きょうご紹介するフランス語のことわざはこちらです。
C’est en forgeant qu’on devient forgeron.
鉄を鍛えていればこそ、鍛冶屋になる⇒習うより慣れろ
数あることわざの中でも、よく使われる、有名なことわざです。
鉄を鍛えていればこそ、鍛冶屋になる
まず日本語の「鉄を鍛える」についてご説明します。
今は、「鍛える(きたえる)」ものというと、からだや、心身のほうを連想する方が多いかもしれません。
ですが、「鍛える」というのはもともとは、熱して高温にした金属を何度も、ハンマーで打ったり、時々水で冷やしたりして、形を整えたり、硬度をあげることです。
こういう仕事をする人が鍛冶屋(かじや)です。
鍛冶は叩き加減、冷やし加減に技術が必要です。こうしたことは、鉄を鍛えているうちに、身につくものであるから、鍛冶屋になるには鉄を鍛えるしかない、ということ。
これは物事を身につけるときには、どんなことにも言えますね。
何かをマスターするために、人に教えてもらったり、参考書籍を読んだ段階では、まだ何も身についていません。
実際に自分で、人に教わったことや、本に書いてあっことを実践することで、その内容がだんだん身についていきます。
何事も、やりながら身につけるのである、修練を積んでこそ一人前になる、という意味のことわざです。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
c’est … que 強調構文 que以下は・・・だ
ことわざ61の文法ポイント参照⇒困ったときにこそ本当の友だちがわかる(まさかの友が真の友)
ふつうの語順にすると
On devient forgeron en forgeant.
あるいは
En forgeant on devient forgeron.
en ジェロンディフを作るen ⇒文法ワンポイント参照
forgeant < forger 金属を鍛える、鍛造する の 現在分詞
on 人々は
devient < devenir ~になる
forgeron 鍛冶屋
文法ワンポイント~ジェロンディフ
ジェロンディフは en + 現在分詞 で 動詞を副詞のように使う用法です。
副詞は名詞以外を説明する品詞。
ちなみに、名詞の説明をするのは形容詞です。
パムちゃんはかわいい。 可愛い ⇒形容詞
パムちゃんは、ゆっくり食べる ゆっくり ⇒副詞
もとの動詞の意味を活かしながら、この「ゆっくり」のように、ほかの動作を説明するのがジェロンディフです。
ジェロンディフは、いくつか用法があります。
このことわざでは、~しながら(同時性)、~することで(手段)のどちらともとれます。
鉄を鍛えながら、鍛冶屋になる
鉄を鍛えることで、鍛冶屋になる
en forgeant なので、どちらで訳しても意味はたいして変わりません。
たとえばこれが
人はタバコを吸いながら、肺がんになる
と
人はタバコを吸うことで、肺がんになる
だと、
「タバコを吸いながら」のほうは日本語として少し変です。
物理的には、タバコを吸っている1回の時間は短時間(5分ぐらい?)なので、肺がんになる時間と合わないからです。
「タバコを吸いながら散歩する」はOKですけど。
ジェロンディフが出てきたら、文脈や、その動詞の意味に照らしあわせて、意味をとればいいと思います。
ジェロンディフの例文
Pam marche en mangeant une glace.
パムちゃんはアイスクリームを食べながら歩いています。
Il gagne sa vie en donnant des leçons particulières.
彼は家庭教師をして生計をたてています。
ジェロンディフについて詳しくはこちらをどうぞ⇒「まいにちフランス語」42:L64 現在分詞とジェロンディフ
直訳
鉄を鍛えていればこそ、人は鍛冶屋になる
鉄を鍛えながらこそ、人は鍛冶屋になる。
人が鍛冶屋になるのは、鉄を鍛えているからだ。
人が鍛冶屋になるのは、鉄を鍛えながらだ。
・・・いろいろな訳が考えられます。
バリエーション
C’est en forgeant que l’on devient forgeron.
という形もあります。
l’ は le のエリジオンで、que と on の母音の衝突をさけるために入っています。
英語では
Practice makes perfect.
練習が完璧を作る⇒何度も練習することで上達する
日本語は
習うより慣れろ
★ことわざの記事の目次を作りました。ご利用ください。
その1⇒フランス語のことわざ~目次 その1
このことわざは、語学にもよくあてはまりますね。
基本的に、会話が上達したいのであれば、話すことで、
聞き取りを鍛えたいのであれば、聞くことで、
スラスラ読めるようになりたければ、たくさん読むことで
作文は、より多く書くことで、
うまくなるのだと思います。
それでは次回のことわざの回をお楽しみに。
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