夜明け

フレンチポップスの訳詞

明日、夜明けとともに(Demain, dès l’aube):レ・フランジーヌ(歌と訳詞)

フランスの女性デュオ、レ・フランジーヌ(Les Frangines)の Demain, dès l’aube という歌を紹介します。

frangine は、フランス語の口語で、姉、妹、女友達という意味です。

この歌は、ヴィクトル・ユゴー(フランスの文豪、1802-1885)の書いた、同じタイトルの詩(あとで紹介します)に、フランジーヌが曲をつけたものです。

(厳密にいうと、この詩にはタイトルがないので、最初の行の言葉が、タイトルとして使われています)。

フレーズの並び順が違っていたり、出てこない文句もありますが、歌詞はほとんど、ユゴーの詩と同じです。

明日、夜明けとともに

4分。

いい歌ですね。

それでは、訳詞に挑戦!

Demain, dès l’aube 歌詞

Demain, dès l’aube
À l’heure où blanchit la campagne
Je partirai, je partirai
Vois-tu, je sais que tu m’attends

J’irai par la forêt
J’irai par la montagne
Je ne puis demeurer loin de toi plus longtemps
Plus longtemps

Seul, inconnue, le dos courbé, les mains croisées je marcherai
Les yeux fixés sur mes pensées
Seul, inconnue, le dos courbé, les mains croisées je marcherai
Les yeux fixés sur mes pensées
Seul, inconnue, le dos courbé, les mains croisées je marcherai
Les yeux fixés sur mes pensées

Sans rien voir au dehors
Sans entendre aucun bruit
Et le jour pour moi sera comme la nuit

Je ne regarderai
Ni l’or du soir qui tombe
Ni les voiles au loin descendant vers Harfleur

☆Et quand j’arriverai
Je mettrai sur ta tombe
Un bouquet de houx vert et de bruyère en fleur
Et quand j’arriverai
Je mettrai sur ta tombe un bouquet de houx vert et de bruyère en fleur
Et de bruyère en fleur☆

☆~☆ refrain

明日、夜明けに(訳詞)

明日、夜が明けて
田園が白く染まる時
僕は出かける、僕は出かける
ほら、きみが待っているのを知っているから

森を越えて行く
山を越えて行く
これ以上、君から遠く離れてはいられない
こんなに長く
もうこれ以上

ひとりで、誰にも知られず、背中を丸めて、手を組みながら
僕は歩く
頭は自分の考えだけでいっぱい
ひとりで、誰にも知られず、背中を丸めて、手を組みながら
僕は歩く
頭は自分の考えだけでいっぱい
ひとりで、誰にも知られず、背中を丸めて、手を組みながら
僕は歩く
頭は自分の考えだけでいっぱい

ほかのものは何も見ず
どんな音も聞かず
僕にとって昼間は夜のようだろう

何も見ない
黄金の落日も
遠くアルフルール港にくだっていく帆船も

到着したら
きみの墓にたむける
みどりのヒイラギとヒースの花束を

到着したら
きみの墓にたむける
みどりのヒイラギとヒースの花束を

単語メモ

demeurer  ある状態にとどまる

courbé  体を曲げた

Harfleur  アルフルール ノルマンディーにあるコミューン、港

houx  ヒイラギ

bruyère  ヒース

ユゴーの詩、Demain, dès l’aube(1847)

1分10秒

はじめは、「離れているのはつらいから、明日、きみに会いにいくね♪」という、恋愛の詩なのかな、と思わせますが、最後にどんでん返しがあって、実は、この人が深く愛していた人は、すでに亡くなっていて、お墓参りに行くのだ、ということがわかります。

悲しい詩ですね。

1856年に出版された Les Contemplationsという詩集に入っています。

この詩集は6冊に分かれていて、156も詩が収録されています。

Demain, dès l’aube は、ユゴーの娘の、Léopoldine Hugo(レオポルディーヌ・ユゴー1824-1843)のお墓参りのことを詩にしたものだと言われています。

レオポルディーヌ・ユゴー

レオポルディーヌ・ユゴーの肖像画

レオポルディーヌは、19歳のときに恋愛結婚をして、その半年後に、ご主人と一緒に、亡くなりました。

セーヌ川でヨットにのっていたら、突然、強風が吹いてきて、ヨットが転覆し、溺死したのです。

ユゴーは5人、子供がいましたが、レオポルディーヌは、2番めの子で長女です。

このできごとは、ユゴーに大きな影響を与えました。

そりゃあ、そうですよね。私だって、娘が先に死んだら大ショックです。しかも19歳で、新婚で、溺死なんて。

ユゴーは、ほかにも娘の結婚のことや、娘を亡くした悲しみを詠った詩を書いていますが、Demain, dès l’aube は、そうした詩の中でも、もっとも有名です。

単語も構文もさほど難しくないから、大学の仏文科の1年生の中盤あたりで勉強しそうですね。

フランジーヌについて

フランジーヌは、Anne Coste と Jacinthe Madelinの二人組。背の低いほうがAnne。シンガーソングライターで、曲調は、フォーク・ポップスです。

2人は12歳のとき、学校で知り合ったそうです(Wiki情報)。

Jacintheは、フルートを習っていたけれど、アンはとくに音楽は勉強していません。

学生時代に、YouTubeの動画を見て、ギターを習得し、2014年に自分たちのYouTubeチャンネルをつくって、歌の動画をあげていたら、話題になり、2018年にレコード会社と契約してデビューしました。

今回紹介した、Demain, dès l’aubeは、まだデビュー前に作った歌で、動画の制作費用は、クラウドファンディングで集めたそうです。

いかにも、現代的なデビューの仕方ですね。

■これまで紹介したでデュエット曲もどうぞ

Les filles d’aujourd’hui(今どきの女の子たち):ジョイス・ジョナサン(歌と訳詞)

Dommage (ドマージュ):ビッグフロー・エ・オリー、歌と訳詞。

バルコニー:Le Balcon ミュージカル、ロミオとジュリエットより(歌詞と和訳)。

歌と訳詞:「あなたが旅立つというので」~フランソワーズ・アルディ 前半

ジェットラグ(Jet Lag)・シンプルプランのフランス語版の訳詞

******

私は、レ・フランジーヌみたいな、女性のフォークデュオがわりと好きです。

日本で言えば、シモンズが大好きでした。

シモンズは、1971年に、デビュー曲(恋人もいないのに)がヒットして、その後も活躍していたのに、活動4年ぐらいで活動を休止しました(そのあと一時的な復帰あり)。

活動休止の理由は、メンバー(玉井タエ、タエちゃん)の結婚。数年後、タエちゃんは、離婚して、このとき、正式に解散した(1978年)と世間では説明されていますが。納得いきませんねえ。

離婚したらふつうは復帰でしょう?

1970年代の後半は、もうシモンズのような音楽は受けない感じだったのでしょうか。私は、ずっと好きですけど。

そもそも、結婚したからといって、活動を休止することないですよね?

1970年代だから、仕方がないんですかね。あの松任谷由実さんも、結婚した直後は、専業主婦になって、曲を作っていく、とか言っていましたからね。

高音を担当していたユミちゃん(田中ユミ)は、その後もずっと1人で音楽活動を続けているから、きっとタエちゃん自身が芸能界に未練がなかったのでしょう。

フランジーヌには、末永く、活動してもらいたいと思っています。






水晶アナイスの好きなスタイル(1人の女の子、1つのスタイル)前のページ

ゴッホのヒマワリの絵が意味するもの。次のページヒマワリ

ピックアップ記事

  1. 『星の王子さま』~お役立ちリンク集
  2. 2023年版、フランス語学習用カレンダーの紹介:テーマは「食」

関連記事

  1. モンマルトル

    フレンチポップスの訳詞

    エリック・サティ~Je Te Veux(ジュ・トゥ・ヴ)、歌と訳詞

    フランスの作曲家でピアニストのサティの歌曲でたぶんもっとも有名なJe …

  2. ハートを描く指
  3. デイジー

    フレンチポップスの訳詞

    悲しみの庭~ジョルジュ・ムスタキ、歌と訳詞

    23日、ニースでジョルジュ・ムスタキが亡くなったというニュースが飛び込…

  4. 風車
  5. 楽譜
  6. オリーブ

    フレンチポップスの訳詞

    歌と訳詞:故郷の九月~ジルベール・ベコー その2

    ジルベール・ベコーの「故郷の9月」の歌詞を訳しています。ベコー…

コメント

  • コメント (2)

  • トラックバックは利用できません。

    • 神戸のコージ
    • 2021年 9月 23日 8:29pm

    penさん、はじめまして
    神戸のコージです。enchanté !
    兵庫県在住です。
    フランス語の勉強を昨年から始めた者です。
    Youtubeでフランス語の曲を探してたら、
    Les frangines をとても気に入って、
    気に入りすぎて、CDをフランスアマゾン
    から取り寄せました。一昨日到着。
    聴きながら歌詞カードをみてたら
    Victor Hugo …1856…と書いてあり
    ネットで探しておりましたら
    この訳詞のページに来ました。
    私以外に聴いてる日本の人がいるのだと
    感激しました。
    訳詞と解説のお陰でいろいろ理解が進みました。
    ちょっと悲しい内容でしたね。
    他のページも、ボチボチ見ていけたらと、
    思います。
    ありがとうございます。

      • pen(フランス語愛好家)
      • 2021年 9月 24日 4:50am

      神戸のコージさん

      はじめまして。
      ブログにお越しいただき、ありがとうございます。

      Les franginesのCDを購入されたのですね。

      記事にも書いたように、私、こういう音楽、けっこう好きなんです。

      他にも好きな人、いっぱいいるんじゃないでしょうか?
      日本ではそんなに知名度はないと思いますが。

      また、機会があったら、Les franginesの曲を紹介しますね。

      他のページも、一応、フランス語がテーマなので、
      ぼちぼち見ていただければ幸いです。

      こちらこそ、コメントありがとうございました。

      pen

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

更新情報をメールで配信中

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

お問い合わせはこちらから

お問い合わせはこちらからどうぞ

封筒
⇒お問い合わせフォームへ


お気軽に^^

☆和文仏訳、仏文和訳の無償サービスは行っておりませんので、ご了承願います。

アーカイブ

PAGE TOP