トマ・デュトロンの«Comme un manouche sans guitare» 『ギターのないマヌーシュのように』をご紹介します。
manouche(マヌーシュ)は後述しますがジプシーのこと。マヌーシュの伝統音楽がもとになってできたジャズをマヌーシュジャズと呼び、これはギターで演奏するジャズです。
ですから、ギターがなければマヌーシュ‥ジャズは成立しません。
それでは、まずは聞いてください。
Comme un manouche sans guitare ギターのないマヌーシュのように
ギターのないマヌーシュのように、包丁のない板前のように、君がいないと僕は途方にくれてしまう、という歌です。
「~のない~のように」という言い方がたくさんでてきます。
それでは、訳詞に挑戦!
Comme un manouche sans guitare
Comme un château sans la Loire
Quand t’es pas là, je suis comme ça…
Comme un rasta sans pétard
Comme un corps sur son pétard
Une Normande, sans armoire
ギターのないマヌーシュのように
王様のいないお城のように
きみがここにいないと、僕はこんなふう
大麻のないラスタファリアンのように
ピストルのないコルシカ人のように
戸棚を持たない、ノルマンジー女のように
きみがここにいないと
僕はネット三昧
ミーティックにポルノグラフィック
バカみたいなんだ
☆僕は声をうしなう
もう神経がない
王座から落ちてしまう
きみがここにいないと、存在しないんだ☆
虫眼鏡を持たないホームズのように
かけ声のないタンタンのように
シャンパングラスを持たない、社交界の紳士のように
オリーブのないピザのように
洗剤のない広告のページのように
きみがここにいないと、自分自身でなくなる
根っこのない木のように
ラシーヌのない劇場のように
アリーヌのいないこの浜辺で
きみがここにいないと
僕はネット三昧
ロレックス、バイアグラ、エトセトラ
バカみたいなんだ
僕18個時計を持っている
はいあがってくる虫
正気をうしなってしまう
きみがここにいないと
僕は存在しない
円盤を持たない火星人のように
ゴシップを言わない美容師のように
クラストのないパイのように
★あとは前にでてきたのの繰り返し★
歌詞はこちらを参照しました⇒Paroles Comme Un Manouche Sans Guitare par Thomas Dutronc – Paroles.net (clip, musique, traduction)
トマ・デュトロンは先日ご紹介した、フランソワーズ・アルディとジャック・デュトロンの息子です。
⇒歌と訳詞:霧のコルヴィザール~フランソワーズ・アルディ
単語メモ
manouche おもにフランスの北やベルギーにいるジプシー。このジプシーの伝統的な音楽とスイング・ジャズを融合したジャズもマヌーシュと呼ばれます。
詳しくは⇒レ・ポム・ドゥ・マ・ドゥーシュ:「まいにちフランス語」初級編のテーマソング
rasta = rastafarian ラスタファリアン ラスタファリ運動の実践者 アフリカへの復帰を唱え、レゲエ音楽を奉ずるジャマイカの黒人。
ラスタファリアンにとって大麻は呪術に使う、神聖な薬草です。
pétard 爆竹、大麻、ピストルなどいろいろな意味あり。
corse コルシカ人 コルシカ島は地中海西部にあるフランス領の島。ナポレオンの出生地として有名ですね。コルシカにはユニオン・コルスというイタリア系のマフィアの組織があります。
「フレンチ・コネクション」という映画で描かれた、マルセイユからニューヨークへヘロインを輸出するルートは実在し、別名「コルシカン・コネクション」と呼ばれています。
aphone 声が出ない
neurones 神経
trône 王座
loupe 虫眼鏡
lessive 洗剤
se rendre compte ~を納得する、~がわかる
bébête (幼児語)小動物、今週、虫
soucoupe 円盤
scoop スクープ(とくだね)
croûté クラスト(パンやパイのはしっこの堅いところ)
Comme Un Manouche Sans Guitareは同名のアルバムに収められています。
こちら↓↓
補足
point com = .com (ドットコム)
Je suis sur les point com 私はドットコムの上にいる⇒ネット三昧である
Meetic pornographique ミーティック ポルノグラフィック 出会い系サイト
Racine Jean Racine (1639-99) フランスの劇作家 悲劇が有名な古典主義演劇の巨匠
Comme un arbre sans racine
Comme le théâtre sans Racine
直前のracine と韻を踏んでいます。
cette plage sans ”Aline”
アリーヌのいない浜辺
これはたぶん、クリストフという歌手の1965年のヒット曲«Aline»に出てくるアリーヌと浜辺のことだと思います。
去ってしまった恋人の似顔絵を浜辺に書いたら、波が消してしまった。ああ、アリーヌ、戻って来て、という歌です。
お聞きになりたい方はこちらでどうぞ⇒http://youtu.be/bj8-_QKN31o
タンタン ベルギーのエルジェの描いたアニメ
詳しくはこちらに書いています。
⇒タンタンについて淡々と語る アメブロです。
名詞は動詞のように活用しません。だから、簡単かと思いきや、背景知識が必要です。やはり訳詞はむずかしいです。
それでは、次回の歌の回をお楽しみに。
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