今週の虎と小鳥のテーマはファッションです。パリのボルペール通りにあるサロンが舞台でした。
タイトルの「ポップ・アップ販売」とは、最近日本でもポップ・アップ・ショップという名称で呼ばれますが、ある場所に突然お店ができて、数日間販売することです。
突然出現(pop-up)するので、ポップアップなのです。
特にイギリスで人気の販売形態です。店舗を持っている店が、意外なところに店を出して宣伝効果を狙ったり、今回のサロンのように、店舗は持っていないクリエーターたちが集まって、場所を借りて作品を販売する事もあります。
今回の見どころ
今回のエピソードの私の思う見どころは
・ごく短い疑問文。
・長い話のつなぎ方。
・カミーユの服装を含め、あれこれ出てくるファッションアイテム
若いクリエーターたちのいろんな作品が背景に映り込んでいたので、ファッション好きの方には楽しい回だと思います。
それでは、いつものように3つのキーフレーズをご紹介します。
3つのキーフレーズ
キーフレーズその1
颯爽と登場したカミーユ。「ボルペール(Beaurepaire)通りにいます」と話してから
なぜ『きれいな目印«beau repaire(=repère)»*後述』なのでしょう?
Pourquoir un beau repaire ?
キーフレーズその2
サロンの中でカミーユと主催者の会話
-ここのコンセプトは何ですか?
-はい、コンセプトはクリエーターによる販売ですが、期間限定の販売です。
Alors, c’est quoi le concept, ici ?
Alors le concept c’est une vente de créateurs, mais c’est une vente éphémère.
キーフレーズその3
主催者へのインタビューの終わり。
-さて(店内を)まわってみます。
-どうぞ、ごゆっくり。
Et j’vais, j’vais me balader alors.
Faites un petit tour, allez voir.
覚えておくと使えそうな表現
●Pourquoi un beau repaire ?
なぜ、きれいな目印なのでしょう?
『pourquoi + 名詞』という簡単な構文で、
『なぜ、~なの?』と言い表せます。
通常pourquoiが文頭に来ると、次は主語と動詞を倒置させるのですが、この文ではそもそも主語と動詞を省略しています。
会話ならではの便利な言い方です。
ほかの例:
Ppourquoi moi ? なんであたしなの?
これは誰かに「これはpenさんの担当ね」などと突然言われたときに「なんで、私の担当なのだ?(いきなりふるなよ)」と言うときなどに使える表現。
「なぜ私は私なのか」という哲学的な問いではありません。
●C’est une vente éphémère.
期間限定(=ポップアップ)販売です。
éphémère は「つかの間の、一時的な」という意味の単語ですが、そこから派生して「期間限定の」という意味になっています。
これは「ポップアップ販売」という意味の業界用語です。
ポップアップショップはle magasin éphémère, boutique éphémère です。
ポップアップ(pop-up)と英語であれば、突然出現するインパクトや、カジュアルな響きがありますが、マガザン・エフェメール(le magasin éphémère)とフランス語にすると、なんだかはかないイメージを持ってしまうのは私だけでしょうか?
ちなみにéphémèreの派生語のéphémérideは「ひめくり」です。
●J’vais me balader alors. ちょっと見てきます。
se balader 散歩する、ぶらぶらする
本当にぶらぶらしたいときはもちろんのこと、このような何かのイベント会場で話を切り上げたいときに使える表現。
また、その場を離れたいときにも使えますね。
●Faites un petit tour, allez voir.
どうぞ、見てきて下さい。
上の「ちょっとそこらを見てきます」と言われたときの答えかた。
Faites un petit tour.の直訳は「小さな一巡(tour)をしてきてください」→そこらを見てきてください。
これも何かを案内しているときなどに使えそうですね。
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ファッション関連のエピソード、もいろいろあります。
⇒第93話 ライブ用のメイクアップ@イヴ・ロシェ
きょうの洒落
キーフレーズ1はカミーユの洒落(言葉遊び)です。
冒頭のセリフに入っています。
Alors, on est dans la rue Beaurepaire qui est un très beau repaire.
Pourquoi un beau repaire ?
Parce que c’est une super rue avec plein de magasins, plein de vêtements, jolis, de toutes sortes, tout près du canal Saint-Martin.
さて、私たちはボルペール通りにいます。そこはとてもきれいなrepaireです。
なぜ、きれいなrepaireなのでしょうか?
それは、この素敵な通りは、サンマルタン運河のすぐ近くに位置し、そこにはあらゆる種類のきれいなブティックやヨウクがたくさんあるからです。
解説によるとBearurepaireという通りの名前を分解して、beau+repaireにした言葉遊びです。
・・・と言われても、私、この単語を知らなかったため^^;、ボルペエ~と聞いたとき、「きれいな修理って何?」と思ってました。
ちなみに、フランス語で修理はréparer レパレ)です。
repaireを辞書をひいたら、
repaire:(野獣の)隠れ場、すみか、巣
では、このまま「きれいな隠れ場」でいいのではないかと思ったのですが、博学の樋沼様の記事に、
Beaurepaire のhomonyme (同音異議)である beau repère に引っ掛けた jeu de mots 語呂合わせと思われる。Repaire は(野獣の)隠れ場;(盗賊の)巣窟 Repère はpoint de repère(物・場所の)目印,である
と書いてありました。
そこでrepèreを辞書でひいたら、
repère :(目標への)目印、てがかり(repaireの変形)とあり、repaire, rèpereは同じ発音でした。
・・・・そうだったのか。
日本語の洒落は好きな私ですが、フランス語の洒落を解するまでにはまだまだ修行が必要です。
きょうのアルバム
いつもおしゃれなカミーユですが、今回もおしゃれのテクニックでいくつか盗めそうなところがありましたのでご紹介します。
ジーンズにシンプルなトップスというカジュアルな服のうえにちょっとゴージャス系のコートとイヤリングををあわせています。ミスマッチ(死語?)がおもしろいと思います。
そして、ポイントにカラフルなトートバッグを選び、それだけでなく、バックパックのように背負って、無地のコートに華やかさをそえております。
左下はイヤリングをあわせてみているところ。
カミーユ、イヤリングが好きみたいで、いつも大きくておもしろいのをしていますね。
こちらは、このポップショップの主催者の女性。
細かいプリーツのはいったスカーフをおしゃれに巻いています。
Pen さん
駄文を読んで頂いたようで、ありがとうございました。Repaire と repère は直感で homonyme だと感じたので、そのように書きましたが、貴女に教えられて、改めて常用TLF のRepaire のéthymologie を引いてみましたところ Repaire: Déverbal de repairer*. V. aussi repère とありました。「Repairer という動詞から派生したdéverbal 動詞発生名詞」だというので、しからばと、repairer を引いてみましたところこの動詞は出ていませんでした。このようなことはこの字引を使って10年以上経ちますが初めてです。次に「V. aussi repère」 と書いてありますので、repère を引きましたが、それらしい説明はありませんでした。これも珍しいことで、この字引の限界をはじめて知りました。しかし、これらの記述から repaire と repère との間にはなんらかの関連性があることが分かります。私の直感では「動物の隠れ場所に目印をいれる」かもしれません。貴女がお使いの辞書では 「repère は repaire の変形」と書かれているようですが、この辞書は何という辞書でしょうか。
そこで最後に repérer を引いてみましたら、「Repérer: Homon. repairer. Att. ds Ac. 1935」とあり、repérer と repairer は 「honomyne 同音異議語だ」とあり、さらに 「att.ds Ac 1935」 とあることから想像すると1935年版の Académie Française の辞書にrepairerという言葉が採録されていると言うのですから、現在の Académie Française はそのような注釈をしていない、とも読めます。それにしても、もしCamille がこのことを知った上で例の語呂合わせをしたとすれば、大変な知識人です。Jazz のstandard の自作のフランス語の歌詞を作詞していますが、この歌詞をみると驚異的です。
樋沼さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
私は、repaireは「隠れ家」なのに、なぜ「目印」なのか不思議でした。
カミーユは「隠れ家」の意味で使っていて、字幕を作っている健さんか、アントワーヌが
間違えて(失礼ですね、すみません・・)「目印」にしたのかな~と思ったのですが、
意外とrepèreとrepaireの語呂合わせみたいなのはネイティブの間では、有名なのかもと思ったりもしています。
でも、確かにこのあいだのカミーユ作詞のジターバグワルツにも
なんか聞いたこともないような単語がいっぱい出てきてましたね。
しかし、自分が単語を知らなすぎるため、いかにまわりがアカデミックでもそれを察知できないでおります。
「repère は repaire の変形」 と書いてあったのは、小学館のロベール仏和大辞典です。
ついでにその元の、PETIT ROBERTの定義の語源の箇所も書いておきますね。
REPÈRE -1676;repaire 1578 ♢ de l’ancien verbe repairer, repadrer
«revenir au point de départ»,
latin rapatriare, de patria
REPAIRE -1080 ♢ de repairer
両方とも先日購入したカシオのEX-word(電子辞書)に入っています。
penさん、こんばんは。
カミーユのファッションまで、気付くのはさすがですね。
しかも、主催者の方のスカーフまで、細かいところまで、ビデオを観察なさっているのですね。
penさんの写真は、いつもくっきり写真になっていますが、
何かツールをお使いですか?
私は動画からスクリーンキャプチャで切り取るので、
画像が粗くなってしまうのです。
また、いろいろ教えてくださいね。
petitkimonoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、わりと細かいところまで見ているほうかもしれないですね。
なんせ、パソコン椅子探偵ですから。
写真は同じように、ビデオからキャプチャーしてます。
っていうか、それしか方法がないですよね。ただ、高画質のやつをキャプチャーして、
場合によっては、コントラストをはっきりさせたりということはしています。
でもワンクリックのおまかせのやつでやってますよ。