バレンタインデーにちなんで、「愛」や「恋」についての名言をご紹介しています。きょうも、フランスのロマン派の詩人、劇作家のアルフレッド・ド・ミュッセの言葉です。
前回の「女は自分の影のようなものだ」が長い言葉だったので、今回は短くて、フランス語もやさしいものを選びました。
L’amour vit d’inanition et meurt de nourriture.
- Alfred Louis Charles de Musset(1810-1857) –
恋は空腹で生き、満腹になって死ぬ。
- アルフレッド・ド・ミュッセ -
恋は空腹で生き、満腹になって死ぬ
これはメタファー(比喩)です。恋はお昼になったから、おなかがすいたり、日替わり定食を食べたら、おなかいっぱいになったりしませんから。
しかし恋というのはある種の生き物です。ある日突然生まれ、いろいろとあって、最後には死ぬのです(たぶん)。
あとで説明しますが、d’inanition と de nourriture の前置詞 de はどんな用法でしょうか?
de は本当にさまざまな用法があり、たった二文字なのに、たいそうやっかいな単語です。
私はこの de は原因を表す de だと解釈しました。「・・・ゆえに」という意味です。
恋はおなかがすいているから生きて、おなかがいっぱいになると死ぬ。ミュッセによれば「飢え死に」ではなく、「満腹死に」をするのです。
「おなかがすいている恋」とは、満たされていない恋ということですね。つまり、恋をしている相手にはまだ打ち明けていない、何とも思われていない、向こうからは無視されている、愛が返ってこない、あるいは何の見返りもない、といった状態です。
自分が勝手に恋をしている状態だと、その恋はどんどん燃え上がるのです。
「満腹の恋」は、この反対で、相手に自分の思いが通じて、向こうからも何かそれらしいものが返ってきている状態。人は自分たちのことをカップルと呼び、一緒にデートしたり、旅行したり、同棲したり、結婚までしているかもしれません。
でもそんなふうにいったん恋が成就すると、それは死んでしまうのです。
ミュッセが何者であるのかということについてはこちらの記事に書いていますので、ごらんください⇒名言その8~人生は人を愛してこそ
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
l’amour 恋、恋というもの 前についている l’ は男性名詞につく定冠詞 le のエリジオンです。
vit < vivre 生きる 3人称単数現在形の活用
d’ = de 原因、理由を表す前置詞 de ~の、~による、~のため
des larmes de joie うれし涙
inanition 飢餓(性)衰弱、欠食、失調
et そして
meurt < vivre 死ぬ 3人称単数現在形の活用
nourriture 食物、栄養物
直訳
恋は飢餓状態のせいで生き、栄養がよくなると死ぬ。
恋を殺さないためには
さて、それでは恋を生きながらえさせるためには、どうしたらいいのでしょうか?満腹にならないように、腹八分に食べておくのがいいのかもしれません。
相手の愛に応えるけれども、100%にはしておかない。少しは秘密など持ってミステリアスな部分を残しておく、とか。
相手の思っている自分以外の意外な面を見せる、あるいは本当に、ちょっと変身してみる、とか。
意外性といえば、ラジオ講座~L42 フランス人の結婚観 でシルヴィ先生は、「フランス人女性はサプライズを待っています、いつも刺激がないとだめなんですよね」とおっしゃっていました。
意外性の演出は大切かもしれません。
恋の現状を維持するためには、現状に甘んじていてはいけません。常にもっと上を目指して、何かをしていることで、ようやく今の状況を保つことができるのです。
けれど、ミュッセはそんな恋の駆け引きなんてどうでもいいのでしょう。彼は「恋はいつかは終わるもの」と思っていたのではないでしょうか?
この恋が終わったら、次の恋、これが終わったらまた別の恋。短い生涯のあいだに、何度か恋をしていたようですが、いつも真剣に、死ぬ気で恋をしていたのかもしれません。それも一種の才能ですね。
いかがでしたか?
ミュッセはジョルジュ・サンドとの恋が有名です。
名言その8~人生は人を愛してこそセの記事に、彼女との恋愛を描いた映画をご紹介していますので、熱気にあたりたい方はぜひごらんください。
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