1964年の映画、「シェルブールの雨傘」(Les Parapluies de Cherbourg)に出てくる曲を順番に訳しています。
この映画のセリフはすべて歌なので、全部訳し終えると、セリフの対訳が終わったことになります。
今回は2曲めの Devant Le Magasin (店の前)。
店とは、ヒロイン、ジュヌヴィエーヴの自宅である、傘屋のことです。
Devant Le magasin
仕事を終えたギイが、黄色い自転車で恋人の店の前までやってきて、一緒に歌います。
途中で、店の中のシーンに変わり、ジュヌヴィエーヴの母親(エムリー夫人)と傘を買いに来た紳士も登場します。
1分54秒。
難しい単語は出てきません。
では、訳詞に挑戦!
Geneviève (以下G) : Mon Amour, oh mon Amour…
Guy : Geneviève, ma p’tite Geneviève.
G : Guy, je t’aime. Tu sens l’essence.
Guy: C’est un parfum comme un autre.
G : Guy, je t’aime, oh Guy, je t’aime.
Un client, je me sauve, à 8 heures devant le théâtre.
J’ai pensé à toi toute la journée.
Si tu veux, mon Amour, après nous irons danser.
Guy : Si tu veux.
G : Si tu veux.
Mme Emery : Vous désirez ?
Un client : Un parapluie.
Mme Emery : Un parapluie. (à Geneviève) Où étais-tu ?
G: Là, en face.
Mme Emery : (au client) Êtes-vous fixé sur le genre d’article qui vous intéresse ?
Un client : Un parapluie, un parapluie noir.
Mme Emery : Geneviève ! Montre les parapluies à Monsieur…
作詞はジャック・ドゥミ、作曲はミシェル・ルグラン
店の前で
ジュヌヴィエーヴ: ああ、愛しい人、愛しい人
ギイ: ジュヌヴィエーヴ、僕のかわいいジュヌヴィエーヴ
G: ギイ、愛しているわ。あなた、ガソリンの匂いがする
ギイ: 僕の香水さ、ほかのやつと同じ。
G: ギイ、愛しているわ。ああ、愛してる
お客さんだわ。行くわね。8時に劇場の前で。
1日中、あなたのことを考えていたの。よかったら、そのあと、踊りに行きましょう。
ギイ: 君がそうしたいなら
G: あなたがそうしたいなら
エメリー夫人: 何をお探しですか?
客: 傘です。
エメリー夫人: 傘ですね。(ジュヌヴィエーヴに)どこにいたの?
G: あそこ、向かいよ。
エメリー夫人:(客に)どんな傘がいいか、お決まりですか?
客: 傘です。黒い傘。
エメリー夫人: ジュヌヴィエーヴ! お客様に傘をお見せして。
単語メモ
se sauver 退散する、早々に立去る
être fixé sur ~に心を決めた
un article 品、商品
comme un autre ほかの男性と同じように僕も香水をつけている、ということ。
店の前で・補足
前回はガレージが舞台で、ギイが自動車の整備工を生業としていることがわかりました。今回は、そのギイに、ジュヌヴィエーヴという恋人がいることがわかります。
2人は相当熱々です。
ジュヌヴィエーヴは、傘屋の娘で、この傘屋と修理工場はそんなに離れていないようです。
ギイは同僚に、「今夜はオペラを見に行く」と言っていたので、8時に待ち合わせするのはその劇場。ジュヌヴィエーヴは、オペラを見たあとに、踊りに行こう、と言っています。
ジュヌヴィエーヴの母親のエムリー夫人は、とてもきれいな人です。
店内がかわいい傘屋ですが、特に高級店でもないのに、エムリー夫人は真珠のネックレスをしています。
夫人は、外見の美しさにこだわっている人のようです。
エムリー夫人を演じているのは、Anne Vernon(アンヌ・ヴェルノン)という方です。
Wikipediaで見たら、この人は、1927年生まれ。この映画の公開は1964年なので、撮影当時、アンヌさんは、まだ37歳か38歳。
ずいぶん若いお母さんです。ジュヌヴィエーヴは17歳という設定なので、20歳ごろに生んだことになります。
歌はすべて吹き替えで、ジュヌヴィエーヴは、Danielle Licari(ダニエル・リカーリ)、ギイは、José Bartel(ジョゼ・バルテル) 、エムリー夫人は、Christiane Legrand(クリスチアーヌ・ルグラン、ミシェル・ルグランの姉)が担当しています。
初回の記事はこちら⇒修理工場のシーン(映画「シェルブールの雨傘」より):歌と訳詞。
この続きはこちら⇒伯母エリーズの家で(映画「シェルブールの雨傘」#3):歌と訳詞。
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■サントラ
これは5800円もしますが、2300円ぐらいのもあります。
■映画
*****
「シェルブールの雨傘」は計算された色使いが特徴で、カラフルな映画です。
特に前半は、ギイとジュヌヴィエーヴは、幸せなので、明るい色が目立ちます。
後半、悲劇的な展開になっていくと、色のトーンも暗くなります。
それでは、この続きをお楽しみに。
オペラのように、セリフがすべて歌になっている、画期的作品でしたね。
ざっくり過去ブログを拝見しましたが、Patrick Bruel さんも取り上げていただけませんか?
ベルギーですが、フランス語でジャジーに歌う、Isabele Antennaさんもいかがでしょうか?Mélodie が好きです。
https://youtu.be/XGSOpgclQPg
てるさん、こんにちは。
いろいろと記事を読んでいただきありがとうございます。
Patrick Bruelは以前、記事を1つ書いています。
パトリック・ブリュエルの She’s Gone(彼女は行ってしまった)の訳詞。 https://furansu-go.com/she-s-gone/
Isabele Antennaさんのリクエスト、ありがとうございます。
いつになるかわかりませんが、リクエストにはできるだけお応えしたいと思っています。
コメント、ありがとうございました。