猫の顔

タイトルのフランス語

第12回『長靴をはいた猫』

『長靴をはいた猫』のフランス語のタイトルをご紹介します。この話は伝承童話ですが、フランスのペロー(Perraut)の童話集(Histoires ou contes du temps passé 1697)に収録されているものが有名です。

よく知られた話ですが、簡単にあらすじをご紹介しますね。

『長靴をはいた猫』あらすじ~penバージョン

昔、あるところに、粉屋さんがいました。粉をひいて粉を売るのが仕事。あまり金持ちではありません。というより、どちらかというと貧乏です。

商品の粉をのぞけば、粉ひきに使う風車、ロバ、猫が全財産。そんな粉屋さんですが、ある日3人の息子を残して亡くなってしまいます。3つしか財産がないので、それぞれが3人の息子に行きました。

末っ子は猫しかもらえなかったのでショックでした。「猫なんてもらって、ぼくはいったいこれからどうして生きていけばいいのか?猫を食べて、皮でベストを作ったら、それでもう何もなしだ。」

悲嘆にくれる三男。ところが、この猫、ただの猫ではありません。
だって、しゃべるんです。

「大丈夫です!すべて私におまかせ下さい。僕に袋とどこでも歩けるように長靴をくれたら、きっとご主人さまを幸せにしてあげます。」

「猫が?僕を?」三男は半信半疑でしたが、前からみょうにはすっこい猫でしたので、とりあえず袋と長靴をあげました。

猫は長靴をはいて、袋をかつぎ、そのへんの藪(やぶ)にウサギを取りにいきました。

tree line

結果的に猫は三男を幸せにします。猫は以下の4つのミッションを完遂しました。

1.贈りもの作戦
毎日野原や藪に動物をとりにいき、手にした獲物を近所の王様にカラバ公爵様よりの贈りものです、と言って献上しました。

「カラバ公爵」とは猫が、飼い主に勝手につけた名前です。今は貧乏な三男を、「お金持ちのカラバ公爵にする」、と猫は決意していました。

3ヶ月、王様に贈りものを献上したので、王様はすっかり「カラバ公爵」に恩義を感じていました。

2.狂言強盗
「王様が娘のお姫さまと川辺にお遊びに出る」、という情報をキャッチした猫は、三男に「川に入ってくれ」、と命じます。その日、特に泳ぐ気分でもなかった三男(カラバ公爵)ですが、言われたとおり水浴びをしていました。

猫は彼の衣服を隠し、王様の馬車が通るころを見計らって叫びます。「ああ、大変!助けて~~!カラバ公爵さまが川で溺れている!大変だ!かわいそうに、カラバ公爵さまが!」

これを聞いた王様、「え、いつも贈りものをくれる親切なカラバ公爵が?一体全体?」

猫「川で水浴びをしているあいだに、盗賊に襲われ、服を盗まれました。しくしく・・・」

「そうか、それでは、着るものを持って行ってあげなさい」王様はおつきの者に命じました。

三男は実はイケメンでがっしりした体格だったので、よい衣装を着たら、なんだか本当に王侯貴族のように見えました。

一緒にいたお姫さまはその姿にひとめぼれします。

3.脅し
王様の馬車に乗り込んだカラバ公爵。猫は馬車の進路を先回りして、草刈りをしているお百姓さんたちに、「王様に聞かれたら、この畑はカラバ公爵のものでございます、と言え。言わないと、首を引っこ抜くぞ」、と脅します。

数分後、馬車から、「これは誰のものだ?」と聞いた王様に農民たちは「カラバ公爵さまのものでございます。」と答えました。

猫は同じ手をつかって、あたり一帯がカラバ公爵のものだと王様に思いこませました。

4.おだて作戦
先回りしている猫は人喰い鬼の城に到着。実は、カラバ公爵のものと王様が思っているこのあたりの畑はみんな人喰い鬼の財産でした。

猫は人喰い鬼に「鬼さんは、どんなものにも化けることができるそうだけど、獅子みたいな大きな動物になれます?」とたずねます。

「なれるとも!」人喰い鬼はいきなり獅子になりました。

猫「すご~い、さすが。すごすぎます。では、小さな動物にもなれますか?たとえばハツカネズミとか。こっちは小さいから、無理だろうな、きっと。」

「なれるとも!」人喰い鬼は今度は小さなネズミになってそこらを走り回ります。

猫はネズミを取るのは得意。しっぽをつかまえてパクっと食べてしまいました。

そして、あとからやってきた王様、カラバ公爵、お姫さまに、ここがカラバ公爵の城である、と申し立てたのは言うまでもありません。

感心した王様は、娘をカラバ公爵に嫁入りさせることにしました。

~~~~~

こうして、その後はカラバ公爵と猫は貴族として何不自由のない暮しをおくりました。

ペローはこの話のあとに教訓を書いています。

「親から遺産をたくさんもらってそれを享受して生きるより、若者は、勤勉さと知恵をもって、自らの人生を開拓していくほうがいいのです。」

長靴をはいた猫はフランス語で

Le chat botté

le 男性名詞につく定冠詞
chat 猫
botté 長靴をはいた botter(靴が)~に合う

英語ではPuss in Bootsとして知られています。

◆関連動画
長靴をはいた猫はたくさんの映像作品になっていますが、きょうは2009年のフランスのアニメ映画 La Véritable Histoire du Chat Botté をご紹介します。
1分50秒

◆長靴をはいた猫、関連サイト
Le chat botté(ペローの原文)⇒Le Maître chat ou le Chat botté – Wikisource

原文の朗読⇒PERRAULT, Charles – Contes (Sélection) | Litterature audio.com

青空文庫⇒ペロー Perrault 楠山正雄訳 猫吉親方 またの名 長ぐつをはいた猫

これまでに紹介したペローの童話
『赤ずきんちゃん』

『眠れる森の美女』

『シンデレラ』

飼い主をカラバ公爵にプロデュースした猫はとても知恵があります。でも、三男坊が生まれつき美貌を持っていたところもポイントですね。

しかも彼は猫の馬鹿げた申し出にも素直に従いました。「素直さ」というのも時としてとても大切な徳となります。

それでは、次回の「タイトルでフランス語」をお楽しみに。






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コメント

    • アン
    • 2013年 11月 05日 12:51pm

    「長靴をはいた」というのを1語で片付けるところが、なんか外国語やなーと思います。
    in bootsと言われたら、中にすっぽり入ってるみたいに感じるのは、日本人的な発想?
    バンダイの飛び出す絵本の、この作品を、幼い頃にお客さんから頂戴して、ボロボロになるまで読んだので、絵まで憶えています・・・
    できれば、シンデレラとか欲しかったんですけどね。

      • フランス語愛好家
      • 2013年 11月 05日 9:29pm

      アンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
      そうですね。過去分詞って便利ですね。

      飛び出す絵本ですか~。いいですね。
      私の場合は、大きな絵本で見ました。ある日、家に、男の人が来て玄関先で「世界の物語の絵本の頒布会に入りませんか?」と母に言って、それをとってくれていたんです。かなり大きな絵本でしたよ。ちょっとマイナーな話が多かった気がします。

  1. こ、こんな話だったんですね。
    すっかり、別の話と勘違いしていた気がします。

    今から、こっぱみじんになりそうなアンティークの絵本を開いて、読み直します。今日も、勉強になりました!
    私には、「和訳」の才能がないですが、
    時々フランス語のタイトルと、日本語のタイトルが一致せず、
    中身を読んで気づいたりします。

      • フランス語愛好家
      • 2013年 11月 07日 10:49am

      木蓮さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
      そうです、こんな話だったんです。
      子どもの頃に読んでも忘れちゃいますよね。
      ぜひ、アンティーク本で確認してください。

      確かにフランス語のタイトルを言われても、まったくピンと来ない物語ってありますよね。
      「え~あんなに有名な話も知らないの?」と言われたりして。単に、タイトルを知らないだけなのです。

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