シャネルのコンパクト

ファッション

シャネルを物語る5つの色(後編)

シャネル社が制作した、シャネルカラーを説明する動画、後編のスクリプトの紹介です。

後編では、これまでに説明した5つの色を、あらためてまとめています。

シャネルカラーの秘密

3分20秒。音声はフランス語ですが、英語や日本語などほかの言語の字幕を表示させることができます。

後編は2分あたりから。

できるだけ原文に忠実に訳しています(つまり直訳)。こなれた訳は、動画の字幕で確認してください。

黒は奥行きのある色

Noir, parce qu’il crée la profondeur autour des autres couleurs, parce qu’il claque sur une étiquette blanche, enveloppe le luxe laqué des boîtiers de maquillage, ourle d’un trait de paupière, ombre un battement de cil.

黒、なぜなら黒は他の色の周囲で奥行きを作り出すから、白いラベルに平手打ちを食らわせるから、

黒は化粧品のケースの贅沢な光沢を包み込むから、まぶたの線を際立たせ、まつげの動きを強調するから。

カメリアの白

Blanc, parce qu’il illumine les rangs de perles de Coco, ses camélias et tous les bouquets de fleurs qui installent le printemps autour d’elle.

Blanc, comme son éternel pyjama de soie, comme la robe qu’elle portait aux funérailles de Diaghilev, blanc comme le satin, la mousseline, et gansé de noir, le tweed du tailleur Chanel.

白、なぜなら白は、輝かせるから。ココのパールのつらなりや、カメリア、ココのそばで咲く春の花束すべてを。

白、時を越えた絹のパジャマの色。ディアギレフの葬式でココが着ていたドレスの色。絹やモスリンの白。黒でふちどりされた、シャネル・スーツのツイードの色。

ベージュは肌をひきたてる

Beige, parce que face à l’union sacrée du noir et du blanc, il offre un contrepoint, une neutralité et une élégance supplémentaire.

Beige, parce qu’avec Chanel, il réveille la peau

ベージュ、なぜならベージュは白と黒のすばらしいコンビネーションに対峙するから。ベージュは対位モチーフで、全体をニュートラルにし、エレガンスを補足するから。

ベージュ、なぜならシャネルにかかると、ベージュは、肌を目覚めさせるから。

ゴールドは勝利の色

Or, parce qu’il se reflète dans le flacon de N°5, parce qu’il s’impose sur la chaîne du sac matelassé, le bouton des tailleurs.

Or, parce que c’est le triomphe de Chanel.

ゴールド、なぜならゴールドはシャネル5番の瓶で輝いているから。なぜならゴールドは、キルティングバッグのチェーンやスーツのボタンの色として重要だから。

ゴールド、なぜならゴールドはシャネルの勝利の色だから。

赤は情熱の色

Rouge, parce que c’est la couleur de la passion, du courage, du feu et de l’énergie.

赤、赤は情熱、勇気、炎、エネルギーの色だから。

白と黒はシャネルのシグネチャー

Enfin, noir et blanc, parce qu’ils n’existent pas l’un sans l’autre, parce que c’est l’accord parfait et la pureté absolue, parce que c’est le trait de crayon de Karl Lagerfeld, parce que c’est la signature de CHANEL.

最後に、白と黒。白と黒は、お互いなくしては存在できないから。

それは最高のコンビネーションで、絶対的な純粋さを持つ組み合わせだから。白と黒は、カール・ラガーフィルドの鉛筆の線の色だから。

それはシャネルのシグネチャーだから。

単語メモ

luxe  贅沢、奢侈(しゃし)

laquée  漆をぬった;艶のある、光沢のある

boîtier  (仕切りのついた)収納箱、ケース

ourler  縁・すそをまつる、かがる、ふちどりをする

trait  線、輪郭

paupière  まぶた

Diaghilev セルゲイ・ディアギレフ(1872-1929)
ディアギレフは、ロシアバレエ団(バレエ・リュス)の主催者(芸術プロデューサー)。革新的な近代バレエの先駆者として活躍しました。

ココ・シャネルは、彼のパトロンで、公演のために、高額のお金をぽんと彼に渡しました。

ganser (服などに)飾りひも/ふちどりをつける

tailleur スーツ

contrepoint 対位法、コントラプンクト;対位モチーフ、副次的主題

neutralité  中立性

supplémentaire 追加の、補足の

réveiller 目覚めさせる、起こす

se refléter 映る、反映される

matelassé キルティングの

s’imposer 幅をきかせる、重きをなす

triomphe (華々しい)勝利、大勝

trait 線、描線

signature 特徴、特別な印

☆前編はこちら⇒シャネルを物語る5つの色(前編) 前編では、シャネルに関連した過去記事へのリンクもあります。

きょうのうんちく:ディアグレフ

セルゲイ・ディアギレフとバレエ・リュスを紹介する1分半の動画(映画)

20世紀のはじめ、パリではバレエは芸術としては重要視されていませんでした。ディアギレフがバレエ・リュスを率いて、圧倒的なまでにすばらしいバレエ作品を見せたので、人々は、「バレエも芸術の1つなんだ」と思うようになりました。

ディアギレフのすごいところは、本人はべつにダンサーでもないし、振り付けもしないし、作曲もしないし、楽器の演奏もしないし、舞台美術を作るアーチストでもないのに、さまざまな分野で才能のある人を見つけ、びしばしと注文してすばらしい作品に結実させたところです。

まさに、仕掛け人・プロデューサーとしての才能のあった人でした。しかも、美や芸術を見る目があり、おまけにひじょうに先駆性がありました(もちろん、性格的に、ここはちょっとね、と思う部分も多分にあります)。

彼が育てたダンサーや、注文を出したアーチストの中には、20世紀を代表する芸術家が何人もいます。

シャネル自身も美しいものが好きだし、パイオニア精神のある人なので、ディアギレフに出資するのは、望むところだったのでしょう。当時は、成功して、お金もたっぷりありましたから。

こちらは、BBCドラマ  Riot at the Rite のワンシーンです。ディアギレフとストラビンスキーが出てきます(もちろん役者が演じています)。

このドラマは、1913年に Le Sacre du Printemps (春の祭典)をパリで初演にこぎつけた興行主や、ディアギレフ、ダンサー、その他の関係者を描いたものです。

この作品の音楽はストラビンスキーの作曲で、内容はロシアの異教時代のお祭りです。

このバレエは、あまりに革新的すぎて、上演前から問題が山積みしていました。

オーケストラは、ストラビンスキーのわけのわからない音楽が嫌いで演奏したくなかったし、ダンサーはニジンスキーのへんてこりんな振り付けが嫌いで踊りたくなかったからです。

おまけにニジンスキーはディアギレフ(この人は同性愛者)と愛人関係にありました。

当時としては、あまりに革新的すぎたこの作品は、初演時にはほとんどの観客に拒絶されました。

☆色に関する関連記事もどうぞ:

かわいいフランス語、教えます~その15 基本の色

かわいいフランス語、教えます~その59 いろいろな青と緑

かわいいフランス語、教えます~その60 いろいろな赤、ピンク、黄色

かわいいフランス語、教えます~その61 その他の色のバリエーション

2014年春夏のトレンド・カラー~その1

2014年春夏のトレンド・カラー~その2

2014年春夏のトレンド・カラー~その3


革新的なものって最初は拒絶されますね。けれども、そのうち時代が追いつきます。

障害にあっても、イノベーションを起こすために闘いを続けたディアギレフやシャネルは、多くの分野に影響を残しました。

その影響はとても大きく、死んで何年もたったあとにも、私のブログなんかで取り上げられるわけです。






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