この季節にふさわしいジョルジュ・ムスタキ(1934~2013)の「3月の水」という曲をご紹介します。
「3月の水」はもともとブラジルの曲
この曲はもともと、ブラジルのアントニオ・カルロス・ジョビン(1927-1994)が作り、ポルトガル語で歌われていたものです。ムスタキがフランス語に訳して発売しました。
ジョビンはボサノバを作ったと言われるブラジルの有名なコンポーザーであり、ミュージシャンです。
もとの歌のタイトルはÁguas de Marçoです。ポルトガル語でこれも「3月の水」という意味です(Googleで訳しました)。とても有名な曲なので、聞けば「あ、聞いたことある」と思われるでしょう。
ブラジルは南半球にあるので、3月は春ではなく、夏の終わりで秋の始まる頃です。そんな季節の情景を歌ったもので、歌詞には名詞がつらなっています。
「3月の水」オリジナルとフランス語の聴き比べ
まずオリジナルを聞いてください。
ポルトガル語はさっぱりわかりませんが、どうやらこのPVは歌にでてくる物を映しだしているようです。
歌はエリス・レジーナとジョビンのデュエットです。
ELIS REGINA & TOM JOBIM ” ÁGUAS DE MARÇO “ (1974)
3分42秒
3月の水は、雨水のようですね。また、木、石、かえるがよく出てきます。
では、ムスタキのフランス語版のほうです。
ムスタキはエジプト生まれのギリシャ系ユダヤ人。17歳のとき、フランスのパリにやってきました。それまでフランス系の学校に通っていたので、フランス語は達者だったようです。
パリでははじめ左岸で暮らしていました。23歳のとき当時40歳ぐらいのエディット・ピアフと運命的な出会いをし、恋人となり、ピアフのためにたくさん曲を書きます。
彼は若いときはすごい美男子だったらしいです。おつきあいはあまり長く続きませんでしたが、その後はフランスを代表する吟遊詩人、シンガーソングライターとして活躍しています。
フランスの3月は日本と同じ春なので、フランス語版では3月の水は、雪解け水のことです。
Les eaux de mars
3分10秒
Les eaux de mars 訳詞
さて、この曲、歌詞がすごく長いです。
少しずつ何回かにわけて訳します。
歌詞はこちらです。
きょうは、最初の2つのかたまりを訳します。
Les eaux de mars
3月の水
一歩、石ころ、続く道
残った根っこ、それは少しだけさみしい
それはガラスの破片、それは人生、それは太陽
それは死、それは眠り、それは半開きの罠
樹齢千年の木、木の節
それは吠える犬、それは宙を飛ぶ鳥
それは腐る幹、それは溶ける雪
大いなる謎、生命の約束
☆続きはこちら⇒歌と訳詞:3月の水~ジョルジュ・ムスタキ その2
単語メモ
cheminer 通じている、続いている
entrouvert 少し開いた
porte entrouverte 少し開いたドア
millénaire 千年以上の、非常に古い
pourrir 腐る
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