翻訳者養成プロジェクトの第4回の授業を聞きました。
今回の課題はあなたのすぐそばにいる偉大な哲学者で紹介した本の一節です。感想を一言で言うと難しかったです。
構文の複雑さに負ける
やや長めで難しかったのですが、その理由は構文が複雑で一文が長いものが多いからです。「インテリの書いた文章」を読む訓練を受けたことがあれば、簡単に読める文章だそうです。
ということで、第一パラグラフのみじっくり解説されました。
驚くべきことに、先生たちは本当に「今回の課題は簡単だ」と思っていたようです。
思い込みというものは恐ろしいものです。
まあ、私は課題はいつも難しいと感じているので、特に今回が大変とは思わなかったのですが・・・
と言いながら、またしても、誤訳をたくさんしてしまいました。
特にしょっぱなから間違えており、自分でもあきれましたね。
今回は多少、気をつけて訳したつもりだったのに。
4回目の講義には文法の説明が特にたくさんありました。
自分の控えに項目だけ箇条書きしておくと、
・neの単独使用
・条件法 – siのない仮定/条件法と丁寧・婉曲
・虚辞のne
・アスペクト
・未来形
このほかに、語法についていくつか説明があり、1時間35分に情報がぎっしりで、大変、内容が濃かったです。
とても一度では消化できないですね。あと何回かは聞かなければなりません。
きょうは特におもしろいと思ったアスペクトについて書いておきます。
アスペクトとは?
アスペクトは「ある動作の様態」です。その動作が継続、反復、完了したといった動作のありさま、と言えます。
これは時制とは違うのですね。
時制はある状態、動作が発話時点より前か、後ろかといった時間の関係を表すものです。
また時制は時間とも違います。時間は「現在、過去、未来」という時の流れです。
日本語にはアスペクトがたくさんあります。反面、時制は少ないです。
そして、フランス語はアスペクトにはあまりこだわりませんが、時制の使い分けが細かいです。
例を見てみましょう。
Elle chante. というとてもシンプルなフランス語の文を日本語にすると
1.彼女は歌う。(一回一回の動作)
2.彼女は歌っている。(進行形)
3.彼女は歌手だ。(習慣)
←Qu’est-ce qu’elle fait dans sa vie ? 彼女の仕事は何ですか?の答えとして。
の3種類の訳になる可能性があります。
フランス語の主なアスペクト(現在形の場合)は少なくて、
Je viens de manger 食べたところだ
Je vais manger 食べるところだ
Je suis en train de manger 食べている
この三つぐらい。
これに対して日本語は(現在形の場合)
食べる
食べている
食べ始める
食べ終える
食べてしまう
食べ続ける
食事中だ
食べるところだ
食べてばかりいる(?)
動詞によってはもっといろいろなアスペクトがあります。
そして時制は
日本語:過去と非過去(完了と非完了というアスペクトとして、日本語には時制がないという学者もいる)のみ。
つまり: 食べる、食べた
フランス語:現在形、複合過去、半過去、単純過去、大過去、接続法半過去、未来
結論
以上の違いを知ったうえで、翻訳するときは、フランス語の動詞の時制に最大限の注意を向けなければいけない。
★過去の3回の講義メモはこちらです。
総合力の試される翻訳は一つの作品
★←À quoi bon の解説に出てきたジェーン・バーキンの曲«L’aquoibonist»「無造作紳士」についてはこちら
⇒ジェーン・バーキンの『無造作紳士』歌と訳詞
和訳しているとき、やたらいろんな表現のしかたを思いつく理由の一つは日本語にアスペクトがたくさんあるからなのですね。
アスペクトという言葉は知っていましたが、これまで訳しているときには全く意識してなかったです。
意味が通じればそれでいいみたいな^^;
日本語としてふさわしいアスペクトの訳にしなければなりません。
それにしても、ほんとにこの講座は内容が濃いです。
5回目の授業ももう届いているので、なるべく早く受講してまたブログの記事にしますね。
きょうの記事はちょっと内容が難しかったでしょうか?
明日は、もう少し軽めの話題にします。
この記事へのコメントはありません。