ご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
さじを投げてはいけない。あきらめちゃだめだ。
Il ne faut jamais jeter le manche après la cognée.
「さじを投げてはいけない」は私があてた日本語の表現で、フランス語のほうは「斧(おの)のあとに柄(え)を投げてはならない」となります。
「匙(さじ)を投げる」の「さじ」とは?
まず、日本語の「さじを投げる」からご説明しますね。
「さじっていったい何のさじ?」
と思ったことありませんか?
私は、昔は何とも思ってなかったのですが、子どもが生まれてからは、この表現を聞くと、離乳食を思い出していました。
親がどろっとした離乳食をスプーンですくって、赤ちゃん椅子に乗っている子どもの口に持っていっても、子どもはがんとして口を開けません。
なだめすかしても、何度やっても、口を開けません。
そのうち親は切れて、「さじを投げる」⇒「あきらめる」という図式です。
でもこのさじは薬を調合するさじのことだそうです。
漢方のお医者さんが、患者にどんな薬をあげていいのか、どんな治療をしていいのかわからず、さじを投げ出すのです。
つまり、「もうこれ以上、治療ができない、手をつくすことができない」とあきらめて「さじを投げる」のです。
そこから、「見切りをつける、あきらめる」、という意味になりました。
「斧(おの)のあとに柄(え)を投げる」
こちらはお医者さんではなく木こりの話です。
木こりが、木を切ろうと斧を振っていたら、斧の鉄の部分がそのへんの池か何かの水の中に落ちてしまいます。
鉄は重いから深いところに入ってしまったのでしょう。
木こりはそれを引き上げることをあきらめ、柄も水に捨ててしまった、という逸話から、「あきらめる」という意味になりました。
このことわざは、「柄を捨ててはいけない」と言っているのですから、「そんなに簡単にあきらめてはだめ!」というわけです。
確かに落ちた鉄を引き上げるのは大変でしょうが、別の斧を調達するとか、何とかして、「最後まで木こりの仕事をやり遂げよ」、ということです。
前回のシャネルの名言に通じるものがあります。
⇒名言その6~ココ・シャネル~成功する人はどんな人?
失敗や障害があっても、そんなに簡単にあきらめず、知恵をしぼって、工夫して、仕事が完了するまでやり続けることが大事なのです。
よくわかる!フランス語の文法解説
★単語の意味
Il ne faut jamais ~するべきでは決してない、~してはいけない
Il faut ~するべきである
を
ne … jamais 決して~ではない で打ち消しています。
jeter 投げる
le 男性名詞につく定冠詞
manche 道具の柄、取っ手
manche de couteau 包丁の柄
※manche は男性名詞だと、「取っ手」、女性名詞だと「袖」です。
参考⇒男性と女性がある名詞のリスト
après ~の後に
la 女性名詞につく定冠詞
cognée 斧
★直訳
「決して斧のあとに柄を投げてはいけない。」
★補足
jeter la manche après la cognée 部分を
「(最初のつまずきで)すぐにあきらめる、投げ出す、嫌気がさす」という意味でイディオムとして使うこともあります。
フランス語でさじを投げるは
jeter l’épongeです。
直訳は タオル(スポンジ)を投げる。
ボクシングから来た言葉です。
イラストはフリー素材364 オズの魔法使い ブリキの木こり♪からお借りしました。
英語のことわざでは
Never say die.
「死ぬ」なんて言うな⇒弱音を吐くな。
が近いですね。
とにかく、なんでもあきらめたら、そこが到達点。
どうしても行きたいところ、手に入れたいものがあるのなら、途中で休憩したり、迂回したとしても、最後まであきらめないことが大切なのです。
Pen さん この諺は知りまんでした。田辺貞之助編には出ています。私が知っていたのは「斧の柄 朽つ をののえ くつ」で「気付かないうちに長い年月がたってしまうことのたとえ」でした。
源氏物語 松風に
「千年(ちとせ)も見聞かまほしき御ありさまなれば をののえもくちぬべけれど」 「人々はいつまでも見聞きしていたい(源氏の)ごようすなので、気付かないうちに長い時間もすごしてしまいそうだけれど」
この出典は
中国の晋の王賢が、山中で仙人の童子の囲碁をみているうちに、持っていた斧の柄が腐ってしまい、村に帰ると、すでに長い年月が過ぎ、知人がみないなくなったという故事からきています。 中国版「浦島太郎」です。
斧から受けるイメージも国によってまちまちだなあと感じました。
樋沼さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ほ~、長い年月がたつのを斧の柄がくさるほど、という言い方があるのですね。
確かに斧の柄は木だから、雨風にさらされると腐ってしまうとは思います。
でも、囲碁を見ているあいだに斧の柄がくさってしまうなんて、怖いですね。
気をつけなければなりません。