シャネルの5番

ファッション

シャネルを物語る5つの色(前編)

フランスのファッションブランド、シャネル社が制作した動画シリーズ、Inside CHANEL (インサイド・シャネル)から、第11章、「シャネルの色(LES COULEURS DE CHANEL)」を紹介します。

シャネルといえば、ココ・シャネルがデザインした黒いワンピースや、黒いキルティングのバッグが有名ですが、ほかにもよく出てくる色があります。

それぞれの色にはどんな意味が込められているのでしょうか?

シャネルカラーとは?

動画の長さは3分20秒。音声はフランス語、英語や日本語などほかの言語の字幕を表示させることができます。

では、フランス語のスクリプトと和訳を紹介します。前編は1分59秒まで。

Chapitre 11 LES COULEURS DE CHANEL

第11章 シャネルの色

Noir, blanc, beige, or, rouge.

黒、白、ベージュ、ゴールド、赤。

黒 noir

Noir, parce qu’il souligne l’essentiel, rappelle la rigueur monacale des uniformes de l’orphelinat d’Aubazine, parce que, pour Gabrielle Chanel, il « rend visible le rayonnement d’une femme. »

Grâce à Chanel, le noir quitte le deuil et les domestiques pour devenir, dès 1926, la couleur de l’élégance avec la « petite robe noire ».

« J’ai imposé le noir. Il règne encore car le noir flanque tout par terre. » déclarait Mademoiselle.

黒、なぜならそれは本質を引き立たせるから、オーバジーヌの孤児院の修道士の制服の厳格さを思い起こさせるから。ガブリエル・シャネルにとって、「女性の輝きを引き出す色」だから。

シャネルのおかげで、1926年以来、黒は喪服と使用人の色から、「リトルブラックドレス(黒いミニドレス)」のエレガンスの色に変わった。

「私は黒を押し通しました。黒はいまでも支配する色です。それはすべてを床にたたきつけますからね」そう、マドモアゼル(シャネルのこと)は宣言した。

白 blanc

Blanc, parce qu’au commencement était le blanc, parce qu’il capte la lumière, éclaire le visage, rehausse la beauté.

Parce que c’est la couleur de l’absolu de la transparence et de la transcendance, blanc parce qu’il rappelle à Coco les cornettes des religieuses de son enfance et la robe de communiante offerte par son père.

白、なぜなら始めに白があったから。白は光をとらえ、顔を輝かせ、美しさを引き立てるから。

それは、完全に透明で、超越した色だから。白、それはココに幼いころなじみのあった修道女のコルネット(白いずきん)を思い出させるから、父親にもらったコミュニオンのときのドレスを思い出させるから。

ベージュ beige

Beige parce qu’il est chaleureux, évident, naturel,

parce qu’il est la couleur de la terre battue de son Auvergne natale et celle du sable des plages de Deauville, de Biarritz ou du Lido,

parce qu’il est pour Coco la couleur du teint naturel de la belle mine, du grand teint, et de la peau qui dore au soleil.

ベージュ、それはあたたかくて、明らかで自然な色だから。

それは、生まれ故郷のオーバーニュの踏みならされた土地の色だから、ドーヴィルやビアリッツ、リドの海岸の砂浜の色だから。

それはココにとって、自然の色、きれいな顔色、すばらしい顔色、太陽に輝く肌の色だから。

ゴールド or

Or, parce qu’il supporte le vrai et le faux : le vrai des bijoux que lui offre Le Duc de Westminster, le faux des parures fantaisie qu’elle bricole sans fin.

Or, parce que les objets liturgiques et les robes de brocart du clergé d’autrefois ont illuminé son enfance.

Or, parce que les trésors de Saint-Marc à Venise, de Byzance et de l’art baroque l’inspireront toujours.

ゴールド、なぜならそれは本物も偽物も受け入れるから。ウエストミンスター公爵からもらった本物の宝石の色、そして彼女が作り続けた模造パールの偽物の色。

ゴールド、それは典礼に使う物の色であり、かつて子供の頃に光を与えてくれた、聖職者が着ていたブロケードの衣装の色だから。

ゴールド、それはヴェニスのサン・マルコ寺院や、ビザンチン様式、いつもひらめきを与えてくれたバロック芸術の宝の色だから。

赤 rouge

Rouge, parce que « c’est la couleur de la vie, du sang, » disait Gabrielle Chanel.

Rouge, parce qu’il permet lorsqu’il double un sac, de retrouver tout de suite ce que l’on y cherche.

Rouge, parce que transformé en rouge à lèvres, il devient avec Gabrielle Chanel une parure, une déclaration de bonne humeur.

« Si vous êtes triste, mettez du rouge à lèvres et attaquez : les hommes détestent les pleureuses. » conseillait Mademoiselle.

赤、それは「それは命の色、血の色よ」とガブリエル・シャネルは言った。

赤、それはバッグの裏に使った色で、この色のおかげで、何がどこにあるかすぐわかるから。

赤、それは口紅に姿を変え、ガブリエル・シャネルにとって、よい気分にさせてくれる装いであり、上機嫌を宣言するものだから。

「悲しいときは、赤い口紅をつけて、挑みなさい。男性は泣き虫が大嫌いよ」こう、マドモアゼルはアドバイスした。

単語メモ

essentiel  要点、大事なこと

rigueur  厳格、厳しさ

monacal  修道士の、修道士のような

rayonnement  輝き

deuil  喪の悲しみ、哀悼、近親の死

domestique  使用人、お手伝いさん、女中

imposer 強制する、押し付ける

régner  君臨する;権力を持つ;支配する、存続する、流行する

flanquer  投げつける、叩きつける、ほうり出す。

rehausser  (価値、効果などを)いっそう高める、引きあげる、引き立たせる

transparence  透明、透明度;明瞭、明快

communiante  聖体拝領者

☆聖体拝領(コミュニオン)とは、キリスト教徒の儀式で、6~8歳ごろ、教会でキリストの身体と血を象徴するパンとぶどう酒をいただくこと。このとき、女の子は白いドレスを着ることが多いです。

mine  顔つき、顔色

teint  顔色

supporter  引き受ける、許す、受け入れる

parures fantaisie 模造パール

liturgique  典礼の ☆キリスト教の教会が行う公の礼拝や儀式。

brocart  ブロケード、金銀糸入りの絹紋織物。

doubler  裏をつける

parure  装い、身支度 parure de + 無冠詞名詞  ~製の装身具、アクセサリー、おそろいのアクセサリーのセット。

☆ガブリエルはシャネルの本名。ウエストミンスター公爵は、一時期、シャネルの恋人だった人です。大金持ちなので、シャネルにゴージャスな贈り物をしました。

シャネルは、彼からもらった宝飾品にヒントを得て、イミテーションパールのついたアクセサリーを創作しました。

シャネル関連動画と記事

英語版はこちら

シャネルは12歳のときから、修道院(孤児院)で育ったこと、修道院で体験した色に影響されたこと、生まれ故郷がオーバーニュであること、ビアリッツやドーヴィルに店を開いたことなどは、シャネルの生涯をつづっている動画を見るとよくわかります。

シャネルの仕事ぶりを紹介した動画や、シャネル社(カール・ラガーフェルド)が作った若き日のシャネル(ドーヴィルに帽子ブティックを開いた頃)を題材にしたショートフィルムを紹介⇒ココ・シャネルの名言~その1 上品な服装が引き立たせるものとは? 

Inside Chanelのシリーズから、シャネルの生涯を紹介した動画のスクリプトを訳した記事⇒孤児、ガブリエル・シャネルはいかにしてココ・シャネルになったのか?(1)

シャネルの伝記映画の予告編を紹介⇒映画『ココ・アヴァン・シャネル』の予告編でフランス語を学ぶ

*****

シャネルは1883年8月19日生まれです。お誕生月なので、久しぶりにシャネルの動画を紹介しました。

1883年は明治16年です。そんな前の人なんだという感じもするし、わりと最近の人なんだ、という気もします。生きていたら135歳になります。亡くなったのは1971年で、87歳でした。

それでは後編をお楽しみに。






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