日本でも公開されて話題になった「譜めくりの女」というフランス映画の予告編を紹介します。
原題は La tourneuse de pages 直訳「ページをめくる女性」です。tourneur/tourneuse は、動詞、tourner(回す、回転させる)の名詞形で、 旋盤工、ろくろを回す人、旅回りの芸人、興行主(プロモーター)という意味もあります。
ページをめくる、の「めくる」も動詞 tourner を使います。
この映画でめくるのは本のページではなく、楽譜のページ。よって、邦題が「譜めくりの女」なのでしょう。
譜めくりの女・予告編
まず予告編をごらんください。2006年、ドゥニ・デルクール監督の作品です。
サスペンス映画のせいか予告編のセリフも少ないですね。
ではトランスクリプションを和訳します。
Pour les vacances de la Toussaint, madame Onfray m’a dit que vous cherchiez quelqu’un. Comme mon stage sera terminé, si vous voulez, je pourrais garder votre fils.
Mais pourquoi pas. Vous savez que c’est à une quarantaine de kilomètres de Paris. Il faudrait que vous logiez là-bas.
オフレー夫人から、トゥーサンでのバカンス中、人をお探しだとお聞きしました。ここでの研修も終わりますし、もしよろしければ、息子さんのお世話をすることができますが。
でも、どうしてなんだい?家はパリから40キロ離れているのを知っているだろう。住み込んでもらうことになるよ。
Je vais vous montrer la maison ?
家の中をお見せしましょうか?
Continue mon chérie. Mélanie viendra te chercher pour le dîner.
続けなさい。夕食になったらメラニーが呼びにくるわ。
Ma femme est pianiste. Elle fait partie d’un trio. Elle s’est mise à avoir le trac. C’est un trac qu’elle a du mal à maîtriser.
妻はピアニストなんだ。トリオで演奏している。すごく緊張するようになってしまってね。その恐怖をなかなか克服できないんだ。
Tu savais que Mélanie jouait du piano.
Non.
En tout cas, Mélanie lis parfaitement la musique. C’est elle qui va me tourner les pages au concert, à la rentrée.
メラニーがピアノを弾くって知ってた?
いや。
とにかく、楽譜をちゃんと読めるのよ。ラジオのコンサートではメラニーに譜面をめくってもらうわ。
Trouvé !
みーつけた!
Qu’est-ce qu’ils font vos parents ?
Bouchers.
ご両親は何をしているの?
肉屋です。
Une tourneuse, c’est quelqu’un qui peut mettre en danger tout un équilibre. N’est-ce pas ?
譜めくりはバランスを台無しにしかねない人だ。そうだよね?
☆トランスクリプションはこちらを参考にしました⇒Bande-annonce: La tourneuse de pages
単語メモ
trac (緊張して)上がること
avoir le trac 上がる
avoir du mal à ~するのに苦労する
en tout cas いずれにせよ、とにかく
équilibre バランス、調和
音楽の調和であり、ピアニストであるアリアーヌの心のバランスのこともさしています。
「譜めくりの女」のあらすじ
amazon.frにあったDVDの紹介をそのまま訳します。
Fille de bouchers dans une petite ville de province, Mélanie, âgée d’une dizaine d’année, semble avoir un don particulier pour le piano.
Elle tente le concours d’entrée au conservatoire mais échoue, perturbée par l’attitude désinvolte de la présidente du jury, une pianiste reconnue.
Profondément déçue, Mélanie abandonne le piano. Une dizaine d’année plus tard, à l’occasion d’un stage, Mélanie rencontre M. Fouchécourt, le mari de cette femme qui a certainement changé le cours de sa vie.
Très vite remarquée pour son sens de l’organisation et son dévouement, Mélanie est recrutée au domicile de M. Fouchécourt, pour veiller sur son fils.
La rencontre avec Mme Fouchécourt se passe merveilleusement bien puisque Mélanie se montre très sensible à la musique et devient sa tourneuse de pages…
小さな田舎町の肉屋の娘、10歳のメラニーは、ピアノの才能があった。メラニーはコンセルヴァトアールの試験を受けたが落ちてしまった。審査員長である高名なピアニストの、無神経な態度に気が散ってしまったのだ。
絶望したメラニーはピアノをやめてしまった。10年後、研修を受けていたとき、メラニーは彼女の人生を変えた女性の夫である、フシェクール氏と出会った。
仕事ぶりや熱意をかわれ、メラニーはすぐにフシェクール氏の屋敷で息子の面倒をみる仕事をさせてもらうことになった。
フシェクール夫人との再会も無事にすみ、音楽がわかるメラニーは、彼女の譜めくりの役を引き受けることになる。
- ☆ -
要するに、メラニーは、子どものとき、フシェクール夫人であるアリアーヌのせいで、試験に落ちてしまい、10年後にその復讐をする、という映画です。
「譜めくりの女」日本市場向けの予告編
「いったい何があったの?」と気になる方に、日本語市場向けの予告編を紹介します。こちらには試験を受けている子ども時代のメラニーが登場します。
アリアーヌが写真にサインをしているのに気づいて気が散っちゃったみたいですね。
でも、あんなことで気が散るもんでしょうか?コンセルヴァトアールの試験ですよ。みんなもっと音楽に没入しているはず。
というより、なぜ試験中に人が入ってくるのでしょう?
それに、メラニーはピアノの才能があるはずなのにそこまでうまくもないですね。
この映画の監督は、自身もヴィオラ奏者で、国立音楽院の教授なんだそうです。試験のシーンはリアルに作ってあるはずなんですが。
こちらは試験のシーンの抜粋です。
この曲は、この映画用のオリジナルの曲みたいです。
気が散ったあとはボロボロの演奏になっていますが、それは自分の実力がなかったということであり、アリアーヌのせいではないのですよ。このぐらいで心が乱れるようでは、コンサートピアニストにはなれません。
というより、まだ10歳なんですから、いくらでも挽回できましたよね。逆恨みしているとしか思えません。
メラニーを演じたのは、デボラ・フランソワ(Déborah François)というベルギーの女優さんです。この映画では何考えているのかわからないクールな女性を演じていますが、「タイピスト!」では、もっと明るい人になっていました。
「タイピスト!」について⇒映画:「タイピスト!」Populaire(ポピュレール)予告編のフランス語 その1
復讐されるピアニストを演じたのは、有名なカトリーヌ・フロ(Catherine Frot)。この女優さん、何を演じてもうまいですね。
フシェクール氏は弁護士なのですが、とんでもない豪邸に住んでいます。
親子3人なのに、あんないに大きな家が必要なのでしょうか。プールまであるんです。
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