かの有名な、« À bout de souffle » 邦題:『勝手にしやがれ』の予告編を紹介します。
1960年に公開された映画で、ジャン=リュック・ゴダール Jean-Luc Godard監督の出世作、ヌーベル・ヴァーグ(Nouvelle Vague)の記念碑とも呼ばれている作品です。
この映画の予告編は、セリフではなく、単にいくつかの単語を冠詞つきで話しているだけなので、フランス語の初心者の方にもとっつきやすいと思います。
古い映画なので、発音もとてもアーティキュレ(articulé はっきり発音された)です。
À bout de souffle(1959)予告編
2分2秒
トランスクリプションと和訳
la jolie fille 美しい娘
le vilain garçon 醜い青年
le revolver リヴォルヴァー
le gentil monsieur やさしい男
la méchante femme 意地悪な女
scénario de François Truffaut 脚本:フランソワ・トリュフォー
la mort 死
la petite américaine 小柄なアメリカ人女性
le voleur d’auto 自動車泥棒
le concert pour clarinette クラリネット協奏曲
la police 刑事
supervision de Claude Chabrol 監修:クロード・シャブロル
la pin-up ピンナップガール
le romancier 小説家
la boniche 女中
Humphrey Bogart ハンフリー・ボガート
Marseille マルセイユ
mon ami Gaby 友達のギャビー
Picasso ピカソ
le photographe italien イタリア人の写真家
les anarchistes アナーキスト
le magnétophone テープレコーダー
un film de Jean-Luc Godard ジャン=リュック・ゴダールの映画
la tendresse 優しさ
l’aventure 冒険
le mensonge うそ
l’amour 愛
les Champs Elysées シャンゼリゼ
la peur 恐怖
avec Jean Seberg et Jan-Paul Belmondo ジーン・セバーグとジャン=ポール・ベルモンド主演
Le Diable au corps 肉体の悪魔
Du rififi chez les hommes 男の争い (rififi は「けんか」という意味のスラング)
Et Dieu créa la femme 素直な悪女
Scar-face アル・カポネ
à bout de souffle 息切れ
le meilleur film actuel 現代最高の映画
勝手にしやがれ・補足
3人の映画監督
映画監督の名前が3人出てきます。
Jean-Luc Godard ジャン=リュック・ゴダール(1930生) この映画を監督した人です。
François Truffaut フランソワ・トリュフォー(1932-1984) ゴダールと同様、ヌーベルヴァーグの有名な監督です。
トリュフォーについて⇒フランソワ・トリュフォー 没後30年記念イベント2つ
Claude Chabrol クロード・シャブロル (1930-2010) シャブロルもヌーヴェルヴァーグの監督です。
この3人は、映画を作り始める前、エリック・ロメールやジャック・リヴェットなどと共に、カイエ・デュ・シネマ(Les Cahiers du cinéma)という映画の批評誌に批評を書いていました。
初期の頃は、お互い、協力しあって映画を作っていました。
3つの映画作品
映画のタイトルも3つ出てきます。
Le diable au corps 邦題:肉体の悪魔 1947 監督:クロード・オータン=ララ Claude Autant-Lara 原作はラディゲ Raymond Radigue
Du rififi chez les hommes 邦題:男の争い 1955 監督:ジュールズ・ダッシン Jeles Dassin
Et Dieu créa la femme 素直な悪女 (←そして神は女を作った)1956 監督:ロジェ・ヴァディム Roger Vadim
「素直な悪女」についてはこちらで紹介⇒サン・トロペ名物、タルト・トロペジエンヌのレシピと作り方~フランスのお菓子(5)
ロジェ・ヴァディムの、 Le Repos du guerrier(邦題:戦士の休息)の挿入歌を紹介しています⇒フリーダ・ボッカラ、Cent mille chansons (サン・ミル・シャンソン)の訳詞。
息切れ
タイトルの À bout de souffle は、直訳すると「息のはしっこで、息の終わりの」つまり、息が切れそうな状態です。
être à bout de souffle で、息を切らせている、ぐったりしている、という意味。
un souffle は、呼吸、動詞は、 souffler で息を吐く。
お菓子のスフレは un soufflé です。
なぜ、「息切れ」が、「勝手にしやがれ」になるのかというと、たぶん、あとで紹介するベルモンドの有名なセリフの最後に、「勝手にしろ!」という意味の言葉が出てくるからだと思います。
「勝手にしやがれ」について
この映画は、ゴダール監督の」初の長編映画で、彼独特の演出法が随所に見られる作品です。
しかし、当時衝撃的だった演出は、いまは、わりと、ふつうになっているため、いまの人が見ると、「どこがそんなにすごいん?」「何が革命的なの?」となるかもしれません。
ベルモンド扮するミシェルというフランス人男性(チンピラ)と、セバーグ扮するパトリシアというアメリカ人女性の関係がストーリーの軸になっています。
ミシェルは自動車泥棒を生業とする青年で、パトリシアに恋をして、2人で逃避行をします。
日本語版の予告編です。デジタルリマスター版の予告編で、いわゆる予告編らしい予告編です。
最後の、「海が嫌いなら、山が嫌いなら、街が嫌いなら…、勝手にしやがれ!」というのは有名なセリフです。
フランス語は、Si vous n’aimez pas la mer, si vous n’aimez pas la montagne, si vous n’aimez pas la ville… Allez vous faire foutre !
Allez vous faire foutre は、とっとと消え失せろ! という意味です。vous を使っているのは、大勢の観客に向かって言っているからでしょう。
主役の2人は、とても存在感がありますね。
制作している側も若いですし、いろいろと野望もいだいていたでしょうし、青春のただ中にいる人にしか作れない映画で、そういう意味では、普遍的な作品と言えるでしょう。
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昔の映画は邦画も外国の映画も台詞回しがゆっくりです。
今回、ベルモンドの「海が嫌いなら…」というセリフを聞いて、あまりに聞き取りやすいのでびっくりした人も多いのではないでしょうか?
それでは、次回の映画の予告編紹介記事をお楽しみに。
勝手にしやがれ、この作品はいまいち何がそんなにすごいのかわからずも、とにかく、ジーンセバーグが可愛くておしゃれ、ベルモントが素敵、見ている自分もなんだかおしゃれな気分?!になって見た大昔を思い出しました。
しかし、予告編は初めて見ました、ありがとうございます☆
どのシーンを切り取っても、絵になる映画ですね。また久しぶりにみてみようかなと思います!
わたなべさま
こんにちは。コメントありがとうございます。
パリで撮影しているからおしゃれに見えるのかもしれませんね。
モノクロだし。
ぜひ、また見てみてください。
pen