ジャック・プレヴェールの有名な詩に、Déjeuner du matin 『朝食』というのがあります。とてもシンプルで美しい詩であると同時に、複合過去を勉強するのに最適な文となっています。
この詩を歌詞にした歌があるので、ご紹介し訳詞をそえます。歌っているのはマレーネ・ディートリッヒです。
朝食:ジャック・プレヴェール
Déjeuner du matin
Il a mis le café
Dans la tasse
Il a mis le lait
Dans la tasse de café
Il a mis le sucre
Dans le café au lait
Avec la petite cuiller
Il a tourné
Il a bu le café au lait
Et il a reposé la tasse
Sans me parler
Il a allumé
Une cigarette
Il a fait des ronds
Avec la fumée
Il a mis les cendres
Dans le cendrier
Sans me parler
Sans me regarder
Il s’est levé
Il a mis
Son chapeau sur sa tête
Il a mis
Son manteau de pluie
Parce qu’il pleuvait
Et il est parti
Sous la pluie
Sans une parole
Sans me regarder
Et moi j’ai pris
Ma tête dans ma main
Et j’ai pleuré.– Jacques PRÉVERT (Paroles 1945)
朝食
彼はコーヒーをいれた
カップに
彼はミルクをいれた
コーヒーのカップに
彼は砂糖をいれた
カフェオレの中に
小さなスプーンで
彼はかきまぜた
彼はカフェオレを飲んだ
そしてカップを置いた
何も言わずに
彼は火をつけた
たばこに
彼は輪を作った
たばこの煙で
彼は灰をおとした
灰皿の中に
何も言わずに
私を見ないで
彼は立ち上がった
彼はかぶった
頭の上に帽子を
彼は身にまとった
レインコートを
雨が降っていたから
そして彼は家を出た
雨の中を
一言も言わずに
私を見ないで
そして私は
片手で頭をかかえた
そして泣いた。
単語メモ
reposer 戻す、元の場所に置く
cendres 灰
cendrier 灰皿
文法ポイント 複合過去
この詩は彼が家を出て行く前にやっていたことと、彼が行ってしまったあとに、私がしたことがすべて複合過去形で書かれています。
複合過去の形は助動詞+過去分詞。助動詞はavoir か être のどちらかを使いますので、その使いわけを書いておきます。
1.ほとんどの動詞は、avoir を助動詞として取ります
この詩では、最後の3行以外は、主語はずっと彼(il)で3人称なので、a + 過去分詞となっています。
Il a mis le café コーヒーを入れた avoir + mettre の過去分詞
2.代名動詞は助動詞は être を使います
Il s’est levé 彼は立ち上がった ←se lever 立ち上がる
代名動詞のほかの例:se laver 自分自身を洗う、se promener 散歩する、s’appeler お互いに呼び合う、se rencontrer お互いに会う、s’amuser 楽しむ、など。
3.être を使う17個の動詞
かっこの中は過去分詞です。
devenir (devenu), revenir (revenu), monter (monté), rentrer (renté), sortir (sorti), venir (venu), aller (allé), naître (né), descendre (descendu), entrer (entré), retourner (retourné), tomber (tombé), rester (resté), arriver (arrivé), mourir (mort), passer (passé), partir (parti)
これらは場所の移動や状態の変化を表す自動詞です。
このうち、sortir, passer, rentrer, monter, descendre, entrer, retourner, tomber はあとに目的語が来ると(他動詞として使うとき)は avoir を助動詞として使います。
Et il est part 彼は出かけた。 être + partir の過去分詞。
関連:
「まいにちフランス語」30:L52 複合過去その1 助動詞にavoirを使う複合過去
「まいにちフランス語」31:L53 複合過去その2 助動詞にêtreを使う複合過去。自動詞と他動詞の違いについても書いています。
ジャック・プレヴェール Jacques Prévert
プレヴェール(1900-1977)は、フランスの詩人であり、劇作家です。読みやすい詩が多く、今も人気です。特に、フランスの学校でよく読まれています。
脚本では、『天井桟敷の人々』(Les Enfants du Paradis)が有名。
彼の詩の題材は、第二次世界大戦後のパリの生活が多いです。Déjeuner du matin は Paroles という詩集に入っていますが、この詩集は大ベストセラーとなっています。Déjeuner du matin はその時代背景から彼はこれから戦争に行くというj解釈がなされています。
ジャック・プレヴェールについては以下の記事でも書いています。
Le Jardin(ジャック・プレヴェール)という詩を読んでみた
Déjeuner du matin 関連動画
この詩は数々の朗読が、学校のプロジェクトの素材になっており、動画もたくさんアップされていますが、2つだけご紹介します。
この詩の情景をそのままショートフィルムにしたもの。発話はありません。
詩の朗読
アクション付きでわかりやすいです。
関連サイトのご紹介
この詩の動詞を活用させる問題を作りました(複合過去の練習)。
Déjeuner du matin 練習問題
“Paroles”という詩集からとられた詩がたくさんのってます。仏語版と英語版あり。
Hommage à Jacques Prévert – Toute sa poésie
詩の朗読が聞けるサイト。アメリカのWheaton College という学校の Department of French Studies が管理しているので、広告などもなく落ち着いて閲覧できます。
Vive Voix | Wheaton College | Massachusetts
Déjeuner du Matin のページはこちら
DEJEUNER DU MATIN – Vive Voix | Wheaton College
詩の朗読もたまにすると楽しいですね。意味がわかってないとうまく朗読できません。
「朝食」の詩。一度 聞いたら忘れられませんね。
以前 聞いて耳に残っていて
また探して やっと見つけました。
うれしかったです。
これからも 素敵なフランス語を教えてください。
クッキーさま
こんにちは。コメントありがとうございます。
詩はリズムがあるので聞いていて楽しいですね。
これからもゆるゆると更新していきますので
よろしくお願いいたします。
pen
初めて伺わせて頂きました。
40年前、ある作曲家が“Déjeuner du matin”の日本語詞と楽譜を何の説明もなく渡してくださいました。一度ライヴで歌いました。解らないまま年月が過ぎ、そのピアニストも亡くなられました。今、こちらのサイトで目にして記憶が呼び覚まされ、胸を熱くしております。
当時私も若かったためPrevértともDietrichとも知らず時がたってしまいました。これから本棚の奥から引っ張り出して見ようと思います。アップして下さって有難うございます!
nako5さん、はじめまして。
ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
この歌を歌ったことがあるのですね。
40年前のことなら、相当、懐かしいでしょうね~。
記事が何かの役に立てばうれしいです。
こちらこそ、コメントありがとうございます。