きょうご紹介することわざはこちらです。
L’arbre cache souvent la forêt.
木はしばしば森を隠す
木はしばしば森を隠す
森にいて、ある木の真ん前でその木を見ていると、森全体が見えない、ということです。
これは当たり前ですね。木しか見てないのですから。
森の全容を把握するためには、その木から少し離れ、後ろにさがって、あたりにあるたくさんの木も視野に入れる必要があります。
森がものすごく大きいときは、後ろに下がるだけでは不十分で、森から出る必要もあるでしょう。
そして、遠くの山から見てみます。Googleマップで、俯瞰するという手もあります。
このように、このことわざは、物事の細部にばかり捕らわれて、全体像が見えない状況を言っています。
たいてい、その細部はささいなことなのです。もっと大きな問題が後ろに隠れています。
つまり、細かいことが、もっと大きな問題を見えなくしている、ということ。
「目の前の小さなことに捕らわれていると、物事を大局的に見ることができませんから気をつけましょう」、という意味のことわざです。
木を見て森を見ない状況は日常生活によくありますね。たとえば、節約をしようとする主婦が1円でも安い商品を買うために、新聞で毎日チラシをチェックして、遠くのスーパーにまで買いに行く。
けれど、そうやって注ぎこむ時間やエネルギーを考えると、結局は全然節約にならないことが多いです。
そもそも新聞の購読をやめれば、月に3000円~5000円は浮きますし、部屋が片付くし、たまった新聞をしばったりする手間も省けます。
また、セールで食料品を買い込みすぎて、食べきれずに結局廃棄してしまうこともあります。
この場合の森(=本質)は、節約をすることなのに、少しでも安いスーパーで買うことや、お買い得商品をためこむ行動のほうに、あまりにもフォーカスしてしまい、目的を見誤ってしまうのですね。
よくわかる!フランス語の文法解説
単語の意味
arbre 木
前についているl’ は 女性名詞につく定冠詞 la のエリジオンです。
エリジオンについてはこちらで説明しています⇒フランス語の数字【第13回】~11(オーンズ)
cache < cacher 隠す
souvent しばしば、よく
forêt 森
文法
主語+動詞+目的語 というわかりやすいことわざです。
C’est l’arbre qui cache la forêt. という言い方もします。
これは強調構文で、
「森を隠すのは木である。」
強調構文はこちらで説明しています⇒「まいにちフランス語」41:L63 強調構文
直訳
木はしばしば森を隠す
似ていることわざ
英語では、
Not see the forest for the trees.
Not see the wood for the trees.
Can’t see the forest for the trees.
などと言います。意味はすべて「木を見て森を見ることができない」
日本語では
木を見て森を見ず
木を数えて林を忘れる
鹿を追う者は山を見ず
この「鹿」とは目先の利益なので、多少ニュアンスが違います。
この続きはこちらから⇒フランス語のことわざ58~安い買い物は財布からお金を引き出す(安物買いの銭失い)
★ことわざの記事の目次を作りました。ご利用ください。
その1⇒フランス語のことわざ~目次 その1
このことわざはとてもシンプルですが、世の中の道理をうまく言い当てていると思います。
木や森のイメージもいいし、私の好きなことわざの1つです。
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