ジャン=ピエール・アメリス監督の«Les Émotifs anonymes» (匿名レンアイ相談所)という映画の予告編のスクリプトのご紹介、後編です。
匿名レンアイ相談所予告編
予告編はこちらです。
きょうは50秒あたりのレストランのシーンから最後までです。
Bonsoir !
Ah tiens, bonsoir !
こんばんわ。
あ、こんばんわ。
Être seul avec une femme, pour moi c’est une torture.
女性とふたりきりになるなんて、僕には拷問だ。
Mademoiselle Delange!
デランジュさん!
Vous allez devoir toucher quelqu’un.
誰かをさわってください。
Toucher ? Toucher comment ?
さわる?どうやってさわるんだ?
J’avais réussi à lui prendre la main. Wouf…
彼女の手を握ることができたぞ。やれやれ・・
Je suis désolée, mais on est tous les deux émotifs, on court à la catastrophe, c’est obligé.
ごめんなさい、でも、私たちふたりとも、感受性が強すぎるわ。ろくでもないことになるに決まってるわ。
C’est comme tu l’aimes…
でも、あなたは彼女が好きなんでしょう。
Courage ou pas courage il va falloir y aller.
Hao…,
勇気があろうとなかろうと行かなくては。
は~
Alors, comment ça, non ?
L’angoisse l’emporte.
Ne la laissez pas partir. C’est la femme de votre vie.
ほら、こういうふうに。だめですか?
不安でいっぱいです。
彼女をひきとめなければ(←行かせてはだめです)。あなたの人生にとって大事な女性です。
Non, non, je ne suis pas prêt. On va attendre un peu. Hum.
だめです。まだ心の準備ができていません。時間を下さい(←もう少し待ちます。)はぁ。
Je vais dormir dans le canapé.
Mais il n’y a pas de canapé.
Ah oui…
私はソファで寝ます。
でも、ソファ、ないですよね。
ほんとだ。
☆映画の概要については前回を参照願います⇒映画 Les Émotifs anonymes (匿名レンアイ相談所) 予告編のフランス語 前篇
単語メモ
court < courir 走る、(時間、物事が)推移する。
angoisse (胸をしめつけるような)不安
Vous allez devoir toucher quelqu’un.
直訳:あなたは誰かをさわる必要があるでしょう。
⇒誰かをさわってください。
これは主人公のチョコレートの会社の社長のジャン・ルネが治療を受けている精神科医のことばです。
主語は2人称なのに、しゃべっている人の意志や命令を織り込んでいる文で、時制は近接未来です。
こういう文の形は先日翻訳講座で聞きました。
☆女性が怖いチョコレート店のオーナーを演じたブノワ・ポールブールド Benoit Poelvoordeは、ココ・アヴァン・シャネルでは自信満々な金持ち、バルザンを演じています⇒映画『ココ・アヴァン・シャネル』の予告編でフランス語を学ぶ
今回のお話
アンジェリークも怖がり屋さんですが、ジャン・ルネもそうとう恥ずかしがり屋です。
女性と一緒にいるのが怖い問題を克服するために、食事に誘ったり、さわったりしてだんだん慣れていくように医者に言われます。これが、正規の治療法なのかどうか知りませんが、とにかく「自分から行動をおこせ。ほかの人にあなたの病気はなおせません」というわけです。
そして、何かの事情で、アンジェリークがどこかに行ってしまいそうになった時も、医者は「ひきとめろ!」と言います。
それに対して、ジャン・レネは不安でおしつぶされそうになり「とてもそんなことはできない」のです。
ジャン・レネはちょっと恥ずかしがり屋とかそんな程度ではなく、女性と一緒にいると心拍数があがってる感じですね。
会社の事務員に「怖かろうが、なかろうが、やるしかない!」と言われてしまってます。
社会的に「男性がリードをとるもの」という通念があるので、彼はよけいにつらいはずです。
以前も書きましたが、私もとても人見知りのはげしい子どもだったので、人ごととは思えません。ほんとうに他の人がこわいんですよね。
ギャラリー・ヴィヴィエンヌとビッグ・ジェット・プレイン(豆知識)
●ギャラリー・ヴィヴィエンヌ
予告編で主人公がお店の紙バッグを両手に持って、ぐるぐる回っているのは、ギャラリー・ヴィヴェンヌというパリの美しいアーケード街(パサージュ)です。
撮影:User:Benh – Wikimedia Commons
「虎と小鳥のフランス日記」でもこのパサージュが3回登場しています。
⇒第24話 ビストロ・ヴィヴィエンヌでお茶をする
ふだんでも充分美しいパサージュですが、ホリデーシーズンはさらにはなかやでしょうね。
●ビッグ・ジェット・プレイン
予告編でも流れているこの映画のエンディングの曲はAngus & Julia Stone(アンガスとジュリア・ストーン)というオーストラリアのデュオの”Big Jet Plane”という曲です。2010年のヒット曲ですね。
ふたりは姉と弟です。姉と弟のデュオってめずらしいような気がしますが、どうでしょうか?クラシックであれば、二人が別々の楽器でステージにたつということは多いような気がしますけれど。
マキシム・ル・フォルスティエも、はじめ、お姉さんと活動していましたが、それぐらいしか思いつきません。
マキシム・ル・フォレスティエのかわいい曲、『小さなフーガ』の訳詞
こちらがビデオクリップです。とても大きなダラーストア(100円ショップ)が出てきますね。ダラーストアは、全部の商品が1ドルではなく、たまにもうちょっと高い(3ドルぐらい?)商品もあります。
4分6秒
このビデオ・クリップも一つの物語を創りあげていて見応えがあります。
日本の100円ショップは、便利そうなものが安く売っていて、買い物が楽しい場所ですが、カナダのダラーショップはなんか倉庫みたいで、歩いているとうつうつそしてきます(私だけかもしれませんけど)。というわけで、これまで数えるほどしか行ったことがありません。
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