす
3.カスタードクリームにオレンジゼスト(オレンジの皮)を入れて混ぜる、
4.オレンジウォーターを入れて混ぜる
5.バニラをしごいて入れて混ぜる
6.ふやけたゼラチンを入れてしっかり混ぜる
7.ホイップクリームを半分入れて泡だて器でしっかり混ぜる
ここまで泡だて器でぐるぐる混ぜますが、ここでヘラに持ち替えます。
8.クリームの残りの半分を入れてヘラでさっくり混ぜてできあがり。できたら冷蔵庫に入れて落ち着かせます。
9.ブリオッシュに搾り出す場合は絞り出し袋に入れます。
アセンブル(成形)
さめたブリオッシュの真ん中を切って、下のブリオッシュの表面ににオレンジ風味のクリームをぬります。動画では絞りだしています。これはけっこう面倒だと思います。子どもにやらせると喜んでやるかもしれません。
クリームを全面にのせたら、片方のブリオッシュをはさんでできあがり。
1時間ぐらいしたら食べます。
タルト・トロペジエンヌ 関連動画
こちらはタルト・トロペジエンヌについて伝える3分ほどのニュース・クリップです。
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夏の暑いときにパンを焼くのは大変ですが、暇な時があったら作ってみるのも楽しいと思います。
買ってきたほうが簡単ですが。レシピを書き起こすのも想像以上にたいへんでした。それでは次回のお菓子の記事をお楽しみに。
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